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14 暗雲
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※ダンスパーティーの数日前
ここは、バルクス公爵家の王都の別邸の庭のラウンジである。そこではバルクス公爵家の令嬢であるルイーネと、側近にあたる2人の取り巻き達の3人でお茶を飲んでいた。
「ねぇ、聞きまして!?ランド殿下とアテナ・フォンシュタイン公爵令嬢のお話?」
ルイ―ネの友人の一人、エレーナ・エゴロワ伯爵令嬢は、彼女の情報網によって仕入れた新鮮なニュースを、この場で提供した。彼女は専ら、お茶の間を騒がすニュース速報を提供するキャスターの役割を担っている。
「えぇ!殿下とアテナ様がまた!?ルイ―ネ様のお話だと、先日もアテナ様が殿下に対して、図々しくもデートのお誘いをして、恋人面をしていたという話でしたわよね!?」
エレーナの話に食いついているのは、ベラ・イワノワ伯爵令嬢である。彼女はリアクションを担当しており、ここでは専ら、他の2人の話に大袈裟な反応を示し、話を盛り上げる役割だ。
「えぇ、ベラ様。今度は殿下がアテナ様に、学園のダンスパーティーのお誘いをしたそうですわよ!」
「な!なんですって!?あの小娘に、殿下がダンスパーティーのお誘いを!?」
ベラが、仰け反りながら両手を上げて、エレーナの言ったことを復唱する。
彼女はアテナのことを「小娘」と呼んでいるが、彼女達はアテナの1つ上の学年で、ランドと同級だ。
「どうやらアテナ様、その殿下のお誘いを受けたそうですわよ!」
「まぁ!なんて厚かましいんでしょう!あの小娘、レオン様やボルト様を私達から奪うだけでなく、今度は殿下までルイ―ネ様から奪うつもりなのね!」
ベラは興奮気味にそう叫んだ。だが、彼女の話には誤りがあった。彼女の「奪う」という発言は、さもレオンやボルトが彼女やエレーナの恋人かのように聞こえるが、実際は交際関係はない。せいぜいが級友として挨拶をする程度の関係だった。彼らは、彼女達にとって高嶺の花だったのだ。
なお、彼女達のボスであるルイ―ネは、ランドに何度もアプローチをかけているが、全く相手にされていなかった。彼女は、自分が人よりどれだけ素晴らしいのかを熱く彼にプレゼンしていた。そうすれば、彼が自分のことを好きになると信じていたのだ。
そうして、自分がどれだけ他者よりも上にいるのかというマウンティング自慢を彼に披露し続けた結果、彼からは疎まれてしまったのだ。「俺は君に興味がない。他者を見下して自分の優位性を示す行動は不快なだけだ」そうぴしゃりと言われてしまった。
「「 どう思われます!?ルイ―ネ様!!! 」」
2人は今までの情報の総括をボスに託した。2人の息のあったコンビプレイは見事なものだった。
「まぁまぁ、エレーナ様もベラ様も少し落ち着きになって」
対するルイーナは落ち着き払っている。なぜなら、落ち着き払っている方が大物感が出るからだ。落ち着いている自分が、落ち着きのない令嬢2人を諫める。その流れは彼女の自尊心を満たす行動の一つだ。
それを知っていた取り巻き2人は、ワザとこのように場を演出して、ルイーナのご機嫌を取っているのである。茶番だった。
「ですが、お二人のお気持ちもわかりますわ。『恋の女神』などと過分に評されているアテナ様は・・・少しばかり調子に乗っていらっしゃるのかもしれませんわね」
ごくり
静かに紅茶を飲んだルイーネが冷たい声でそう言い放つ。それを、2人が緊張した面持ちで喉を鳴らした。
もちろん、これも空気を読んだ2人の演出である。本気になったルイ―ネは怖いぞ、という演出だ。
そうして、十分に自尊心を満たしたルイーネは、取り巻き2人と一緒に、アテナを貶めるための作戦会議をするのだった。
ここは、バルクス公爵家の王都の別邸の庭のラウンジである。そこではバルクス公爵家の令嬢であるルイーネと、側近にあたる2人の取り巻き達の3人でお茶を飲んでいた。
「ねぇ、聞きまして!?ランド殿下とアテナ・フォンシュタイン公爵令嬢のお話?」
ルイ―ネの友人の一人、エレーナ・エゴロワ伯爵令嬢は、彼女の情報網によって仕入れた新鮮なニュースを、この場で提供した。彼女は専ら、お茶の間を騒がすニュース速報を提供するキャスターの役割を担っている。
「えぇ!殿下とアテナ様がまた!?ルイ―ネ様のお話だと、先日もアテナ様が殿下に対して、図々しくもデートのお誘いをして、恋人面をしていたという話でしたわよね!?」
エレーナの話に食いついているのは、ベラ・イワノワ伯爵令嬢である。彼女はリアクションを担当しており、ここでは専ら、他の2人の話に大袈裟な反応を示し、話を盛り上げる役割だ。
「えぇ、ベラ様。今度は殿下がアテナ様に、学園のダンスパーティーのお誘いをしたそうですわよ!」
「な!なんですって!?あの小娘に、殿下がダンスパーティーのお誘いを!?」
ベラが、仰け反りながら両手を上げて、エレーナの言ったことを復唱する。
彼女はアテナのことを「小娘」と呼んでいるが、彼女達はアテナの1つ上の学年で、ランドと同級だ。
「どうやらアテナ様、その殿下のお誘いを受けたそうですわよ!」
「まぁ!なんて厚かましいんでしょう!あの小娘、レオン様やボルト様を私達から奪うだけでなく、今度は殿下までルイ―ネ様から奪うつもりなのね!」
ベラは興奮気味にそう叫んだ。だが、彼女の話には誤りがあった。彼女の「奪う」という発言は、さもレオンやボルトが彼女やエレーナの恋人かのように聞こえるが、実際は交際関係はない。せいぜいが級友として挨拶をする程度の関係だった。彼らは、彼女達にとって高嶺の花だったのだ。
なお、彼女達のボスであるルイ―ネは、ランドに何度もアプローチをかけているが、全く相手にされていなかった。彼女は、自分が人よりどれだけ素晴らしいのかを熱く彼にプレゼンしていた。そうすれば、彼が自分のことを好きになると信じていたのだ。
そうして、自分がどれだけ他者よりも上にいるのかというマウンティング自慢を彼に披露し続けた結果、彼からは疎まれてしまったのだ。「俺は君に興味がない。他者を見下して自分の優位性を示す行動は不快なだけだ」そうぴしゃりと言われてしまった。
「「 どう思われます!?ルイ―ネ様!!! 」」
2人は今までの情報の総括をボスに託した。2人の息のあったコンビプレイは見事なものだった。
「まぁまぁ、エレーナ様もベラ様も少し落ち着きになって」
対するルイーナは落ち着き払っている。なぜなら、落ち着き払っている方が大物感が出るからだ。落ち着いている自分が、落ち着きのない令嬢2人を諫める。その流れは彼女の自尊心を満たす行動の一つだ。
それを知っていた取り巻き2人は、ワザとこのように場を演出して、ルイーナのご機嫌を取っているのである。茶番だった。
「ですが、お二人のお気持ちもわかりますわ。『恋の女神』などと過分に評されているアテナ様は・・・少しばかり調子に乗っていらっしゃるのかもしれませんわね」
ごくり
静かに紅茶を飲んだルイーネが冷たい声でそう言い放つ。それを、2人が緊張した面持ちで喉を鳴らした。
もちろん、これも空気を読んだ2人の演出である。本気になったルイ―ネは怖いぞ、という演出だ。
そうして、十分に自尊心を満たしたルイーネは、取り巻き2人と一緒に、アテナを貶めるための作戦会議をするのだった。
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