推して参る!~お友達の乙女を宰相の息子に推してたら、なぜか私が王子から求婚された~

ねお

文字の大きさ
上 下
14 / 16

14 暗雲

しおりを挟む
※ダンスパーティーの数日前


 ここは、バルクス公爵家の王都の別邸の庭のラウンジである。そこではバルクス公爵家の令嬢であるルイーネと、側近にあたる2人の取り巻き達の3人でお茶を飲んでいた。

「ねぇ、聞きまして!?ランド殿下とアテナ・フォンシュタイン公爵令嬢のお話?」

 ルイ―ネの友人の一人、エレーナ・エゴロワ伯爵令嬢は、彼女の情報網によって仕入れた新鮮なニュースを、この場で提供した。彼女は専ら、お茶の間を騒がすニュース速報を提供するキャスターの役割を担っている。

「えぇ!殿下とアテナ様がまた!?ルイ―ネ様のお話だと、先日もアテナ様が殿下に対して、図々しくもデートのお誘いをして、恋人面をしていたという話でしたわよね!?」

 エレーナの話に食いついているのは、ベラ・イワノワ伯爵令嬢である。彼女はリアクションを担当しており、ここでは専ら、他の2人の話に大袈裟な反応を示し、話を盛り上げる役割だ。

「えぇ、ベラ様。今度は殿下がアテナ様に、学園のダンスパーティーのお誘いをしたそうですわよ!」

「な!なんですって!?あの小娘に、殿下がダンスパーティーのお誘いを!?」

 ベラが、仰け反りながら両手を上げて、エレーナの言ったことを復唱する。
 彼女はアテナのことを「小娘」と呼んでいるが、彼女達はアテナの1つ上の学年で、ランドと同級だ。

「どうやらアテナ様、その殿下のお誘いを受けたそうですわよ!」

「まぁ!なんて厚かましいんでしょう!あの小娘、レオン様やボルト様を私達から奪うだけでなく、今度は殿下までルイ―ネ様から奪うつもりなのね!」

 ベラは興奮気味にそう叫んだ。だが、彼女の話には誤りがあった。彼女の「奪う」という発言は、さもレオンやボルトが彼女やエレーナの恋人かのように聞こえるが、実際は交際関係はない。せいぜいが級友として挨拶をする程度の関係だった。彼らは、彼女達にとって高嶺の花だったのだ。

 なお、彼女達のボスであるルイ―ネは、ランドに何度もアプローチをかけているが、全く相手にされていなかった。彼女は、自分が人よりどれだけ素晴らしいのかを熱く彼にプレゼンしていた。そうすれば、彼が自分のことを好きになると信じていたのだ。
 そうして、自分がどれだけ他者よりも上にいるのかというマウンティング自慢を彼に披露し続けた結果、彼からは疎まれてしまったのだ。「俺は君に興味がない。他者を見下して自分の優位性を示す行動は不快なだけだ」そうぴしゃりと言われてしまった。


「「 どう思われます!?ルイ―ネ様!!! 」」

 2人は今までの情報の総括をボスに託した。2人の息のあったコンビプレイは見事なものだった。

「まぁまぁ、エレーナ様もベラ様も少し落ち着きになって」

 対するルイーナは落ち着き払っている。なぜなら、落ち着き払っている方が大物感が出るからだ。落ち着いている自分が、落ち着きのない令嬢2人を諫める。その流れは彼女の自尊心を満たす行動の一つだ。
 それを知っていた取り巻き2人は、ワザとこのように場を演出して、ルイーナのご機嫌を取っているのである。茶番だった。

「ですが、お二人のお気持ちもわかりますわ。『恋の女神』などと過分に評されているアテナ様は・・・少しばかり調子に乗っていらっしゃるのかもしれませんわね」

ごくり

 静かに紅茶を飲んだルイーネが冷たい声でそう言い放つ。それを、2人が緊張した面持ちで喉を鳴らした。
 もちろん、これも空気を読んだ2人の演出である。本気になったルイ―ネは怖いぞ、という演出だ。

 そうして、十分に自尊心を満たしたルイーネは、取り巻き2人と一緒に、アテナを貶めるための作戦会議をするのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この異世界転生の結末は

冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。 一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう? ※「小説家になろう」にも投稿しています。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...