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02 帰宅

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 ようやく下校時間だ。
 僕はすぐさま下校した。これ以上、この場にはいたくなかったからだ。

 道を歩いていると、街の様々な場所で人々は特訓に励んでいる。


 右をみると、数十人の人々が公園の中の大きな木の周りに立って、落ちてくる木の葉に正拳突きを放っていた。
 あれはヒュウガ子爵家だな。

「ヒュウガは木の葉にて最強!」

「「 ヒュウガは木の葉にて最強!!! 」」

 みんなで掛け声を上げながら木の葉を拳で砕いている。
 すごいなぁ。僕なんて、拳を葉っぱに当てることすらできないよ。


 今度は左を見てみる。
 すると、そこには数十人の人々がジャージ姿で屈伸をしていた。ランニング前の準備運動かな。
 あれはイチマル男爵家だ。下半身の強化に力を入れている家だね。

「今日のランニングは何キロですか!?」
「13kmや」

 男爵家の糸のように細い目をした男爵がニヤっと笑ってそう言っていた。


「なん・・だと・・・」

 僕は思わずそう口に出していた。僕なんて1kmも走ることなんてできないのに!

 皆、すごいな・・・。

 そして、僕は帰宅した。





「ミートよ!サラダ男爵家から連絡があったぞ!お前とレタス嬢の婚約を破棄する、という内容だ!」

 帰宅して早々、父から怒られた。サラダに婚約破棄された件でだ。

「お前の醜悪な肉体に我慢の限界に達したそうだ!俺もお前のその肉団子のような肉体は見るだけで腹が立っていたわ!運動もせずに食べてばかり。このボール男爵家の面汚しめが!」

 父までもが・・・僕のことを肉団子と呼ぶなんて・・・

「父さんが毎日僕にたくさんご飯を食べさせたからでしょう!?」

 僕は必死で訴えた。

 そう、僕の身体が太り始めたのは、父が原因といって良いだろう。

 父は、強靭な肉体を作るためにはたくさん食事を食べることが一番だと考えている。
 そのため、僕は幼い頃からずっとご飯をたくさん食べさせられてきたんだ。

 「お米食べろ!」って言って、毎食ご飯山盛りで、わんこそばみたいに食べたらすぐにおかわりが追加される。

 さらに、揚げ物、肉、ポテト・・・デザートも山盛りだ!


 うちは副業で、大食いレストランチェーンを国内で何店舗も経営しているから、実家である「ボールレストラン本店」の料理を山ほど食べさせられたんだ!

 朝食、10時のおやつ、昼食、3時のおやつ、夕食、夜食。1日6食だよ?!
 しかも、毎食限界まで食わされるんだ!

 食べたらお腹が痛くて動けなくなるんだ!運動?できるわけないだろ!

 バカじゃないのか、この糞親父は!?

 そりゃあ、食べたものを全部吐けばできるかもしれないけど、食べ物がもったいないじゃないか!


 おかげで見ての通り、人間肉団子の完成さ!


「父さんのバカ!」

 怒りでいっぱいになった僕は、思わずそう言っちゃったんだ。

 ・・・この後僕が、どんな目にあうかも知らずに。
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