上 下
4 / 11

04 キャスリーンは僕の癒し

しおりを挟む
 キャスリーンは、僕が聖剣を抜く少し前に婚約した女の子だ。

 可愛らしく優しい彼女のことを、僕は昔から大好きだったんだ。彼女も僕のことを慕ってくれていたと思う。

 だけど、そんな僕らの関係も、僕が聖剣を抜いたことで変化してしまった。僕は聖剣を使いこなすために修行にかかりっきりになってしまったからだ。僕は父上に、キャスリーンとの婚約解消をするようにお願いした。このままでは彼女を不幸にさせてしまうと思ったからね。だけど、こちらからのお願いで婚約したから、こちらから婚約を解消する訳にはいかなかったんだ。キャスリーンに落ち度はない訳だし、聖剣を抜いたから婚約解消します、なんて言えない。

 だから僕は、キャスリーンにおバカな振舞いをして、彼女に呆れられようとしたんだ。僕に呆れたら、彼女の方から婚約解消なり、婚約破棄なり、なんらかの行動に出てくれるんじゃないかと思ったから・・・卑怯だよね、僕。自分でも嫌になるよ。

 それで、実際に呆れられることには成功したんだけど、彼女は僕を見捨てなかった。呆れつつも、彼女は僕の婚約者で居続けてくれたんだ。父からも彼女の父である公爵に「キャスリーン嬢の意思で自由に婚約破棄してくれて構わない」って言ってくれてたんだけどね。

 彼女はどうも、人を見捨てることができない性格なんだろうね。彼女は昔から多くの人間から愛されていた。勿論僕も彼女を愛している。昔から今まで。そう、婚約破棄した今もだ。彼女ほど魅力的な女の子なんて、世界中どこを探したっていないよ!僕にとって彼女は最高の女神なんだ。

 彼女の性格は勿論昔から素晴らしいままだ。そして問題は・・・容姿だ。幼い頃はぺったんこだった胸やお尻が、成長と共にとんでもないことになっていったんだ。もう僕はドキドキしっぱなしさ!それでも僕は、彼女と婚約破棄するために、鼻血が出るのを堪えながら彼女の胸を凝視した。

 ・・・勘違いしないでほしいが、僕は彼女の胸を見たいから見ていたわけじゃない。あくまでも彼女に愛想を尽かされて婚約破棄されるためなんだ。いや、確かに彼女の巨大な双丘は魅力的だよ。胸とお尻の2つの双丘さ。僕も夜に何度も彼女の双丘を思い出した。剣を振っている時も思い出してしまって、剣をもう一本生やしてしまったこともしょっちゅうだ。

 ・・・ああ、わかったよ、訂正するよ。1%・・・いや5%・・・いや10%・・・ああ!わかったよ!白状するよ!99%!僕の私情で彼女の胸を凝視していたよ!彼女の去り際にはお尻も凝視していたよ!だって仕方ないだろう!?あれはもうね、ファンタジーなんだ!夢と希望が詰まったミラクルファンタジーなんだよ!

 おっと、興奮して鼻血が出てしまったよ。少し落ち着こう。

 まぁ、つまりは彼女は僕の癒しだったのさ。彼女の存在が、過酷な僕の剣の修行を継続させた。そしてつい最近までに至る訳さ。

 ・・・ああ、闇の化身の復活の兆候を知るまでにね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

ゲームと現実の区別が出来ないヒドインがざまぁされるのはお約束である(仮)

白雪の雫
恋愛
「このエピソードが、あたしが妖魔の王達に溺愛される全ての始まりなのよね~」 ゲームの画面を目にしているピンク色の髪の少女が呟く。 少女の名前は篠原 真莉愛(16) 【ローズマリア~妖魔の王は月の下で愛を請う~】という乙女ゲームのヒロインだ。 そのゲームのヒロインとして転生した、前世はゲームに課金していた元社会人な女は狂喜乱舞した。 何故ならトリップした異世界でチートを得た真莉愛は聖女と呼ばれ、神かかったイケメンの妖魔の王達に溺愛されるからだ。 「複雑な家庭環境と育児放棄が原因で、ファザコンとマザコンを拗らせたアーデルヴェルトもいいけどさ、あたしの推しは隠しキャラにして彼の父親であるグレンヴァルトなのよね~。けどさ~、アラブのシークっぽい感じなラクシャーサ族の王であるブラッドフォードに、何かポセイドンっぽい感じな水妖族の王であるヴェルナーも捨て難いし~・・・」 そうよ! だったら逆ハーをすればいいじゃない! 逆ハーは達成が難しい。だが遣り甲斐と達成感は半端ない。 その後にあるのは彼等による溺愛ルートだからだ。 これは乙女ゲームに似た現実の異世界にトリップしてしまった一人の女がゲームと現実の区別がつかない事で痛い目に遭う話である。 思い付きで書いたのでガバガバ設定+設定に矛盾がある+ご都合主義です。 いいタイトルが浮かばなかったので(仮)をつけています。

腹黒聖女の影武者に無理矢理させられましたが、実は聖女様より私の方が聖なる力を持っていました

白桃
恋愛
 貧民街で生まれ育った少女ミリアムは、ある日突然女神アルテシアの化身と呼ばれる聖女アナイスの『影武者』に選ばれる。  食うや食わずの生活から、一転して聖女として扱われるようになったミリアムであったが、実は裏では『腹黒聖女』と陰で呼ばれている聖女アナイスの策略が蠢いていた。  そして遂にアナイスの影武者として表舞台に立ったミリアムは、聖女を狙う組織の凄腕暗殺者ジェイドに襲われることになる。  しかし絶体絶命のその時、ミリアムの体からとてつもない聖なる力が放出され、ジェイドは一瞬にしてその闇に染まった心を浄化されてしまい、逆にミリアムに恋心を抱いてしまう。  これは貧民街に生まれ、神に見捨てられたと思い込んでいた少女が、真の聖女に目覚める物語なのです。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

お花畑な人達には付き合いきれません!

ハク
恋愛
作者の気まぐれで書いただけ。

聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?

水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。 理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。 本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。 無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。 そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。 セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。 幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。 こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。 そして、ある日突然セレナからこう言われた。 「あー、あんた、もうクビにするから」 「え?」 「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」 「いえ、全くわかりませんけど……」 「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」 「いえ、してないんですけど……」 「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」 「……わかりました」 オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。 その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。 「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」 セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。 しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。 (馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)

聖女はただ微笑む ~聖女が嫌がらせをしていると言われたが、本物の聖女には絶対にそれができなかった~

アキナヌカ
恋愛
私はシュタルクという大神官で聖女ユエ様にお仕えしていた、だがある日聖女ユエ様は婚約者である第一王子から、本物の聖女に嫌がらせをする偽物だと言われて国外追放されることになった。私は聖女ユエ様が嫌がらせなどするお方でないと知っていた、彼女が潔白であり真の聖女であることを誰よりもよく分かっていた。

魔法を使える私はかつて婚約者に嫌われ婚約破棄されてしまいましたが、このたびめでたく国を護る聖女に認定されました。

四季
恋愛
「穢れた魔女を妻とする気はない! 婚約は破棄だ!!」 今日、私は、婚約者ケインから大きな声でそう宣言されてしまった。

処理中です...