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06 タッグを組んだ2人

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 ふう、この気持ちはどうしたら良いのか・・・

 王城の廊下で、私はモヤモヤとした気持ちで歩いていた。

 グスタフ・ブランス侯爵令息への気持ちは日に日に強くなる一方だったのだ。肥大化した気持ちは、大将軍としての職務にも影響を及ぼすようになってしまっていた。
 王城での会議中にもだ。会議でどんな話がなされていたかも、記憶が定かではない、いったいどうすれば・・・。

「エーデルワイス大将軍、様子が以前と違うようだが、体調が悪いのか?」

 そんな私に声をかけてきた人物がいらっしゃった。
 レンデス殿下。第3王子である。

「レンデス殿下。・・・いえ、なんでもありませぬ」
「なんでもない、ということはなかろう。はたから見ていても、大将軍が平常の状態ではないことはわかる。何か悩みがあるのではないか?もし良ければ私に話してほしい。力になりたいのだ」

 そう、優しいお言葉をかけてくださった。この御方が本心からそう声をかけてくださっている。
 心がかなり白いからだ。王族でここまで白い方もめずらしいものだ。

 決して他者に明かすまいとしていた私の気持ちだが、私はつい、王子に話をしてしまったのである。







「そうであったか、それは辛いな。わかるぞ」
「殿下もわかってくださいますか???もうアタシの心はダーリンでいっぱいなんですのよ!!!」

 エーデルワイス大将軍のただならぬ様子を見て話を聞いた私だが、まさかこんな偶然があるとは・・・。
 彼は俺の想い人であるクリスティーナ嬢の婚約者である、グスタフ・ブランスに懸想しているのだという。

 大将軍が男色家であったことも驚いたが、彼がグスタフの魅力を語り始めてからの口調の変わりようには度肝を抜かれた。二重人格ではないかと疑うほどの変わりようだ。

 大将軍は、彼の見た目と心の内のどす黒さのギャップに惹かれているのだという。正直俺には、まったく魅力に感じられなかったのだが、お互い婚約者がいる相手を想ってしまう辛さは痛いほど理解できる。

 そんな彼に、俺もクリスティーナ嬢を懸想していることを打ち明けた。俺達はお互いに同じ境遇だ。彼も「まぁ殿下もなんですの!?それはお辛いわねぇ」と気持ちをわかってくれた。
 傷の舐め合いのようではあるが、俺も話をしたことで少し心が楽になれた気がする。

 もしグスタフがエーデルワイス大将軍とくっ付いてくれれば、俺にもチャンスが・・・と一瞬考えたが、どう考えてもグスタフが彼と恋仲になる訳がない。彼は大の女好きだ。クリスティーナ嬢という絶世の美女を婚約者としていながら、影で様々な女性と浮気をするような下衆なのだ。

 もし・・・エーデルワイス大将軍がグスタフ好みの美女だったら・・・、そんな無意味な考えがよぎった俺に・・・悪魔の閃きが浮かんだのだ。

「・・・殿下、今、何をお考えですか?・・・よろしければ私にお話しください。・・・決して他言は致しませんので」

 急に大将軍の口調が元に戻った。・・・彼の前では隠し事はできんか。彼の話だと、彼は人の心の色がわかるというからな。恐らく、私の心にどす黒いものが見えたのかもしれない。

 そして私は、悪魔の閃きの内容を彼に話したのだ。

 それは、ここから遥か離れた魔法大国にある秘薬の話である。
 その秘薬は、服用したものの姿や声を、自分の理想とするものに変えるというものだ。時間制限はあるが。

 そして、その薬を私が数年前に偶然手に入れたという話をだ。



 その話をした時、エーデルワイス大将軍の目が妖しく光ったように見えた。私は他者の心の色を見ることはできないが・・・おそらく彼の心にも、私と同じどす黒いものが湧いたのだろう。

 そして、我々は手を組むことになった。

 お互いの想い人を手に入れるために。
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