上 下
3 / 12

03 カミーユ様の正体

しおりを挟む
 その男性のどでかいお声によって、一時、その場の悲鳴は止みました。

 え、誓います?

 どういうことでしょう?カミーユ様はどこへ消えてしまったのでしょうか?

 この男性は一体誰なのでしょうか?


 そう思った私は、偶然、その男性の腰に目が行きました。その股間を隠している布きれにです。

 あれ?あの布切れってもしかして、カミーユ様がお召しになっていたドレスでは・・・?

 それに・・・あれ?よく考えたら、エーデルワイス辺境伯家にご令嬢っていたかしら?

 それに・・・カミーユ・エーデルワイス様って、たしか・・・


 そんな考えを巡らす私をよそに、殿下は涼しい声で上級婚礼の締めくくりの言葉を告げました。



「では、神の前で、永久の愛を約束する証である、誓いの口付けを」



「ま、待て!待ってください!殿下!こんな奴は知らない!俺のカミーユは!愛しのカミーユはどこへ!?」


 その声が聞こえた途端、その男性・・・カミーユ・エーデルワイスは、グスタフ様のお顔を両手でガシ!っと掴んで持ち上げました。

 グスタフ様の足は、大広間の床から中空に浮いています。


「あ、あああああ!やめろ!!!!やめろおおおおおお!!!!!」


 そして・・・


「ダーリン♡永久の愛を誓います♡♡♡」










ぶちゅうううううう









・・・







 私は、こんな激しい誓いのキスは、見た事がありません。今までに見てきた結婚式のどんなキスよりも、激しく、濃厚で、まるで貪るようなキスでした。

 そんなキスでした。エーデルワイス辺境伯様のキスは。

 そのキスを目撃した観衆の反応は、驚きのあまり失神する方、呆然とする方、ハァハァと荒い息をして、食い入るように見つめる方など、様々でした。

 私の反応は、呆然でした。



 そして、長く、激しいキスが終わりました。

 あまりに激しいキスで、グスタフ様は白目を剥いて失神されてしまったようでした。
 本当に大変なショックだったのでしょう、彼の股間には大きなシミができていました。どうやら、失禁もしてしまったようです。



 そんな光景を前に、殿下は声高らかに言いました。

「ここに永遠の愛は誓われた!皆さま!盛大な拍手を!」


・・・ぱちぱち

ぱちぱちぱちぱち!!!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!!


 殿下の御言葉で、その場にいた方々から拍手が広がっていきます。

 最初はまばらだった拍手は、さざ波のように広がっていき、ついには、われんばかりの大拍手に!



「お幸せにー!」
「お二人の永久の愛に乾杯!」


 そんな声が各地であがっています。
 よく見たら、先ほどお二人のキスを、ハァハァと荒い息をして、食い入るように見つめていた方々でした。

 私もそれにならってお声をかけることにしました。

「オシアワセニー」



「うふふふ♡♡♡♡♡ダーリン♡♡♡♡♡今夜は寝かせないわよ♡♡♡♡♡♡熱い夜を過ごしましょうね♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」



 そう言って、エーデルワイス辺境伯様は、その逞しい腕でグスタフ様をお姫様抱っこすると、大広間からニコニコと去っていきました。

 グスタフ様は、ピクピクと痙攣していらっしゃいました。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

ざまぁを回避したい王子は婚約者を溺愛しています

宇水涼麻
恋愛
春の学生食堂で、可愛らしい女の子とその取り巻きたちは、一つのテーブルに向かった。 そこには、ファリアリス公爵令嬢がいた。 「ファリアリス様、ディック様との婚約を破棄してください!」 いきなりの横暴な要求に、ファリアリスは訝しみながらも、淑女として、可憐に凛々しく対応していく。

村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗
恋愛
父親がいないことによって、エルーシャは村の人達から迫害を受けていた。 彼らは、エルーシャが取ってきた食べ物を奪ったり、村で起こった事件の犯人を彼女だと決めつけてくる。そんな彼らに、エルーシャは辟易としていた。 ある日いつものように責められていた彼女は、村にやって来た一人の人間に助けられた。 その人物とは、公爵令息であるアルディス・アルカルドである。彼はエルーシャの状態から彼女が迫害されていることに気付き、手を差し伸べてくれたのだ。 そんなアルディスは、とある目的のために村にやって来ていた。 彼は亡き父の隠し子を探しに来ていたのである。 紆余曲折あって、その隠し子はエルーシャであることが判明した。 すると村の人達は、その態度を一変させた。エルーシャに、媚を売るような態度になったのである。 しかし、今更手の平を返されても遅かった。様々な迫害を受けてきたエルーシャにとって、既に村の人達は許せない存在になっていたのだ。

【短編】お姉さまは愚弟を赦さない

宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。 そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。 すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。 そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか? 短編にしては長めになってしまいました。 西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。

「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。 主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。  元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。  出ていくのは、貴方の方ですわよ? ※カクヨム様でも公開しております。

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。  姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。  ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。

処理中です...