紫電の射手 勇者パーティで無能扱いされて追放しかし、雷に打たれて世界最強の魔法剣士に!

秋水

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第二章 紫電の剣

act.31 大胆不敵なモニカちゃん

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「よし、行こう」

 意を決して前に進もうと思ったイグナール。しかし、彼は身動き1つ取らない。そう、開け方がわからないのだ。

「申し訳ございません。どうやら現在、研究所は警戒モードとなっているようでございます。扉は全てロックされ、施設の出入りが出来ない状態です」
「警戒? ああ、あれか……」
「あれでございますね」

 何か意思が通じ合ったかのようなイグナールとマキナ。研究所が警戒モードになっている原因に心当たりがあるようだ。2人はチラリとモニカを見やる。

「ああ……やっぱり?」

 モニカは悪戯をした子供が親に恥ずかしながら許しを請うように上目使いで2人を見上げる。イグナールはどう言ったものかと思案顔を浮かべ、マキナはいつも通りの無表情。

「あーもう! 私のせいなんだったら私がなんとかするわよ」

 沈黙に耐え切れなくなったモニカはイグナールを扉の前から退かせる。

「『我に眠りし力よ、我が意思に従え』『揺蕩う水よ、形を成し顕現せよ』」

 彼女の側に握りこぶし程の水弾が複数出現する。

「おいモニカマジか」
「大丈夫よ、ちゃんとこの扉だけ何とかするから」
「いえ、モーニカ様その――」
「アクアボール!」

 ヒューマン・スライム戦の時にも発揮された彼女の大胆さ。それが仇となった。マキナの落ち着き払った制止は届かず彼女は水弾を飛ばし扉を穿つ。

 扉は穴で円を描き、人ひとりが十分に通れるほどの通路を作った。

「ほら、大丈夫でしょう」

 立ちふさがる扉だけを綺麗に破壊して、彼女は得意気な表情だ。イグナールはモニカのセンスと魔法の扱い、彼女の実行力に脱帽である。

 ビー‼ ビー‼

 突如鳴りだし、たけたたましくも人の心を焦らせる音が研究所を埋め尽くす。先程まで銀と白の間(はざま)で清潔であった研究所内が真っ赤に染まる。内部を照らしていた明かりが赤色に明滅しだしたのだ。

「え、なになに!」

 先程までの表情はどこへやら、モニカは身を硬くし怯えるような表情へと変わる。

「大変ことになりました」

 全く大変そうにない様子のマキナが告げる。

「これは侵入者撃退モードへと移行したようです。間もなく守護者(ガーディアン)が到着することでしょう。この狭い通路で囲まれると厄介ですので、こちらへ」

 マキナはその言葉を言い終わると廊下を走り出した。

 彼女の言っている全てを把握したわけではないが、イグナールは敵が来るのだろうと予想した。自分の仕出かしたことで、後悔の念に打ちひしがれ固まっているモニカの手を引き、マキナを追いかける。
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