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第一章 紫電の射手
act.15 炸裂! フレイムボール!
しおりを挟む「それじゃ、次は武器のエンチャントね。そのままのイメージを保ったまま剣を持ってみて」
イグナールは左手に魔石を移し、細身の直剣を鞘から引き抜く。そして自然な動きで敵と対峙したときのように構えをとる。
「剣が自分の手足の延長だと思って、それから剣にも魔力を纏わせるイメージ」
彼女が言ってしばらくするとイグナールを覆っていた蒼の魔力が剣をも包み込む。
「すごい! さすが2年間剣術修行してただけあるわね」
イグナールは拳を握りしめ、静かに喜びをかみしめる。
「モニカ……ありがとう!」
「いえいえ、どういたしまして! そのイメージちゃんと覚えててね!」
「あぁ! だけど、今のままじゃ時間がかかってしょうがないな……」
「そのための詠唱よ。剣術でも1連の動作に名前を付けたりするでしょう? さっき覚えた魔石から魔力が流れ込むイメージと『魔石に眠りし力よ、我が意思に従え』って詠唱を結び付けて覚えるの」
なるほど、とイグナールは魔石を握り唱える。
「よし、『魔石に眠りし力よ、我が意思に従え』……おぉ! 魔力を感じるぞ!」
こればかりはさすがとしか言いようがない。詠唱が手伝ったとはいえ、イメージを定着させるのも簡単なことではない。それをこの短い間にここまで短縮してしまうとは……血筋の成せる業だろうかとモニカは思う。
「ところで、身体強化の詠唱と武器エンチャントの詠唱も教えてくれ」
「はいはい、えーっとね」
◇◇◇
イグナールとモニカは依頼書に記されていたバージス近郊の森までやってきた。
「くそ! ちょこまかとしやがって!」
2人は依頼達成のためスライムを追い回し奔走していた。イグナールの剣は炎を纏って煌々と燃え上がる。しかし、人の膝下に満たないゼリー状の魔物は近接主体のイグナールには骨の折れるもとい、腰の折れる相手である。
スライムの形状や大きさも個体によって差は出るが、彼らが相手をしている種類は小さく逃げ回ることが得意だ。
「よし! そっち行ったぞモニカ!」
「任せて! 『魔石に眠りし力よ、我が意思に従え』『燃え盛る炎よ、形を成し顕現せよ』」
彼女の周りに人の頭と同じ程度の炎で形成された球が3っつ浮かびあがる。
「一網打尽よ! 『フレイムボール』」
イグナールが追い立て集め、モニカが一掃する。彼らが小一時間程スライムを追い回した結果、考え出した作戦だった。
炎の球は集まった5匹程のスライムを蒸発せしめた。
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