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不死の姫と勇敢な騎士
78 拮抗
しおりを挟む「姫様! 彼女に話したのですか⁉」
「今はそんなことを言っている状況ではありません。秘密も守れない騎士の恥晒しはあとで処罰するとして、ラルフは別部隊の加勢に行ってください」
「いやしかし、相手は強敵だぞ」
「私に勝てない貴方が、加勢して何になると言うのですか?」
「うぐっ!」
剣で勝てず、口でも勝てず、ただ引き下がるしかないラルフ。
「勝てよ」
「当然です」
リーザに一言残し彼は別部隊の加勢のため走り出した。
「ふん! ベルクとは女に頼らざるを得ない程に逼迫しておるのか……嘆かわしい。戦場は女の、しかも従者風情が出る幕ではない!」
「それは私の首に剣を突き立ててから言ったらどうですか? それとも女だから油断した、手心を加えたと、あの世のお仲間への言い訳にでもするおつもりで?」
毒を吐く彼女はなんと饒舌であろうか。
「これ程までの侮辱……女の戯言とは言え、看過できんな」
コルネリウスが剣を構えリーザを睨み付ける。それを受けリーザも睨み付ける。両者の殺気が行きかいそのの空間だけ、何人(なんびと)たりとも踏み入れてはならない世界に思える。私はその隅でリーザを見守るしか出来ない。
誰が合図をしたわけでもなく、両者同時に踏み込み駆けだす。
「はあ!」
剣を高らかに掲げ、振り下ろすコルネリウス。彼女は刃の腹で受け止めようと構える。しかし、彼女だけの膂力では太刀打ちすることは出来ない。奴の力は私がこの体を持って体感済みだ。
剣と剣がぶつかり乾いた音が響いた瞬間、リーザは手首を捻り切っ先を地に向ける。コルネリウスの剣は彼女の剣の腹を滑り落ちる。前のめりに倒れそうな奴は、一歩を踏み出し踏ん張る。構え直したリーザの剣が無防備となった首へ向け振り上げられる。
その一撃を首を可動域限界まで後ろにそらし、間一髪で避けたコルネリウス。だが、振り上げられたリーザの剣が翻り、二の太刀が襲い来る。
取った!
ギィィィン!
そう思ったがまたも金属音が鳴り響く。コルネリウスは彼女の剣を左の手甲で受け止めていた。すかさず右手に握った剣を振り上げ、リーザの剣を弾く。体勢を崩された彼女は素早く後ろに飛び退き距離を取る。先程までリーザがいた空間をコルネリウスの剣が切り裂いた。
「ふん! 口だけのことはあると言うことか」
一瞬の攻防ではあったが二人の実力が拮抗しているのは瞭然である。
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