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不死の姫と勇敢な騎士

73 聖槍

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 裸同然のリーザを放っておくわけには行かず、一端関所まで戻ってきた。女性の着替える場所などないため、部屋の角に着替える場所を急設した。私もボロボロなのだが、彼女を優先する。
 不死の軍勢たちは平原で見張りを命じた。彼らは二つ返事で従いその場に残った。

「それで姫様、先程のことをお伺いしたいのですが……」

 リーザの着替を待っている間にラルフが尋ねてきた。先程……帝国兵の死体が動き出したことだろう。

「あれもヴァルハラの力よ……そもそもこの槍は聖槍なんて神々しい代物じゃないのよ。奇跡とは程遠い呪いの類よ」
「その話はどこから?」
「お父様の部屋で初代ベルク王が残した書物を見つけたのよ」
「なるほど、そんな物があるとは……それで奇跡とは程遠いと言うのは?」

 私は椅子に腰かけ、ラルフにも座るようにと指示する。

「この槍によって殺された者たちは、その魂をヴァルハラに取り込まれるらしいの。他の者の傷を治すときはその者の生命力、魂を削って治すのだけど……所有者である私に至ってはヴァルハラが取り込んだ魂を使って治すのよ」

 生唾を飲み込み、信じられないと言う顏でこちらを見るラルフ。しかし、その力について散々見てきた彼としては否定することも出来ない。

「そしてその魂を死体を使って使役するのが不死の軍勢(エインヘリアル)……天に昇るはずだった魂を捕らて閉じ込め、弄(もてあそ)び、すり潰すように使い捨てる。こんなの呪い以外の何物でもないと私は思う」

「確かに、呪いのようです。ですが今それを持っているのは誰でもない、姫様です。貴方は私利私欲でそのおぞましい力をお使いになりますか?」
「そんな事するはずないじゃない!」
「ならば……我々にとってはやはり、国の窮地を救う聖槍です。貴方の手の中にあり続ける限り、未来永劫それは変わらない」

 ラルフ……

「お待たせしました」

 話が一段落したところでリーザが出てきた。彼女が従者の制服以外を身に着けているのはやけに新鮮だ。先日帝国の鎧に身を包んでいたものの、あの時はそんな事を考える余裕はなかった。

「あんな重い鎧を着ていなければ、あんなやつらに後れはとりません」

 本当は戦いになど彼女を送りたくはない。しかし、そんな思いで抑えつけていたからこそあんな無茶をしたのだろう。だから今度は横に並んで、リーザを助けたり助けられたりしよう。彼女と共にあろうと考えた。

 彼女の肩に手を置き、目を見る。

「頼りにしているわ。リーザ」
「お任せください。姫様」

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