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不死の姫と勇敢な騎士
24 平和
しおりを挟むカスパルが教えてくれた星のよく見える小高い丘へとたどり着いた私とリーザ。私たちは適当なところで腰を下ろし、世界の天井を見上げた。両端にアウスティン山脈が見え、その間に満天の星たちが輝いている。
「部屋から見上げる空も綺麗だけど、外で見る星たちはどうしてより一層輝いて見えるのかしら」
目に見える光景は大きく変わらないのに不思議なものだ。
「それは目指すべきものが見えたからなのではないでしょうか。姫様の悩みや不安の雲が晴れた……簡単に言ってしまうと気持ちの問題です」
月の子として生を受けてから今まで、不満は全くなかった。お父様とお母様は優しく、私をいつも見守ってくれてる。リーザやラルフは幼い頃からの付き合いでいつも私の味方だった。酒場の店主のカスパルや常連の皆も私を受け入れてくれた。きっと口うるさい教育係の彼女も私のことを思って言ってくれているに違いない。
昔私が受けた侮蔑の視線。口や態度には決して出したわけではないけど幼い私でも、いや幼いからこそ強く感じた視線。それが心に小さなトゲとして刺さり続け、私をずっと曇らせてきたのかもしれない。ごく一部の人間の視線に怯え、お父様やお母様、ラルフにリーザ、大勢の人々が与えてくれる優しさを享受出来ていなかったのかもしれない。
私は自分が思っている以上に愛されている。国に、人に……
では私が出来る恩返しはこの国がより良いものになるように、この国が未来永劫、平和で幸せでいることに尽力することだろう。生まれた決意が形を成して成長していく。停滞していた時間が動き出したような……雪が融け、川として流れ始めたような……
星を眺めながら私から生まれた決意をゆっくりと心の中に広げる。
大きな目標が出来た。皆が信じてついて来てくれるようなそんな立派な王になりたい。
ならばそれを叶えるための小さな目標を作らないといけない。まずはしっかり勉強しよう。本を読むだけでは得られないことを教育係の彼女から学ぼう。そして訓練、ラルフからも学び続けよう。ただ体を動かしたいと言う理由ではなく、騎士たちが安心して背中を預けられるような。夜には町に繰り出そう。民が何を幸せに感じ、不満を抱いているのかをたくさん聞こう。
なんだ、今の日常とそんなに変わらないものなのね。
でも一つ一つに向き合う心がきっと違う。それは大きな一歩だと思う。
「よし! 明日から忙しくなりそうね!」
勢いよく立ち上がった私は暗闇で見えもしない水平線を見つめた……おかしい。空には満天の星が輝き、水平線のぎりぎりまで満たしている。しかし、さらにその下にも星が見える。それはぼんやりとしか見えないが揺れているようにも見える。
星ではない暗闇を照らす蝋燭の火に似た灯り。
「ねえリーザ……あの光は何かしら?」
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