ぼっちは今日も穴を掘る。

鵜食練

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5.にんげんこわい

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 トラウマ注意!
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 俺を包む白い光が晴れると目の前にザ・ファンタジーな世界が広がっていた。
 
 俺は周りを見渡す。
 
 俺の後ろには噴水があって、噴水の周りに広場が広がっている。広場にはレンガが敷かれていて、オシャンティーな雰囲気だ。リアルだけど、CGではないアニメ調の美しい世界。
 この世界なら、生きていくのが楽しそうだと思えてくるほどだ。

「あんちゃん、迷い人か?」

 目の前にいかにも冒険者ですといった風貌のおっさんが立っていた。
 あまり近づかないで欲しいです。
 人間怖いので。

「わけもわからないままこの世界にやってきて大変だろう。俺がこの世界の色々な事を教えてやろうか?」

 俺の前にウィンドウが現れる。
 
 クエスト【チュートリアル】受諾しますか? YES・はい

 とウィンドウに書いてある。

 断わるという選択肢はないのか?
 どんだけ教えたいんだろう?
 まあ、チュートリアルは受けた方がいいだろうから受けるけどさ。
 そういえばこいつ、NPCなのかな?それともプレイヤー?
 プレイヤーだったら、受けたくないなー。
 人間と会話するの嫌だし。

「俺がこの世界の色々な事を教えてやろうか?」

 さっきのおっさんがまた同じことを言ってくる。
 違う言い回しをするとかいう工夫はないのか?AIの天使(仮)さんの方が語彙力あるぞ。
 あと、若干言い方が俺様系なのはなぜ? 
 なかなかにダンディな顔をしてらっしゃいますけど……流石に範囲外。
 それ以前におっさんは無理。 
 若かりし頃はさぞかしモテたんでしょうねぇ。

「俺がこの世界の色々な事を教えてやろうか?」

 あ、こいつ絶対NPCだ。どっかの王様なみに、はいを押さないと同じ事しか言わないやつだ。まあ、何度も続けるとかわいそうだしOKを押すか。


「なあ、一緒にパーティー組もうぜ!」

 俺に向けて言われた言葉じゃないということは分かっているし、振り返るなんてヘマはしてない。他の人が俺以外の誰かに向けて言った言葉だろう。けど、俺に衝撃を与えるには十分だった。

 他の、人がい…る?
 他の、人がいる。

 周りをそっと見渡す。人がいっぱいいる。

 VRMMOの広場だ。人の集まる場所だ。人が集まることは別段不思議ではない。問題はそこではない。『人がいる』のだ。

嫌だいやだイヤだいやだこわい怖いコワイこわい怖いいやだイヤだこわいコワイ怖いこわい気持ち悪いキモチワルイこわいこわいいやだイヤだ気持ち悪いいやだいやだこわいこわいいやだキモチワルイ怖いコワイ嫌ダイヤダいやダコワイこわイこわいきもちわるいキモチワルイ気持ち悪い怖い嫌だ

 今まで逃避してきた世界が一気に押し寄せてくる。認めたくない『現実』が押し寄せてくる。今まで気付かない振りをしていた、『人間』という名の。
 
「あ”あ”あ”ぁ”ァ”ァ”ァ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”ァ”ァ”」

 頭がすっごく痛い。きっと、人間の近くにいるからだ。逃げなきゃ。 

「あ”あ”あ”ぁ”ァ”ァ”ァ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”ァ”ァ”」

 痛い。早く逃げないと。

 俺は逃げる。人のいない方へと逃げる。
 
「あ”あ”あ”ぁ”ァ”ァ”ァ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”ァ”ァ”」

 痛い。まだ痛い。どれだけ逃げればいいのか。

「ぐぉ”う”ぇ”ぉ”」

 吐き気がする。視界に《警告》という文字が現れる。このままじゃ、強制ログアウトさせられてしまう。吐いたら強制ログアウトだ。我慢しないと……。

「ぐぉ”う”ぇ”ぉ”う”、う”ぐ”ぅ”ぇ”」

 吐き気が収まらない。我慢しないと……。もっと逃げないと……。

「はぁはぁはぁはぁはっ、はぁはぁ」

 吐き気は、収まったみたい。周囲に人は、いない。逃げることができた、みたい。でもどうせ、ついて来るやつがいる。隠れなきゃ。

 
 すぐ脇の貧相な木製の建物。その建物の下に木の箱がついている。

 丁度良い。俺は木の箱の中に潜り込んだ。
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