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story 1
Face
しおりを挟む友くんと話しながら、廊下を歩いているだけなのだが何故だか周りの視線が相変わらず一点に集中している。
気にしないではいたが、気になるかといえば気になってしまう。何故ならば、、、
「友くん。俺の顔になんかついてたりする?」
「ホクロくらいだと思うけど」
そう返す友くんに、そうではなくて、俺に突き刺さるような周りの視線は何かを問いたいんだってばっと思いながら少し落ち込む。
周りの視線は俺、一点に集中していた。理由なんか考えたくもない……そもそもが俺はそんな人様に注目される人間ではないからだ。
「俺、なんでこんなに見られてるの?」
流石に我慢がいかなかった俺は、友くんに直球だが聞いてしまった。
そんな質問を受けた友くんはふははっと笑う。そして、俺の肩を指でつついて、友くんの指示に従い。友くんから俺の右耳にひっそりと言葉を紡がれた。
その言葉にピクリと全身が強張り、自分の顔がひきつったのが分かる。
『茜が可愛いからだよ』
友くんの何気ない言葉に、何言ってるの?っと自分の顔面にぺたぺたと両手で探るように触っている様をみていた友くんは、笑い始めた。
「そういうとこだよっ!」
あーもう、可愛すぎるっと腹を抱えて笑っている友くんをよそに、俺が可愛いわけがないでしょっとワナワナと憤る自分は羞恥心からなのか、みるみる顔が熱くなるのが分かる。
「友くん!その、冗談きついから。可愛い子なら沢山いるし!? そもそも、俺可愛くないしっ!!!」
伯父さんのひと言を思い出してしまい。尚更、我慢ならないのだ。
「可愛いと思うけどなぁ」
聞き耳を持たない友くんに俺は、はいはいとなる自分もいたりする。
否定するのも正直疲れてきていた。
俺だって周りの声くらい聞こえていないわけではないのだ。誰だって、好みの顔があるように、俺にだって好みの顔がある。たまたまそれにカスっただけであり、ただそれだけの存在だとまとめれば納得すればいい話。
だけれど、俺は自分の顔が大嫌いである。だから尚更、否定的なのかもしれない。
「実際のところは、なんでだと思う?」
当然、友くんはからかっただけだろうと思って聞いてみると、友くんは悲しげに俺の顔を見た。
「注目されるのは嫌い?」
「うん」
「だったら、茜にとってはきついかもしれないけど大丈夫?」
心配そうに言う友くんに、俺は少し戸惑っていた。そこまで言われてしまうと流石に俺でも怖かった。
「一つずつ説明するね」
そう言って、友くんは歩きながらゆっくり俺にきめ細かに説明してくれた。
入学以前から、特待生が入ることが噂になっていたこと。その特待生が女子であること。容姿の諸々な情報まで流出していて、名前までもバレてしまっていたこと。
それを聞いた俺は目を丸めて個人情報保護法、個人情報保護法っと何回も頭の中で呟いていたと思う。
それに、突き刺さる周りの視線に羞恥心はピークに達していた。
もう……無理。
この話はやめにしよう。うん。そうしようと思い別の話題を提供しよう。
「友くんの好きなタイプは?」
友くんは、急な話題提供に戸惑いながら言葉を紡いだ。
「うーんと、可愛い……?いや、強いて言うなら、思いやりがある子かな」
めちゃくちゃ、悩んでいる友くんにかなり申し訳ない気持ちでいる。そんな俺に友くんが語りかける。
「茜は?」
「え、可愛い子」
友くんはポリポリと頬を掻きながら、そっちの方じゃなくてっと悩ましい顔をする。
「男の方何だけど……」
それを聞いた俺はそっちかーーーーーっと頭を抱えた。正直、男をそういう目線で見るつもりも無ければ、わざわざ顔を見る必要性もなかった。何故ならば見たら終わりだから。
でも、答えないのも悪いと恐る恐るある物を友くんの前に近づけた。
「強いて言えば、こんな顔の人」
それを見た友くんは、不思議そうに俺を見つめた。
「これって、その…恋愛ゲームのキャラクターだよね?」
俺が友くんに見せたのはとあるゲームの攻略キャラである。ゲーム機に映るその攻略キャラを見ながら友くんはへーっと声を漏らした。
「茜ってこういうゲームするんだね」
その言葉に違う違うと手をばたつかせた。
「男性恐怖症の克服の為に、友達から薦められてしたんだよ。でも、やっぱり厳しくて、やめようと思ったんだけど、このキャラだけ平気だったから、何となくこのキャラの顔が好みなのかな?って思っただけで……」
そして、恋愛の事など全く分からない俺が、このキャラを攻略するのにどれだけの時間を費やしたかなんて、誰も知らなくていい。
ふーんっと友くんが声を漏らす。
「茜って、綺麗な顔が好きなんだね。美形って感じの」
なるほど、美形かっと聞きながら自分でも感心している。
「このキャラ、何って名前? 何となく見覚えあるんだけど」
そんな友くんの問に、確か当時流行っていたから、見覚えあるのかもしれないなぁと俺は昔のことを思い出す。
「このキャラね。春くんって言うんだっ!」
素敵な名前だよねっと俺が言うと、友くんもいい名前だねっと言ってくれてとても嬉しく思った。
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