madder story

空野らん

文字の大きさ
上 下
12 / 13
story 1

Face

しおりを挟む

友くんと話しながら、廊下を歩いているだけなのだが何故だか周りの視線が相変わらず一点に集中している。
気にしないではいたが、気になるかといえば気になってしまう。何故ならば、、、


「友くん。俺の顔になんかついてたりする?」

「ホクロくらいだと思うけど」


そう返す友くんに、そうではなくて、俺に突き刺さるような周りの視線は何かを問いたいんだってばっと思いながら少し落ち込む。
周りの視線は俺、一点に集中していた。理由なんか考えたくもない……そもそもが俺はそんな人様に注目される人間ではないからだ。


「俺、なんでこんなに見られてるの?」

流石に我慢がいかなかった俺は、友くんに直球だが聞いてしまった。
そんな質問を受けた友くんはふははっと笑う。そして、俺の肩を指でつついて、友くんの指示に従い。友くんから俺の右耳にひっそりと言葉を紡がれた。

その言葉にピクリと全身が強張り、自分の顔がひきつったのが分かる。



『茜が可愛いからだよ』



友くんの何気ない言葉に、何言ってるの?っと自分の顔面にぺたぺたと両手で探るように触っている様をみていた友くんは、笑い始めた。


「そういうとこだよっ!」

あーもう、可愛すぎるっと腹を抱えて笑っている友くんをよそに、俺が可愛いわけがないでしょっとワナワナと憤る自分は羞恥心からなのか、みるみる顔が熱くなるのが分かる。


「友くん!その、冗談きついから。可愛い子なら沢山いるし!? そもそも、俺可愛くないしっ!!!」


伯父さんのひと言を思い出してしまい。尚更、我慢ならないのだ。


「可愛いと思うけどなぁ」

聞き耳を持たない友くんに俺は、はいはいとなる自分もいたりする。
否定するのも正直疲れてきていた。


俺だって周りの声くらい聞こえていないわけではないのだ。誰だって、好みの顔があるように、俺にだって好みの顔がある。たまたまそれにカスっただけであり、ただそれだけの存在だとまとめれば納得すればいい話。
だけれど、俺は自分の顔が大嫌いである。だから尚更、否定的なのかもしれない。


「実際のところは、なんでだと思う?」

当然、友くんはからかっただけだろうと思って聞いてみると、友くんは悲しげに俺の顔を見た。


「注目されるのは嫌い?」


「うん」



「だったら、茜にとってはきついかもしれないけど大丈夫?」


心配そうに言う友くんに、俺は少し戸惑っていた。そこまで言われてしまうと流石に俺でも怖かった。


「一つずつ説明するね」

そう言って、友くんは歩きながらゆっくり俺にきめ細かに説明してくれた。


入学以前から、特待生が入ることが噂になっていたこと。その特待生が女子であること。容姿の諸々な情報まで流出していて、名前までもバレてしまっていたこと。

それを聞いた俺は目を丸めて個人情報保護法、個人情報保護法っと何回も頭の中で呟いていたと思う。
それに、突き刺さる周りの視線に羞恥心はピークに達していた。


もう……無理。
この話はやめにしよう。うん。そうしようと思い別の話題を提供しよう。

「友くんの好きなタイプは?」

友くんは、急な話題提供に戸惑いながら言葉を紡いだ。


「うーんと、可愛い……?いや、強いて言うなら、思いやりがある子かな」

めちゃくちゃ、悩んでいる友くんにかなり申し訳ない気持ちでいる。そんな俺に友くんが語りかける。


「茜は?」

「え、可愛い子」


友くんはポリポリと頬を掻きながら、そっちの方じゃなくてっと悩ましい顔をする。

「男の方何だけど……」

それを聞いた俺はそっちかーーーーーっと頭を抱えた。正直、男をそういう目線で見るつもりも無ければ、わざわざ顔を見る必要性もなかった。何故ならば見たら終わりだから。
でも、答えないのも悪いと恐る恐るある物を友くんの前に近づけた。

「強いて言えば、こんな顔の人」

それを見た友くんは、不思議そうに俺を見つめた。

「これって、その…恋愛ゲームのキャラクターだよね?」

俺が友くんに見せたのはとあるゲームの攻略キャラである。ゲーム機に映るその攻略キャラを見ながら友くんはへーっと声を漏らした。

「茜ってこういうゲームするんだね」

その言葉に違う違うと手をばたつかせた。

「男性恐怖症の克服の為に、友達から薦められてしたんだよ。でも、やっぱり厳しくて、やめようと思ったんだけど、このキャラだけ平気だったから、何となくこのキャラの顔が好みなのかな?って思っただけで……」

そして、恋愛の事など全く分からない俺が、このキャラを攻略するのにどれだけの時間を費やしたかなんて、誰も知らなくていい。

ふーんっと友くんが声を漏らす。


「茜って、綺麗な顔が好きなんだね。美形って感じの」


なるほど、美形かっと聞きながら自分でも感心している。

「このキャラ、何って名前? 何となく見覚えあるんだけど」

そんな友くんの問に、確か当時流行っていたから、見覚えあるのかもしれないなぁと俺は昔のことを思い出す。


「このキャラね。はるくんって言うんだっ!」



素敵な名前だよねっと俺が言うと、友くんもいい名前だねっと言ってくれてとても嬉しく思った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...