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not a dream
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プルルルル…となる
受話器を持ち俺は廊下に立っていた。
相手が電話に出たのを確認し丁寧に言葉を紡いだ。
「お世話になっております。私、服部 茜と申します」
俺には、迷いがなかった。迷いがあったとするならば、その後のことだ。
「はいそうです。例の件、喜んでお受けしたいです」
俺の退学が、決まったのは半年前だ。
名門の女学院に通っていた俺は、経済的に厳しい状態が続いていた。
学費を稼ぐためには自らが働くしか他なかった。
その為、俺は校則を無視しバイトをしていた。もちろん、友達にも学校にもばれない様に注意をしていたのだ。
だがある日の事だった。
「あれ? あれって茜様じゃね?」
そう言葉を発したのは、とある男子だった。
いやまさかとその男子の周りにいた男子も、俺の周囲に集まってきたのだ。
人違いだと、言葉を発そうにも口が震えて声が出なかった。
その反応を見た男子たちは確信した。俺が服部茜だということに。
その後の事はよく覚えてはいないが、その男子たちは隣の男子校の生徒だったらしく、それはたちまちSNSに拡散された。
そのせいで、学校にも友達にも俺がバイトをしているのがばれてしまい。
バイトを辞める羽目になった俺は授業料未払いで、退学することになった。
そして、俺の恥ずべきメイド姿も永遠に消えてくれないままだった。
退学した後は、家の近辺にあるファミレスでバイトをしていた。
青春とはあっけないものだった。これで、可愛い女子も拝むことも敬拝することもできない。
溜息を吐いていると誰かが話しかけてきた。
「溜息ついてると、幸せ逃げるぞー」
そう言う彼は、神田 雄大。俺のバイト仲間である。
「可愛い女子を眺められないんだから、幸せという幸せもないよ」
それを聞くとふんふんと感心している様だ。
「ま、一理あるな」
神田くんと他愛もない会話を交わしていると、
店長が慌てた様子で、俺たちに駆け寄ってきた。
「服部さん。学校から電話が来てる」
そう聞いた俺は、
何だろう何か忘れ物でもしたのか考えながら、電話に出る。
「はい。お電話変わりました。服部です」
そう言うと聞きなれた声がしてきた。
『服部。久しぶり、吉住です』
電話の相手は、中等部の時に担任をしてくれた先生だった。
何故、高等部ではなく中等部から電話なのだろう。
『服部。高校に行きたいか?』
まさかの単語に驚いて言葉が出ない。高校…、勿論行きたいに決まっている。だが、俺の体質では色々と厳しいものがあって諦めかけていた。先生は勿論それを知っている。
だから尚更、こんな電話が来るのは可笑しいのだ。
『秘密にしていたんだが、高等部にあがる前。是非、服部をという高校があったんだが校長が断ったらしくてな。服部が退学した話がその高校まで情報が入ったみたいなんだ』
んっ?意味が分からないぞ、それってつまりどういう事だ。
『その高校が是非うちに来てほしいと話が来た』
有難い話なんだが喜んでいいのか、分からなくて黙っている。
『服部も聞いたことがあるだろう。私立戌野岡学園、数有数の進学校だ。是非、特待生として入ってもらいたいって言ってたらしい。理事長、直々にだ』
勿論、聞いたことがありますとも。戌野岡というとあの戌野岡である。俺は、何かの夢ではないのかと自分の頬をつねろうとする。
『服部。頬はつねるなよ』
電話もとでそんな声が入ったが意味はなかった。
ごめんなさい先生。もう遅いです。
俺はすでに、自分の頬をつねっていたのだった。
受話器を持ち俺は廊下に立っていた。
相手が電話に出たのを確認し丁寧に言葉を紡いだ。
「お世話になっております。私、服部 茜と申します」
俺には、迷いがなかった。迷いがあったとするならば、その後のことだ。
「はいそうです。例の件、喜んでお受けしたいです」
俺の退学が、決まったのは半年前だ。
名門の女学院に通っていた俺は、経済的に厳しい状態が続いていた。
学費を稼ぐためには自らが働くしか他なかった。
その為、俺は校則を無視しバイトをしていた。もちろん、友達にも学校にもばれない様に注意をしていたのだ。
だがある日の事だった。
「あれ? あれって茜様じゃね?」
そう言葉を発したのは、とある男子だった。
いやまさかとその男子の周りにいた男子も、俺の周囲に集まってきたのだ。
人違いだと、言葉を発そうにも口が震えて声が出なかった。
その反応を見た男子たちは確信した。俺が服部茜だということに。
その後の事はよく覚えてはいないが、その男子たちは隣の男子校の生徒だったらしく、それはたちまちSNSに拡散された。
そのせいで、学校にも友達にも俺がバイトをしているのがばれてしまい。
バイトを辞める羽目になった俺は授業料未払いで、退学することになった。
そして、俺の恥ずべきメイド姿も永遠に消えてくれないままだった。
退学した後は、家の近辺にあるファミレスでバイトをしていた。
青春とはあっけないものだった。これで、可愛い女子も拝むことも敬拝することもできない。
溜息を吐いていると誰かが話しかけてきた。
「溜息ついてると、幸せ逃げるぞー」
そう言う彼は、神田 雄大。俺のバイト仲間である。
「可愛い女子を眺められないんだから、幸せという幸せもないよ」
それを聞くとふんふんと感心している様だ。
「ま、一理あるな」
神田くんと他愛もない会話を交わしていると、
店長が慌てた様子で、俺たちに駆け寄ってきた。
「服部さん。学校から電話が来てる」
そう聞いた俺は、
何だろう何か忘れ物でもしたのか考えながら、電話に出る。
「はい。お電話変わりました。服部です」
そう言うと聞きなれた声がしてきた。
『服部。久しぶり、吉住です』
電話の相手は、中等部の時に担任をしてくれた先生だった。
何故、高等部ではなく中等部から電話なのだろう。
『服部。高校に行きたいか?』
まさかの単語に驚いて言葉が出ない。高校…、勿論行きたいに決まっている。だが、俺の体質では色々と厳しいものがあって諦めかけていた。先生は勿論それを知っている。
だから尚更、こんな電話が来るのは可笑しいのだ。
『秘密にしていたんだが、高等部にあがる前。是非、服部をという高校があったんだが校長が断ったらしくてな。服部が退学した話がその高校まで情報が入ったみたいなんだ』
んっ?意味が分からないぞ、それってつまりどういう事だ。
『その高校が是非うちに来てほしいと話が来た』
有難い話なんだが喜んでいいのか、分からなくて黙っている。
『服部も聞いたことがあるだろう。私立戌野岡学園、数有数の進学校だ。是非、特待生として入ってもらいたいって言ってたらしい。理事長、直々にだ』
勿論、聞いたことがありますとも。戌野岡というとあの戌野岡である。俺は、何かの夢ではないのかと自分の頬をつねろうとする。
『服部。頬はつねるなよ』
電話もとでそんな声が入ったが意味はなかった。
ごめんなさい先生。もう遅いです。
俺はすでに、自分の頬をつねっていたのだった。
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