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2章 幻獣使いを目指して
目指せ幻獣使い
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確かに、俺がそう言った。それは間違いない。
リーヤは、凶相をさらに険しくしかめて突っ伏した。
「師匠が……あのぽんやり師匠が鬼になっちまった……」
伏せた顔をこてんと傾けると、傍らに摘まれた分厚い書物の山が目に入る。これ全部読めだなんて、できっこない。
だけど、あの時はこれしかないって思ったんだ。
『師匠』の側にいて当たり前の人間になるには。
幻獣使いは、そうそうお目にかかれるものではない。ましてやその上位であるドラゴンブリーダーなど、数えるほどしかいない。だから、幻獣使いになるにはレリィスの元で学ぶのが最適解だ。それに……。
「そうすれば、『師匠』呼びだって様になるもんな。良い考えだと思ったのに……」
そして、いつか師匠と並び立つようになれば……なれば。
「レリィス、って呼んでやるんだからな!」
息巻いたものの、そもそもレリィスはドラゴンブリーダー。さすがに格が違う。幻獣使いとドラゴンブリーダーでは、ミニトカゲとドラゴンくらい違う。
だからって、ドラゴンブリーダーになりたいなんて言わなかったはずだと、リーヤは眉間に皺を寄せた。
なのに、なぜこんなことに。
「幻獣使いなら、幻獣のお世話ができればなんとかなるだろ?! なんっでこんなに毎日勉強勉強勉強!! いや、講義の方は助かってんだぜ? だけどこっちがなぁ……。俺、初心者なんだから、もっと薄い本とかさぁ、実践を通してとかさぁ、色々方法はあるわけじゃん?」
お前もそう思うだろ? と水を向けられた小さなドラゴンは、フスッと鼻息で答えて瞳を閉じた。まるで関心のないドラゴン――スピーの様子に、リーヤは渋々と顔を上げて書物を手に取ってみる。
完全なる鈍器の様相を示す重さと分厚さに、自然と眉間にしわが寄る。スッと元の場所へ戻そうとした手がピタリと止まった。
「……いや、それでも俺がやるって言ったんだからな! 幻獣使いになってやるんだからな!」
きりりと眉を引き上げ、リーヤはバチバチと両頬を叩いた。ただし、あくまで幻獣使いだ!
短い髪を撫でつけるようにさすり上げると、背筋を伸ばして豪奢な表紙をめくった。
「…………」
真剣そのもののグレーの瞳が、ぎっしりと文字の詰まったページを滑っていく。
ぱらりと響いた紙の音に、瞳を閉じていたスピーが、チラリとリーヤを覗った。ようやく始めたか、などと言いたげな顔で、再びフスッと鼻息を盛らす。
シンとした室内には、スピーの寝息と本をなぞる指の音が断続的に聞こえていた。
と、ものの数ページでその手が止まる。
「ぐ……やっぱ分かんねえ! 分かんねえよ師匠ぉ~! 頼むからもうちょい簡単なモノから……」
リーヤに分かるのは、きっとこれは共通語で書いてあるのだろうということくらいだ。
「共通語のはずなのに……読めねえよ!! 骨格系分類ってなんだ! ドラゴン亜目ってなんだ!!」
これはダメだ、エネルギー消費が高すぎる。燃費の悪い腹がぐう、と音をたて、さらに気力を奪われた気がした。
「……飯食った後ならできるかも。そうだ、今はやるべき時じゃねえ」
リーヤはそう結論づけて本を閉じると、勢いよく立ち上がった。
まずは昼飯、と階下へ下りたものの、家主の姿が見当たらない。
「あれ? 師匠は?」
洗濯物を干しに行って、それで――それで?
窓の外へ目をやれば、はためいているはずの洗濯物が見当たらない。
リーヤのキツイ瞳がぎりりとつり上がった。
「さあ、着いたよ。ここは安全だからね」
レリィスは懐に抱いた布の塊に微笑むと、庭を横ぎって扉へ手を掛ける。
ちょうど頬を撫でた風に、干されたシーツがばさりと翻った。思いの外大きな音に、驚いたらしい布の塊が身を震わせる。
「心配いらないよ、洗濯物だか……あれ?」
そう言えば、どうして干されているんだろうか。確か、ほっぽり出してきたような。
「……師匠?」
地を這うような低い声に、今度はレリィスがビクリと身を震わせた。
「洗濯物を、干しに、行ったんすよね……?」
そろりと振り返ったそこには、果たして黒いオーラをまとったリーヤが仁王立ちしていた。
「あ、あはは。そうなんだけどね、ちょっと緊急だったものだから……」
ばつの悪そうな顔をして、レリィスは免罪符のように布の塊を差し出してみせる。
「なんすか、それ。師匠、また何か拾ってきたっすか?」
言いつつのぞき込んだリーヤが、キョトンと首を傾げた。
レリィスがどこからともなく拾ってくるのは、基本的に竜種。あとは他の人が手に負えないであろう、珍しかったり強力な幻獣だ。なのに、それはどう見ても――。
「鳥?? 昼飯っすか?」
生き餌にしては食いでがなさすぎるので、ドラゴン用ではないだろう。貧弱なので、せいぜいスープのだしにしか使えないと思うが、草しか入ってないスープに比べれば上等だ。
さあ、と受け取ろうとしたリーヤに、レリィスは慌てて手を引っ込めた。
「た、食べるためじゃないから!」
「え? そうなんすか。でもそれ、普通の鳥っすよね?」
残念そうなリーヤの視線を遮るように背を向けると、レリィスは足早に室内へ向かった。
「普通の鳥、ではないかな。ひとまずこの子には治療がいるから、リーヤもおいで!」
かけられた言葉に、リーヤは思わずにんまりとする。
「やった! 実践すか!」
治療がいると言うからには弱っているのだろう。不謹慎だと思いつつ、分厚い本を読むよりずっといい。リーヤは足取りも軽く後を追った。
温かくした室内で、レリィスはそっと布の塊を解いた。
柔らかな布にくるまれてうずくまっているのは、どう見ても鳥の雛。リーヤが気付いたことと言えば、雛の割に大きいというくらいか。
ちょうどふわふわの羽毛が生えそろい、巣立ちにはまだかかるといった頃合いだろう。子どもの手の平くらいの大きさで、茶色っぽい地味な色合いをしている。
「それ、俺には鳥に見えるっすけど?」
リーヤは手際よく厚い革袋に湯を入れ、タオルにくるんで渡した。同様にいくつかこしらえて木箱へ詰めておく。
例外を除き、まずは保温と習ったはず。以前からレリィスを手伝っているだけあって、この辺りの手際は見事なものだ。
礼を言って即席の湯たんぽを受け取ると、レリィスはその上に小鳥(?)を載せた。さらに両手を重ねると、ほわりと暖かな光が漏れる。
「師匠、俺まだ魔法使えないんすけど」
言外に教えてくれと滲む台詞に、レリィスは苦笑した。
「うーん。いずれ、ね? だけどこれは他の人には難しいかも」
そうだろうな、とリーヤは思う。いくらリーヤでも、レリィスの魔法が独特なことくらい気付いている。
師匠7不思議のうちの1つだ。
「俺が教えてほしいのはフツーの魔法っす。俺はフツーの『幻獣使い』でいいんで」
肩をすくめたリーヤに、レリィスは琥珀の瞳を瞬いた。
まずは基本の魔法を習得し、幻獣使いを極めた上でドラゴンブリーダーに臨む。不良少年みたいな見た目に似合わず、堅実で殊勝な態度だと、レリィスは感心して微笑んだ。
「リーヤはえらいね。うん、まずはそこから始めなきゃね」
「……あの、師匠? 俺の言葉、ストレートに受け取ってほしいんすけど?!」
慌てるリーヤにしいっと人差し指を唇に当ててみせ、レリィスはもう一方の手も除けた。
「うん、あとは体力の回復と栄養を摂れば大丈夫」
震えてうずくまっていた貧弱な雛は、安堵したように眠っている。
「で、師匠、これは何すか? なんで鳥じゃないんすか?」
起こさないようにと小さくなった声に微笑み、レリィスは雛を指さした。
「顔をよくご覧? くちばしがあるかい?」
「え?」
なに言ってんだと雛を凝視したリーヤは、眉間にシワを寄せた。
「くちばし、じゃ……ない?」
疑いもなくくちばしだと思っていたそれは、鳥の硬質なそれとは趣の異なるもので……割と見覚えのあるものだった。
「きゅい!」
ぱたぱたと飛んで来たスピーに目をやり、あっと雛へ視線を走らせる。
「もしかして、これもドラゴン?」
レリィスは嬉しげに笑って、正解、と告げた。
リーヤは、凶相をさらに険しくしかめて突っ伏した。
「師匠が……あのぽんやり師匠が鬼になっちまった……」
伏せた顔をこてんと傾けると、傍らに摘まれた分厚い書物の山が目に入る。これ全部読めだなんて、できっこない。
だけど、あの時はこれしかないって思ったんだ。
『師匠』の側にいて当たり前の人間になるには。
幻獣使いは、そうそうお目にかかれるものではない。ましてやその上位であるドラゴンブリーダーなど、数えるほどしかいない。だから、幻獣使いになるにはレリィスの元で学ぶのが最適解だ。それに……。
「そうすれば、『師匠』呼びだって様になるもんな。良い考えだと思ったのに……」
そして、いつか師匠と並び立つようになれば……なれば。
「レリィス、って呼んでやるんだからな!」
息巻いたものの、そもそもレリィスはドラゴンブリーダー。さすがに格が違う。幻獣使いとドラゴンブリーダーでは、ミニトカゲとドラゴンくらい違う。
だからって、ドラゴンブリーダーになりたいなんて言わなかったはずだと、リーヤは眉間に皺を寄せた。
なのに、なぜこんなことに。
「幻獣使いなら、幻獣のお世話ができればなんとかなるだろ?! なんっでこんなに毎日勉強勉強勉強!! いや、講義の方は助かってんだぜ? だけどこっちがなぁ……。俺、初心者なんだから、もっと薄い本とかさぁ、実践を通してとかさぁ、色々方法はあるわけじゃん?」
お前もそう思うだろ? と水を向けられた小さなドラゴンは、フスッと鼻息で答えて瞳を閉じた。まるで関心のないドラゴン――スピーの様子に、リーヤは渋々と顔を上げて書物を手に取ってみる。
完全なる鈍器の様相を示す重さと分厚さに、自然と眉間にしわが寄る。スッと元の場所へ戻そうとした手がピタリと止まった。
「……いや、それでも俺がやるって言ったんだからな! 幻獣使いになってやるんだからな!」
きりりと眉を引き上げ、リーヤはバチバチと両頬を叩いた。ただし、あくまで幻獣使いだ!
短い髪を撫でつけるようにさすり上げると、背筋を伸ばして豪奢な表紙をめくった。
「…………」
真剣そのもののグレーの瞳が、ぎっしりと文字の詰まったページを滑っていく。
ぱらりと響いた紙の音に、瞳を閉じていたスピーが、チラリとリーヤを覗った。ようやく始めたか、などと言いたげな顔で、再びフスッと鼻息を盛らす。
シンとした室内には、スピーの寝息と本をなぞる指の音が断続的に聞こえていた。
と、ものの数ページでその手が止まる。
「ぐ……やっぱ分かんねえ! 分かんねえよ師匠ぉ~! 頼むからもうちょい簡単なモノから……」
リーヤに分かるのは、きっとこれは共通語で書いてあるのだろうということくらいだ。
「共通語のはずなのに……読めねえよ!! 骨格系分類ってなんだ! ドラゴン亜目ってなんだ!!」
これはダメだ、エネルギー消費が高すぎる。燃費の悪い腹がぐう、と音をたて、さらに気力を奪われた気がした。
「……飯食った後ならできるかも。そうだ、今はやるべき時じゃねえ」
リーヤはそう結論づけて本を閉じると、勢いよく立ち上がった。
まずは昼飯、と階下へ下りたものの、家主の姿が見当たらない。
「あれ? 師匠は?」
洗濯物を干しに行って、それで――それで?
窓の外へ目をやれば、はためいているはずの洗濯物が見当たらない。
リーヤのキツイ瞳がぎりりとつり上がった。
「さあ、着いたよ。ここは安全だからね」
レリィスは懐に抱いた布の塊に微笑むと、庭を横ぎって扉へ手を掛ける。
ちょうど頬を撫でた風に、干されたシーツがばさりと翻った。思いの外大きな音に、驚いたらしい布の塊が身を震わせる。
「心配いらないよ、洗濯物だか……あれ?」
そう言えば、どうして干されているんだろうか。確か、ほっぽり出してきたような。
「……師匠?」
地を這うような低い声に、今度はレリィスがビクリと身を震わせた。
「洗濯物を、干しに、行ったんすよね……?」
そろりと振り返ったそこには、果たして黒いオーラをまとったリーヤが仁王立ちしていた。
「あ、あはは。そうなんだけどね、ちょっと緊急だったものだから……」
ばつの悪そうな顔をして、レリィスは免罪符のように布の塊を差し出してみせる。
「なんすか、それ。師匠、また何か拾ってきたっすか?」
言いつつのぞき込んだリーヤが、キョトンと首を傾げた。
レリィスがどこからともなく拾ってくるのは、基本的に竜種。あとは他の人が手に負えないであろう、珍しかったり強力な幻獣だ。なのに、それはどう見ても――。
「鳥?? 昼飯っすか?」
生き餌にしては食いでがなさすぎるので、ドラゴン用ではないだろう。貧弱なので、せいぜいスープのだしにしか使えないと思うが、草しか入ってないスープに比べれば上等だ。
さあ、と受け取ろうとしたリーヤに、レリィスは慌てて手を引っ込めた。
「た、食べるためじゃないから!」
「え? そうなんすか。でもそれ、普通の鳥っすよね?」
残念そうなリーヤの視線を遮るように背を向けると、レリィスは足早に室内へ向かった。
「普通の鳥、ではないかな。ひとまずこの子には治療がいるから、リーヤもおいで!」
かけられた言葉に、リーヤは思わずにんまりとする。
「やった! 実践すか!」
治療がいると言うからには弱っているのだろう。不謹慎だと思いつつ、分厚い本を読むよりずっといい。リーヤは足取りも軽く後を追った。
温かくした室内で、レリィスはそっと布の塊を解いた。
柔らかな布にくるまれてうずくまっているのは、どう見ても鳥の雛。リーヤが気付いたことと言えば、雛の割に大きいというくらいか。
ちょうどふわふわの羽毛が生えそろい、巣立ちにはまだかかるといった頃合いだろう。子どもの手の平くらいの大きさで、茶色っぽい地味な色合いをしている。
「それ、俺には鳥に見えるっすけど?」
リーヤは手際よく厚い革袋に湯を入れ、タオルにくるんで渡した。同様にいくつかこしらえて木箱へ詰めておく。
例外を除き、まずは保温と習ったはず。以前からレリィスを手伝っているだけあって、この辺りの手際は見事なものだ。
礼を言って即席の湯たんぽを受け取ると、レリィスはその上に小鳥(?)を載せた。さらに両手を重ねると、ほわりと暖かな光が漏れる。
「師匠、俺まだ魔法使えないんすけど」
言外に教えてくれと滲む台詞に、レリィスは苦笑した。
「うーん。いずれ、ね? だけどこれは他の人には難しいかも」
そうだろうな、とリーヤは思う。いくらリーヤでも、レリィスの魔法が独特なことくらい気付いている。
師匠7不思議のうちの1つだ。
「俺が教えてほしいのはフツーの魔法っす。俺はフツーの『幻獣使い』でいいんで」
肩をすくめたリーヤに、レリィスは琥珀の瞳を瞬いた。
まずは基本の魔法を習得し、幻獣使いを極めた上でドラゴンブリーダーに臨む。不良少年みたいな見た目に似合わず、堅実で殊勝な態度だと、レリィスは感心して微笑んだ。
「リーヤはえらいね。うん、まずはそこから始めなきゃね」
「……あの、師匠? 俺の言葉、ストレートに受け取ってほしいんすけど?!」
慌てるリーヤにしいっと人差し指を唇に当ててみせ、レリィスはもう一方の手も除けた。
「うん、あとは体力の回復と栄養を摂れば大丈夫」
震えてうずくまっていた貧弱な雛は、安堵したように眠っている。
「で、師匠、これは何すか? なんで鳥じゃないんすか?」
起こさないようにと小さくなった声に微笑み、レリィスは雛を指さした。
「顔をよくご覧? くちばしがあるかい?」
「え?」
なに言ってんだと雛を凝視したリーヤは、眉間にシワを寄せた。
「くちばし、じゃ……ない?」
疑いもなくくちばしだと思っていたそれは、鳥の硬質なそれとは趣の異なるもので……割と見覚えのあるものだった。
「きゅい!」
ぱたぱたと飛んで来たスピーに目をやり、あっと雛へ視線を走らせる。
「もしかして、これもドラゴン?」
レリィスは嬉しげに笑って、正解、と告げた。
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