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1章 幻獣店のふたり
竜を選ぶ
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「せっかく貯めた金なんだろ?あたしゃ他のことに使った方がいいと思うけどねぇ」
「いいんだよ!だって俺はこのために貯めたんだから!」
「そうかい……ま、あんたの金だ、好きにするといいさ」
痩せっぽっちの少年は、数枚の銀貨を握りしめて店を飛び出した。
そうとも、このために貯めてきたんだ。後悔なんて、するもんか。
そう、たとえ屋台から香ばしくたまらない香りが漂ってこようとも……。
「うっ……。美味そう……」
空きっ腹には危険な香りが少年を捕まえて、足を止めさせた。
「今日なら……」
普段なら目をそらして通り過ぎる屋台も、今日だけは足を止めることが出来る。この手の中の銀貨があれば、十分に腹一杯食うことができる。
これ見よがしに炙られるかたまり肉は、ぽたり、ぽたりと透明な肉汁がしたたり、じゅう、と音をたてた。
口内に溢れた唾液をごくりと飲み込んで、少年はぎゅっと目を閉じると首を振った。
これも含めて試練なのかもしれない!負けるわけにはいかないのだ。
切なく引き絞られる腹をかかえて、少年はとぼとぼと路地裏を歩いた。
「掘り出しもんだよー!」
「さあさあ、珍しいのあるよ!寄ってきな!」
今日は露店市の日、掘り出し物からがらくたまで、目利きの腕が試される雑多な店が所狭しと並んでいた。少年はきょろきょろと視線をさまよわせながら人波をくぐり抜ける。
確か、この辺りに出店していたはずなんだ。今朝通りすがりに発見したその店に、どきりと胸が高鳴ったのを覚えている。
「あ!」
はたして、少年は露店と露店の間に埋もれるように、ごく小さくテントを張っている店を発見した。テントの中には様々な箱と、檻が積まれ、喧噪に紛れて怪しげな鳴き声が響いている。
「お、らっしゃい!何かご入り用で?」
退屈そうに頬杖をついていた店員が、パッと顔を上げてもみ手をした。
「えっと、その、竜を……」
しかし、薄ら笑いを浮かべていた店員は、聞くなり表情を一変させて、じろりと少年を眺めた。
「どう見てもいいとこのぼっちゃんじゃねえな。竜ってなぁお前の小遣いで買えるもんじゃねえっての、冷やかしなら帰んな」
無造作に振られた手に、少年は必死に言いすがった。
「分かってる!孵卵器のでいいんだ!ちゃんと育ててみせる!」
「はあ?孵卵器のって……ま、買うなら客だ。金はあるんだろうな?銀貨5枚で1匹だ」
訝しげにした男は、言葉を飲み込んで店頭の一画を指した。そこには大きな半透明の箱が置かれ、中には手のひら大のものがいくつか蠢いていた。
少年はどきどきと高鳴る胸を押さえて覗き込む。
竜を選ぶんだ……きっと、立派に育ててみせる。それで、俺は竜騎士になるんだ。
「あれ、君料理人なの?」
フッと陰った手元に振り返ると、背の高い青年が背後から見つめていた。店員が余計なことを、と言わんばかりの目で睨み付けている。
「違うよ!これを育てるんだ。……大丈夫、俺、ちゃんと食用トカゲって知ってる」
「おや、そうなんだ。じゃあどうしてこの子を育てたいの?」
少年は、ちらりと店員に目をやって、青年に耳打ちした。
「俺、聞いたことあるんだ。食用トカゲも、きちんと育てれば竜になるって」
「へえ……。いいことを教えてくれた君に、ぼくもいいことを教えようか」
少年は、小首を傾げると、こくりと頷いて青年を見上げた。人の良さそうな笑顔に、どこかで会ったことがあるような気がするのは、気のせいだろうか。
ぐっと腰をかがめた青年が、少年の耳に唇を寄せた。サラリと流れた細い髪が、少年の頬にかかってくすぐったい。
「ぼくはね、ドラゴンブリーダー。幻獣や竜の専門家だよ。君がきちんと育てるなら、目利きをしようか。」
少年は目をまんまるにして青年を見上げた。
「で、でも俺、銀貨5枚しか持ってない……!!」
「それで足りるだろう?ああ、ぼくへの心配をしてくれたの?いいよ、この子たちの中で1匹でも助けてくれるなら」
青年はふんわりと微笑むと、少年の頭を撫でた。
「君なら、どの子を選ぶ?」
孵卵器の中では、既に孵ったヒナたちがもぞもぞと頼りなく動いていた。
鳥ともトカゲともつかない姿は、食用トカゲと呼ばれる。竜の肉は高級品で、そうそう手に入ることがないために、それより安価で入手するための竜モドキ。元々は竜であったとされるが、長く食用として飼育されるうちに、トカゲに成り下がった哀れな種。
弱々しく呼吸するだけのヒナを、少年は真剣に見つめた。
「俺、この子がいい……と思う。でも、そっちも……いや、こっちの方がいいのかな……」
自信なくさまよう視線に、青年は最初に選んだトカゲをそっと手に乗せた。
「君はいい子を選んでるよ。ほら、見てごらん。他のと比べて肩の部分が目立つでしょう?この子はきっと、翼が生えるよ」
食用トカゲには、退化した翼が生える個体もいる。青年は目を輝かせた少年の手に、そっとヒナを乗せると、大きな手で包み込んで目を閉じた。
「いい主人が見つかって良かったね。幸せにおなり」
祈るような動作に、ふわ、と一瞬トカゲが熱をもったような気がした。
大切にね、と念を押すと、ぽん、と少年の頭に手を置いて、青年は店の外へ歩み去ってしまう。
「あっ……」
どこの誰と聞く間もなく視界から消えてしまった青年に、少し肩を落として手の中のぬくもりを見つめた。
「よろしく、俺の竜。ちゃんと大きく育てるからな。俺が有名になったら、きっとあの人も気付いてくれるよな」
少年は、自力で生きることも叶わない小さな命に向かって、大きく笑った。
「師匠……目利き料くらいとって欲しいんすけど」
上機嫌で店から出た青年に、どうやら外で待っていたらしい人物が、じっとりとした視線を寄越した。
「えっ?!リーヤはあんな小さな子からも取るの?!」
師匠と呼ばれた青年は、驚いてその不服そうな顔を見つめた。さっきの少年より少し上程度の、少年と言える年頃だろう。彼はどこか大人びた顔で、師匠の困った顔に指をつきつけた。
「当たり前でしょ!師匠はそういうお仕事なんだから!じゃなければ師匠もここに店を構えて客取って下さいよ!」
「ええ~でもぼく、人相手は苦手なんだもの……リーヤがお店に立ってくれるなら……」
リーヤはつり上がった目をさらにきつくして、師匠の胸ぐらを掴んで引き寄せた。引き寄せられるままにかがんだ青年が、瞳をぱちくりとさせる。
「この顔で!店頭に立ってるだけで!いいっすから!俺が前に出ると客が逃げるんすよ!!」
ぎゅう!と腹立ち紛れに頬をひっぱると、整った顔が歪んで、リーヤは少し溜飲が下がった気がした。
「とにかく!師匠が働かないので今月残り数日、食事は草のスープしかねーっす!」
「えっ?!みんなの食事は?!」
「それは別に1月分とってあるんで……」
それは良かったと、頬をさすりながら胸をなで下ろした青年に、リーヤは怒りの視線を向けた。
「……師匠、俺このままだと飢えてあいつらの飯食いますよ?」
なんなら草スープでも1ヶ月過ごせそうな師匠に、あんたは良くても俺が良くねえよと詰め寄りたくなる。何で幻獣たちに肉をやって俺たちは草スープなんだ。
「そ、それは困ったねえ。じゃあ、獲りに行こうよ」
「えーー……あくまで働かない気っすか」
「……冒険者稼業は、働いてるって言わない?」
そこらの草を摘んでくる感覚で魔物を狩ってくるのは、どうも働いてると認めたくないリーヤだった。それに、それだと肉は手に入っても金がない。このぽんやり師匠は魔物を選んで狩ってくるなんてできないから、そうなると必然的に……。
「だから、リーヤも一緒に来てね」
「あああ……やっぱり」
リーヤは頭を抱えた。こうなるのが嫌だから普通に金を稼いでくれと言ってるのに……。
「リーヤも、自分で竜を育ててみたら?相棒になる子、探そうか」
「お断りっす。俺は自分と師匠の面倒で手一杯っす」
そっか、うちの子たちの面倒もみてくれてるもんねえ、なんて笑う師匠に、蹴りのひとつも入れたい気分で見上げると、穏やかな視線は、先ほどの店を向いていた。
「……見えたんすね」
「そうだねえ。ちゃんと、辿ってきたんだね」
たまたま運命の繋がりが見えたからって、おせっかいする必要はないだろうと、リーヤは思う。
「ぼくを覚えてはいなかったけど、ぼくの言葉は覚えていたんだね。彼は将来立派な竜騎士になるよ」
「師匠、あのぼうやが買ったの食用でしょ?飛べないっすよ」
「飛べるよ。ちゃんと育てられたら」
リーヤはじろりと師匠を見やった。
「……なんかしたっすね」
「………」
リーヤはこっそりとため息をついて、謎の多い青年を見上げた。
「……レリィス・ユーキリアス」
「……はい」
「……俺、今夜は肉が食いたいな~。がつっと分厚く切った肉を炭火で焼いて」
しゅんとしていたレリィスは、安堵した顔でにっこりと笑った。
「わかった!ふむ……でっかいやつね……マウントゴーレムがあっちの山にいたような……」
この師匠、まじ使えねえ。
リーヤはぶつぶつと呟かれた台詞にがっくりと肩を落とした。肉っつったろ!ゴーレムは食えねえよ!!
どうしても俺が一緒に行くしかないらしいと、彼はもう一度深いため息をついたのだった。
「いいんだよ!だって俺はこのために貯めたんだから!」
「そうかい……ま、あんたの金だ、好きにするといいさ」
痩せっぽっちの少年は、数枚の銀貨を握りしめて店を飛び出した。
そうとも、このために貯めてきたんだ。後悔なんて、するもんか。
そう、たとえ屋台から香ばしくたまらない香りが漂ってこようとも……。
「うっ……。美味そう……」
空きっ腹には危険な香りが少年を捕まえて、足を止めさせた。
「今日なら……」
普段なら目をそらして通り過ぎる屋台も、今日だけは足を止めることが出来る。この手の中の銀貨があれば、十分に腹一杯食うことができる。
これ見よがしに炙られるかたまり肉は、ぽたり、ぽたりと透明な肉汁がしたたり、じゅう、と音をたてた。
口内に溢れた唾液をごくりと飲み込んで、少年はぎゅっと目を閉じると首を振った。
これも含めて試練なのかもしれない!負けるわけにはいかないのだ。
切なく引き絞られる腹をかかえて、少年はとぼとぼと路地裏を歩いた。
「掘り出しもんだよー!」
「さあさあ、珍しいのあるよ!寄ってきな!」
今日は露店市の日、掘り出し物からがらくたまで、目利きの腕が試される雑多な店が所狭しと並んでいた。少年はきょろきょろと視線をさまよわせながら人波をくぐり抜ける。
確か、この辺りに出店していたはずなんだ。今朝通りすがりに発見したその店に、どきりと胸が高鳴ったのを覚えている。
「あ!」
はたして、少年は露店と露店の間に埋もれるように、ごく小さくテントを張っている店を発見した。テントの中には様々な箱と、檻が積まれ、喧噪に紛れて怪しげな鳴き声が響いている。
「お、らっしゃい!何かご入り用で?」
退屈そうに頬杖をついていた店員が、パッと顔を上げてもみ手をした。
「えっと、その、竜を……」
しかし、薄ら笑いを浮かべていた店員は、聞くなり表情を一変させて、じろりと少年を眺めた。
「どう見てもいいとこのぼっちゃんじゃねえな。竜ってなぁお前の小遣いで買えるもんじゃねえっての、冷やかしなら帰んな」
無造作に振られた手に、少年は必死に言いすがった。
「分かってる!孵卵器のでいいんだ!ちゃんと育ててみせる!」
「はあ?孵卵器のって……ま、買うなら客だ。金はあるんだろうな?銀貨5枚で1匹だ」
訝しげにした男は、言葉を飲み込んで店頭の一画を指した。そこには大きな半透明の箱が置かれ、中には手のひら大のものがいくつか蠢いていた。
少年はどきどきと高鳴る胸を押さえて覗き込む。
竜を選ぶんだ……きっと、立派に育ててみせる。それで、俺は竜騎士になるんだ。
「あれ、君料理人なの?」
フッと陰った手元に振り返ると、背の高い青年が背後から見つめていた。店員が余計なことを、と言わんばかりの目で睨み付けている。
「違うよ!これを育てるんだ。……大丈夫、俺、ちゃんと食用トカゲって知ってる」
「おや、そうなんだ。じゃあどうしてこの子を育てたいの?」
少年は、ちらりと店員に目をやって、青年に耳打ちした。
「俺、聞いたことあるんだ。食用トカゲも、きちんと育てれば竜になるって」
「へえ……。いいことを教えてくれた君に、ぼくもいいことを教えようか」
少年は、小首を傾げると、こくりと頷いて青年を見上げた。人の良さそうな笑顔に、どこかで会ったことがあるような気がするのは、気のせいだろうか。
ぐっと腰をかがめた青年が、少年の耳に唇を寄せた。サラリと流れた細い髪が、少年の頬にかかってくすぐったい。
「ぼくはね、ドラゴンブリーダー。幻獣や竜の専門家だよ。君がきちんと育てるなら、目利きをしようか。」
少年は目をまんまるにして青年を見上げた。
「で、でも俺、銀貨5枚しか持ってない……!!」
「それで足りるだろう?ああ、ぼくへの心配をしてくれたの?いいよ、この子たちの中で1匹でも助けてくれるなら」
青年はふんわりと微笑むと、少年の頭を撫でた。
「君なら、どの子を選ぶ?」
孵卵器の中では、既に孵ったヒナたちがもぞもぞと頼りなく動いていた。
鳥ともトカゲともつかない姿は、食用トカゲと呼ばれる。竜の肉は高級品で、そうそう手に入ることがないために、それより安価で入手するための竜モドキ。元々は竜であったとされるが、長く食用として飼育されるうちに、トカゲに成り下がった哀れな種。
弱々しく呼吸するだけのヒナを、少年は真剣に見つめた。
「俺、この子がいい……と思う。でも、そっちも……いや、こっちの方がいいのかな……」
自信なくさまよう視線に、青年は最初に選んだトカゲをそっと手に乗せた。
「君はいい子を選んでるよ。ほら、見てごらん。他のと比べて肩の部分が目立つでしょう?この子はきっと、翼が生えるよ」
食用トカゲには、退化した翼が生える個体もいる。青年は目を輝かせた少年の手に、そっとヒナを乗せると、大きな手で包み込んで目を閉じた。
「いい主人が見つかって良かったね。幸せにおなり」
祈るような動作に、ふわ、と一瞬トカゲが熱をもったような気がした。
大切にね、と念を押すと、ぽん、と少年の頭に手を置いて、青年は店の外へ歩み去ってしまう。
「あっ……」
どこの誰と聞く間もなく視界から消えてしまった青年に、少し肩を落として手の中のぬくもりを見つめた。
「よろしく、俺の竜。ちゃんと大きく育てるからな。俺が有名になったら、きっとあの人も気付いてくれるよな」
少年は、自力で生きることも叶わない小さな命に向かって、大きく笑った。
「師匠……目利き料くらいとって欲しいんすけど」
上機嫌で店から出た青年に、どうやら外で待っていたらしい人物が、じっとりとした視線を寄越した。
「えっ?!リーヤはあんな小さな子からも取るの?!」
師匠と呼ばれた青年は、驚いてその不服そうな顔を見つめた。さっきの少年より少し上程度の、少年と言える年頃だろう。彼はどこか大人びた顔で、師匠の困った顔に指をつきつけた。
「当たり前でしょ!師匠はそういうお仕事なんだから!じゃなければ師匠もここに店を構えて客取って下さいよ!」
「ええ~でもぼく、人相手は苦手なんだもの……リーヤがお店に立ってくれるなら……」
リーヤはつり上がった目をさらにきつくして、師匠の胸ぐらを掴んで引き寄せた。引き寄せられるままにかがんだ青年が、瞳をぱちくりとさせる。
「この顔で!店頭に立ってるだけで!いいっすから!俺が前に出ると客が逃げるんすよ!!」
ぎゅう!と腹立ち紛れに頬をひっぱると、整った顔が歪んで、リーヤは少し溜飲が下がった気がした。
「とにかく!師匠が働かないので今月残り数日、食事は草のスープしかねーっす!」
「えっ?!みんなの食事は?!」
「それは別に1月分とってあるんで……」
それは良かったと、頬をさすりながら胸をなで下ろした青年に、リーヤは怒りの視線を向けた。
「……師匠、俺このままだと飢えてあいつらの飯食いますよ?」
なんなら草スープでも1ヶ月過ごせそうな師匠に、あんたは良くても俺が良くねえよと詰め寄りたくなる。何で幻獣たちに肉をやって俺たちは草スープなんだ。
「そ、それは困ったねえ。じゃあ、獲りに行こうよ」
「えーー……あくまで働かない気っすか」
「……冒険者稼業は、働いてるって言わない?」
そこらの草を摘んでくる感覚で魔物を狩ってくるのは、どうも働いてると認めたくないリーヤだった。それに、それだと肉は手に入っても金がない。このぽんやり師匠は魔物を選んで狩ってくるなんてできないから、そうなると必然的に……。
「だから、リーヤも一緒に来てね」
「あああ……やっぱり」
リーヤは頭を抱えた。こうなるのが嫌だから普通に金を稼いでくれと言ってるのに……。
「リーヤも、自分で竜を育ててみたら?相棒になる子、探そうか」
「お断りっす。俺は自分と師匠の面倒で手一杯っす」
そっか、うちの子たちの面倒もみてくれてるもんねえ、なんて笑う師匠に、蹴りのひとつも入れたい気分で見上げると、穏やかな視線は、先ほどの店を向いていた。
「……見えたんすね」
「そうだねえ。ちゃんと、辿ってきたんだね」
たまたま運命の繋がりが見えたからって、おせっかいする必要はないだろうと、リーヤは思う。
「ぼくを覚えてはいなかったけど、ぼくの言葉は覚えていたんだね。彼は将来立派な竜騎士になるよ」
「師匠、あのぼうやが買ったの食用でしょ?飛べないっすよ」
「飛べるよ。ちゃんと育てられたら」
リーヤはじろりと師匠を見やった。
「……なんかしたっすね」
「………」
リーヤはこっそりとため息をついて、謎の多い青年を見上げた。
「……レリィス・ユーキリアス」
「……はい」
「……俺、今夜は肉が食いたいな~。がつっと分厚く切った肉を炭火で焼いて」
しゅんとしていたレリィスは、安堵した顔でにっこりと笑った。
「わかった!ふむ……でっかいやつね……マウントゴーレムがあっちの山にいたような……」
この師匠、まじ使えねえ。
リーヤはぶつぶつと呟かれた台詞にがっくりと肩を落とした。肉っつったろ!ゴーレムは食えねえよ!!
どうしても俺が一緒に行くしかないらしいと、彼はもう一度深いため息をついたのだった。
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