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59話

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 「ごめん、遅くてなった。」

 姿を現したエミリオに声を掛ける。
 「いえ、別に遅くはないよ。」

 エミリオは全然気にして無さそうに答えながらもラミアをチラ見してきた。

 「こっちはラミアだ、縁あって行動を共にする事になった。知り合いだよな?」

 凄い縁だよ、全く。人質にした相手だとは黙っておこう。いずれバレるだろうが。

 「エミリオです、初めましてではないですよ?」
 私も冒険者なんですよ、覚えてますか?ーーと聞いていた。

 「知っています、これでも受付をしていたので。」
 ラミアは愛想なく答えた。

 なんか、雰囲気わるいな。仲悪いのかな?おじさん的には仲良くして欲しいところだ。
 道中やや不安になる。

 「これ、お土産。」
 エミリオには街で手に入れた果物を渡す。手に入れたのではなく盗んだが正解だが盗んだは言葉の響きが悪いので手に入れたと言っておく。お金を払わずに手に入れたのだから=盗んだとは同義ってことにして敢えて言わない。
 女性の前で腹減ってると思って盗んで来た!とは言い辛いし。

 「で、これからなんだけど。」
 これから向かう先は知り合い処だと言っておく。
 「前に怪我をしてるのを助けた事で縁が出来たんだ。」
 ゴブリンの知り合いとは言わない。
 知り合いなのは事実なんだし本当の事は隠した。特にラミアは先程まで街の人間とゴブリン達の争いを見てた訳だし。

 同じ人間でも良い奴、悪い奴が居るゴブリンも同じだと着いたら言おう。
 
 「遠いんですか?」
 エミリオが聞いてくる、夜道を歩くのが不安なのだろう。俺には『気配察知』が有るので不意討ちには遭わないがスキルの事は隠してるので言葉を濁した。

 「ここは離れるけど、夜通し歩く事は考えてないよ。」
  
 俺は右手でラミアと手を握り左手でエミリオの袖を掴む。
 ラミアはもう他人じゃないから手を握っても問題ない。エミリオは手を握る程には親しくないし、身長差もあり歩き辛い。
 
 暫くはお互い無言で進む、ラミアとなら話せるんだがエミリオが少し睨んでるので軽口を叩きにくい状況だ。
 やっぱり、迎えに行くのが遅かったのだろう。事前に2日で戻ると伝えてあったはずなのに。
 待ち合わせで遅れてきて怒られる事は体験済みだが早く来て怒られるのは初めてだ。

 2日で戻るところを1日で戻って来たのどから怒る理由が解らない。お土産で不満があるのかな?後で別の物を差しだそう。
 甘い物が良いのかな。

 「あそこに休もう。」
 前方に小高い丘がありそこで今日は休む事にする。
 素早く焚き火の準備をし火をおこす。

 マジックバックからパンと干し肉を取り出して2人に手渡した。
 
 シーンとした森の中で火が爆ぜる音と干し肉を咀嚼する音だけが響く。
 なんかエミリオさんの雰囲気がずっと悪いのは気のせいだろうか?
 あれからずっと無言で目だけはこっちを見てくる。
 俺がラミアとくっついて座ってるのが気に入らないとか?
 もう他人じゃないからとは説明はしてないが、普通気付くよね?
 説明が要るののどろうか、恥ずかしいな。
 街に向かうまでは、どうやってエミリオと仲良くなって欲望を満たそうかばかり考えて居た。あの時はロリ巨乳が凄くよく見えたのだ。
 今はラミアと知り合い満足している。
 彼女が居ても彼女以外とも遊びたいのは世の中の男性の共通点だろう。
 男性で一途な人の割合はそう多くない。

 例外は何にでもあるが100人に1人どころが1000人に1人位の割合ではないか。
 世間の目を気にして俺は一途だと言い張る嘘つきは沢山居る。

 仕方ないのだ!毎日同じでは飽きてしまう。たまには……ね、って言うのが男の理屈だ。
 ハーレム願望はない、強がりではなく本当にない。面倒くさそうだし。
 彼女にはバレてない!と思いながら遊ぶのが男のロマンなのだ。
 バレてるんだが、何で直ぐにバレるのか、エスパーか?見張ってるの?
 俺はヤバイと思えば謝る。最初はシラを切っていたが逃げられないと解ると謝る。
 どうせ最後には謝るのだから最初に謝れば傷が浅いのだがシラを切る。
 素直に認める=負けを認めるみたいだし。
 浮気【浮ついた気持ち】魔が差しただけ【本気なのはお前だけ】と言っても怒り出す何故?本当の事を言ってるのに。
 正直に話しても怒られ嘘をついたと怒られる、どうしろと?
 答えは簡単、浮気をしなければ良い。

 それは解る解るんだがしたいんだ、ただヤリたいだけじゃない!
 悪い事をしてる行為が楽しいのだ。
 病気!病気なんです、だから許して。
 
 「田村さん!」
 エミリオから声が掛かった


 
 
 

 
 
 

 
 
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