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55話 火事場泥棒

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 「すまなかった。急に走り出して」

 俺は受付嬢の顔を見ないよう背を向けて詫びた。
 「男性と女性の体力の差を考えずに走り出してたのは俺のミスだ」
 受付嬢はハアハアと息を吐いている。
 俺は女性を気遣う振りをしつつ相棒へ語りかけた。
 「今はそれどころじゃないだろ?」
 解ってんだろ?空気を読めよ!死ぬかも知れないんだぞ?
 「流石に今フル勃起はにいよ?」
 俺は相棒へ注意する。
 「お前はあの子と一度ヤレているが今後もヤレる保証はないぞ!」
 俺は諭す、メリハリは大事だと。真面目な部分とエロの部分の使い分けが重要なのだ。

 年中サカってたら女性は引くぞ!マチルダは特異なだけだ。あれは普通じゃない。
 仲良くなるまでは使い分けろ!
 幻滅されたらヤレないぞ?お前は無理矢理が好きなのか?
 嫌いじゃないよな、俺もだ!
 無理矢理も良いけど毎回だからさ、そろそろ無理矢理以外でも楽しみたいよね?
 後ちょっとの辛抱だよ?そう言いながらシンポジを直す。走り辛いので。
 相棒は納得がいかないようで収まる気配がない。まだ解ってないなと嘆息する。

 「優しい心遣い、有難う。」
 受付嬢がニコと笑顔を向けて来る。

 その笑顔だけで俺の説得は霧散した。
 メリメリとズボンから飛び出さんばかりにいきり立つ相棒。
 その笑顔は駄目だ!と女性に話かけた。

 「街を出るまでは体力を温存しながら行きましょう、それまでは休憩出来る時は体を休めよう」

 俺は相棒に念押しした。
 「街を出るまでは体力を温存する!出たら温存しない。意味は分かるな?」
 
 だから今は武装解除してくれと願う。
 やっと聞き分けてくれ、柔らかくなった。

 「息は整いましたか?さあ、行きましょう。」

 俺は再び手を握り今度は歩き出した。

 「!」

 どうやら魔物達はギルドから外へ進出を果たしたようだ。
 戦闘音よりも悲鳴の方が大きくなる。
 劣勢処か戦線は崩壊したようだ。もうこの街は駄目だな。
 俺は下水道から地上へ向かう。
 『気配察知』があるので辺りの気配は丸わかりだが油断はしない。
 俺達は人気のない民家に入りまた休憩に入った。
 俺には『気配察知』があるから近づく個体は解るが街の様子まではわからない。
 「直ぐに戻る!」
 受付嬢に言い残しマジックバックを掛けて街に繰り出す。
 理由は様子を探ると受付嬢には告げたが本当の理由は他にある。
 「火事場泥棒だ!」
 これだけ混乱して居ればパクリ放題だなと普段よりも更に悪い顔になる。もうニコニコが止まらない。
 『気配察知』を使い人気のない民家の中でも裕福そうな家に入り手に触れるものを全てカバンに仕舞う。物色はしない。手当たり次第だ。 触れたら最後。

 この地域は裕福そうな家が多い。
 こりゃあ、困ったぞ。時間が足りないなと黒い笑みを浮かべる。
 
 ニコニコしながら次の家に向かう。

 「ああ!」

 閃いた!
 閃いた事を実行する。
 閃いた内容は部屋の中の物を仕舞うのではなくて家丸ごと収納出来ないかと。

 試しにやってみた。
 「消えたああ!」
 目の前にあった。確かに家が有ったのに今は何もない。
 残ってるのは家を囲む塀だけだ。
 やって置いてなんだが俺は呆然とし暫く動けなかった。
 
 俺は意識を取り戻した!取り戻すと同時に一番豪華で大きい建物に向かう。
 家と言うより、最早宮殿的な大きさの家に手をつき収納を意識した。
 宮殿は無くなっていた。
 塀だけだを残し空き地になる。

 「これは凄すぎて言葉が出ないな」

 この大容量マジックバックには既に民家?が幾つも丸ごと収納してある、もう充分だと街の様子を見にいく。

 街はまさに阿鼻叫喚の地獄図になっており至る処で火災が起きており死体が転がっている。

 「これって、俺のせい?」
 俺が扉を見つけたから?
 扉に死体を投げ入れたから?
 死体に魔物が寄ってきたから?
 魔物と冒険者達が戦闘になったから?
 冒険者達が負けたから?

 「冒険者達が負けた!」
 なら、俺のせいじゃないな。気にし過ぎだったと反省する。
 冒険者達が負けたのは弱いからだ。弱い事自体が罪だ!
 結論、俺は悪くない!
 これで話は終わりと切り替える。

 そして、他にはないかなぁと物色を続けた。
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