上 下
54 / 98

54話

しおりを挟む
 女性の生着替えを横でジッと観ている。
 「恥ずかしい……見ないで」

 恥じらう女性は良い物だ、恥ずかしそうな顔が似合う女性に限るが。
 つまり、美人はどんな仕草も似合う。
 
 着替えを眺めるのも良いが滅多にない機会だとギルドの中を物色する。
 
 マジックバックはここでも威力を発揮する。
 手当たり次第に椅子や机などをポーチに仕舞う、どんどん部屋の中が片付いていく、目の前にある大きな本棚も手に触れるだけで目の前から消えて無くなる。

 「あ、床下収納?」
 本棚を退かしたら古ぼけた取っ手付の床下収納が現れた。
 俺は力任せに収納扉を開けた。
 「クンクン?」

 中から獣臭がし『気配察知』に反応がある。
 「何かいるな?」
 
 俺は扉を閉めて1度受付嬢の元に戻り話しを聞いて貰う。

 「本棚退かしたら床下に降りる扉を見つけたんだけど、何処に通じてるの?」

 受付嬢は、は?と呆けた顔をし一緒に見にいく。
 「私も……初めて識りました。」
 嘘をついてるようには見えない、が女性は皆さん女優だから演技してませんよね?

 気になるの反応が1つではない処だ。脱出路は下水道から逃げる積もりだが、受付嬢すら知らない地下通路なら確実に逃げれる。
 
 獣の反応があるのだから何処かに通じてるのは確実だ。
 確実だが、暗闇の中受付嬢を連れて対処出来る自信はない。
 俺は別の使い道を取る。受付カウンターに転がって居る冒険者の死体を地下へ投げ入れた。扉を開け放ちそこに死体を転がす。
 次期に突入部隊が現れる、彼等にはこの通路から逃げたと思わせたい。

 受付カウンターの血糊は拭き取っておいて受付嬢と共に下水道に向かう。

 「マジックバックって凄いな!他にもあるの?」
 歩きながら俺は話し掛ける。

 「はい、此方の鞄が容量が最大だと聞いています。」

 見た目は只のショルダーバッグ。
 「信じられない程の大きな物まで収納出来るそうです。」

 受付嬢もギルドの職員からの股聞きなので見たことはないそうだ。
 俺はショルダーバッグを掛けて中にポーチを仕舞う。

 俺は下水道への入口まで着いてから再度受付嬢に聞く。

 「本当に行くか?もう戻れないぞ!」

 「だ、大丈夫です。ワクワクしてます。」

 俺は下水道への入口を開き中に入る。中から閂を掛けて容易には開かないように工夫もした。
 「!!!!」

 『気配察知』反応が更に大きくなる。入口をどんどんと壊す音が聞こえ出した。

 謎の入口にも変化が起きた、死体に近付いて来る反応に大きな個体が混じる。小さい反応はゴブリン程度だが、大きな反応はオークよりもデカい。

 何だろうな、気になるが見に行く事は出来ない。魔物なら冒険者達に任せよう。
 反応は引っ切り無しに出だす。もう数え切れない。大軍だ。ここで隠れてても大丈夫か心配になる。

 「ドン!」
 扉が壊される音が響き冒険者達が雪崩れ込んで来た。足音だけでも音が響き地震のように建物が震える。
 「何処だ!いないぞ!」
 「おい!こっちに血の後があるぞ」
 「こっちだ!」
 「こっちに2人倒れている!」

 下水道の入口付近で身を隠している俺達にも声がハッキリ聞こえてくる。
 「ここに居ても、大丈夫なんですか?」

 受付嬢は心配そうに俺の顔を見る。
 「さっきまでは俺も心配だったが今は寧ろ安全になったと思ってるよ。」

 受付嬢はまた呆けた顔になる。
 受付嬢は俺を楽しませる事が得意なようだ。

 「あの謎の入口に獣の反応がある。それも数え切れない位の反応が。」

 もう間もなく冒険者達と戦いが始まる。

 音声だけではツマラナイなと思うが俺達の安全の為には仕方がない。

 「クモだ!デカいクモがぁ!」
 「魔物居るぞ!」
 「戦闘準備!」
 「各個に攻撃開始!!」

 狭い部屋の中で魔物との戦闘が始まったようだ。
 「クモの魔物ってどんな奴なの?」

 受付嬢にギルドに来る討伐依頼でクモの魔物があるのか訊ねる。
 「たまに、有ります。が難易度が高い魔物なので指名依頼が殆どです。」
 中級以下では対処出来ないらしい。
 その魔物が大軍で現れたのだ、苦戦は必至だ。

 「部屋から出すな!」
 「ここで食い止めるぞ!」

 激しい戦闘らしいがそろそろ行こうと受付嬢の手を握り歩きだす。

 歩き出した理由はこの街ヤバイと思ったからだ、冒険者達の反応はどんどん消えて行くがクモの魔物の反応は一切消えないし後から後から後続が現れる。減らない処か増えている。

 当初のイメージは魔物との戦闘による混乱で街から抜け出せると考えていた。勿論、多少の戦闘はあるだろう位だが。

 今はもう状況が違う。冒険者達と魔物では戦力が違い過ぎる。
 個の力も数でも魔物が冒険者達を圧倒し始めていた、逃げられなくなる。

 受付嬢の手を握り出口を目指し走った。

 ハアハアと荒い息遣いの受付嬢。
 死が間近に迫って来ていると言うのに俺のモノは反応した。
 「ハアハア、如何しました?」
 荒い息を吐きながら受付嬢は聞いてきた。

 勃起して走り辛いとは言えない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...