愛に一番近い感情

小波ほたる

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5幕:愛に一番近い感情

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 その言葉に黙り込む。
 想われていればいいと思った。だけどそれは、自分が相手に愛情を求めるような、そんな気持ちを抱いていてこそ、なんだ。
「きっと妻の私に対する思いは、愛ではなく、それに一番近い別の感情です」

「高橋さんの、お迎えにくるそのお相手はどんな人ですか? ……ああ失礼、そんなことを聞くのは不躾ですよね」
 おじさまの声にはっとする。
「いえ、構いません」
 どうしてだろう、私も全部話してしまいたい。自分が抱えてる重いことも。
「……同業者です。とても誠実で、普段はクールで余裕ぶって振る舞うことが多いのですが、実はとても情熱的で少年みたいなところがあって、何より、いつもありのまま優しいんです」
 記憶を辿る。
「書くのも素晴らしい作品ばかりで、前から同志として尊敬していた人ですが、私の書いた脚本を好きだと彼が言ってくださったのをきっかけに個人的なつきあいを始めました」
「その人がいいと思った理由をお聞きしてもよろしいですか?」
 おじさまは優しく促す。
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