愛に一番近い感情

小波ほたる

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3幕:優しさを求める共鳴

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 なら特に大問題はないのでは、と拍子抜けしそうになった。
 だけど、おじさまはまた私が思ったことに気づいたように視線をこっちに向けた。
「安泰、幸せに聞こえますか? 確かに、端から見ればその通りかもしれません。ですが、どちらとも母の後を継ぐ意思はなく家を出ていて、就いている仕事も安定とは言い難く、規律を乱しています」
「……私には、想像しかできないお悩みです」
「想像だけで十分ですよ」
 そこで、また沈黙が降りた。
「高橋さんはどうして脚本家を目指すようになったのでしょうか?」
 数秒たって出た質問に少し反応が遅れた。
 ずいぶん唐突に話題が飛ぶ。
「物語を想像するのが好きだから、というのが原点です。ただ、小説を書こうとするとこれが全然上手くできず、手段はそれじゃないと気づいて方向転換した感じです。どうも、心情描写を、文章を通して表現する力が弱いんです。でも、私ができなくても、できる人……つまり、監督、演出家や俳優などにその部分を任せたら物語も形になると気づいて。ありがたいことに、今はこれを仕事にできています」
「ご家族や友達は応援してくださってますか?」
 痛いところを突かれる。
「あるいは、どういう風に接してもらえたら嬉しいですか?」
 すぐに答えられずにいると、追い打ちをかけられる。
「……手放しで応援してくれている人は、いません。実は改めて勉強し直そうと最近まで留学に行ってたのですが、それを身内に伝えた時も良い顔はされませんでしたし。おそらく、先ほどおっしゃった『安定のなさ』が理由なんだと思いますが、こっちはそれも承知と覚悟の上でやっているのだからそれをやめるべき理由として思われても理解しがたいと言いますか」
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