愛に一番近い感情

小波ほたる

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3幕:優しさを求める共鳴

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「すみません」
 軽く頭を下げられる。
 だけど、ディスプレイを見た瞬間、よほど出ないとまずい相手だったのか、ふと表情が硬くなった。
「……申し訳ありません。少しだけ、外してよろしいでしょうか」
「はい、もちろん」
 彼は改めて礼をすると、席を立ち店の入口へ向かった。
 ガラス窓の向こう、店の外に目をやると、おじさまはやっぱりスマホの向こうにいる誰かと話していた。
 私も自分の新着メッセージやメールを確認しようとスマホを見ると、終演後に連絡を入れていた景斗くんから返事が来てた。
『役に恥じないでいれてるようでよかったです。夜公演も頑張ります』
 夜公演は早めの四時半から。あと二時間ほど先だ。
『兄の伝言には何も返しようがないですけど……今日、一緒に来てるわけじゃないんですね』
 そこでメッセージが途切れ、新しいのが別で届いていた。見ると、この数分後という送信履歴だ。
『あんな人ですけど、見限らであげてください。本気で舞子さんのこと大事にしてるって俺にもわかるし……俺からも、よろしくお願いします』
 妙に歯切れの悪い終わり方に思えた。これが台詞だったら変更したくてうずうずしてる。
 ふと思い当たる。
 もしかして、昨日の喧嘩のこと聞かされてる? 両親とは上手くいってないと聞いてるけど、プライベートの兄弟仲まで悪いわけではないし、互いに相談を持ちかけていても不思議じゃない。
 冷静に考えると、ただそれだけだ。
 でも、なんで私のことまでそう勝手に……
 きゅっと唇を嚙む。
 返事はしないで、そっとアプリを閉じた。
 スマホを仕舞って顔を上げると、おじさまが戻っていた。
 気のせいか、表情がさっきより元気がない。
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