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3幕:優しさを求める共鳴
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きっと今は部屋でパソコンかノートと睨み合ってる同業者、柴山京介を思い出す。
「包容力や余裕、でしょうか。私の考えることや思うことをいつでも受け止められるような。すぐに消化できないにしても、認識と、できるのなら理解してくれるだけでも……せめて聞いてすぐ否定しないくらいの寛容さは」
「お迎え予定の相手に求めているものですか?」
さらりと見抜かれ、ごまかすように小さく笑う。
「今は確かに彼が対象ですね。ただ……」
「ただ?」
「……彼では満たされないと、もし思ったら、違う人にその望みを託すようになるかもしれません。それに、相手に求めるものがあるのはもちろん向こうも同じですから、もし私がそれに当てはまらなくなってしまったら逆に私のほうがふられますね」
「いくら客観的に、第三者からして見たら申し分ない相手であっても、本人が求めている人でなければ、それは幸せになれる相手ではない、と」
鋭くなったおじさまの視線に軽く頷く。
「お互いに求めているものを与え合うことができる。『一緒にいて幸せになれる二人』のひとつの条件なんだと思います」
どうして、会ったばかりの人とこんな深い話ができるのだろう。
いや、会ったばかりだからこそ、かもしれない。
自分のことを知っている人の相手をするというのは、自分とその人との関係を保つのに一番適切な「程度」を意識しながら臨むということだ。ただ何も考えず愚痴や不安を吐露したい時、そんな手加減の調整は実は、邪魔でストレスを増やすだけのことも多い。
不思議と落ち着いた気分になり始めた時、ふとおじさまが自分の胸元に目をやった。
私もつられるように視線をそっちに向けると、彼はワイシャツの胸ポケットに入れていたスマートフォンを取り出した。音はないが、着信だろうか。
「包容力や余裕、でしょうか。私の考えることや思うことをいつでも受け止められるような。すぐに消化できないにしても、認識と、できるのなら理解してくれるだけでも……せめて聞いてすぐ否定しないくらいの寛容さは」
「お迎え予定の相手に求めているものですか?」
さらりと見抜かれ、ごまかすように小さく笑う。
「今は確かに彼が対象ですね。ただ……」
「ただ?」
「……彼では満たされないと、もし思ったら、違う人にその望みを託すようになるかもしれません。それに、相手に求めるものがあるのはもちろん向こうも同じですから、もし私がそれに当てはまらなくなってしまったら逆に私のほうがふられますね」
「いくら客観的に、第三者からして見たら申し分ない相手であっても、本人が求めている人でなければ、それは幸せになれる相手ではない、と」
鋭くなったおじさまの視線に軽く頷く。
「お互いに求めているものを与え合うことができる。『一緒にいて幸せになれる二人』のひとつの条件なんだと思います」
どうして、会ったばかりの人とこんな深い話ができるのだろう。
いや、会ったばかりだからこそ、かもしれない。
自分のことを知っている人の相手をするというのは、自分とその人との関係を保つのに一番適切な「程度」を意識しながら臨むということだ。ただ何も考えず愚痴や不安を吐露したい時、そんな手加減の調整は実は、邪魔でストレスを増やすだけのことも多い。
不思議と落ち着いた気分になり始めた時、ふとおじさまが自分の胸元に目をやった。
私もつられるように視線をそっちに向けると、彼はワイシャツの胸ポケットに入れていたスマートフォンを取り出した。音はないが、着信だろうか。
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