命を詠う華

YUE

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刹那と久遠は涙を流していた。
空と茨城の話を聞き、両親の理想を知った。
天はそれを実現しようと、ここで、自分達の帰りを待ちながら、頑張っていたことを知った。
「久遠?」
「はい」
「俺達にも、出来るかな」
「出来ますとも。私達は、母様と父様の子なのですから」
「そうか。そうだよね」
「はい」
意思を固めた刹那は、早速行動に出る。
「ねえ君達?」
今だ自分達の胸に顔を埋める2人に話し掛ける。
「俺は刹那。こっちは妹の久遠って言うんだ」
「・・・せつ、な?」
「・・・く、おん?」
2人は顔を上げる。
「君達の名前も、教えてほしいな」
「・・・りん、どう」
「・・・ことは」
「燐童、琴葉。良い名前だね」
「はい。とても可愛い名前ですね、琴葉」
久遠が名を呼びながら頭を撫でると、琴葉は頬を染めてはにかんだ。
それを見た燐童は、刹那に視線を戻し無言で訴える。
「あ、うん。燐童も素敵な名前だね」
刹那に頭を撫でられた燐童も笑顔を溢す。
「ねえねえ、久遠?」
「はい。何ですか?琴葉」
「久遠と刹那はどうして、天様と同じ匂いがするの?」
「刹那と久遠はどうして、天様と同じ妖気を感じるの?」
琴葉と燐童は同じような質問をする。
「それはですね、私と兄様が父様の、天の子供だからですよ」
「君達は凄いなあ。そんなことまで分かるんだね」
「天様居ないの?」
「天様どこ?」
切な気な燐童と琴葉の問いに、刹那と久遠の表情も曇る。
「俺達も、父上を探しに来たんだけど、とても、遠くに行っちゃったみたいなんだ」
「こんな可愛い娘達を残して行くなんて、酷い父様ですよね」
「「天様ともう会えないの!?」」
刹那と久遠の解答に、燐童と琴葉が涙ぐむ。
「ああ!泣かないで、父上は居ないけど、今は俺と久遠が居るから」
刹那は微笑み、
「俺達の、友達になってよ」
語り掛ける。
燐童と琴葉は顔を見合せ、
「「黙って何処かに行ったりしない?」」
切実な願いを口にする。
「うん。黙って行かないよ」
「約束は守りますわ」
刹那と久遠は真っ直ぐに燐童と琴葉を見詰める。
「「友達になる!」」
燐童と琴葉は笑顔で刹那と久遠に抱き付いた。
「ちょっ!?燐童、く、くるし」
「こ、とはさん?す、こし、力をゆるめ、て」
刹那と久遠の訴えは、
「「刹那、久遠」」
甘えた声を出す2人には届かなかった。
「ふふ。どうやら向こうも、話がついたようじゃな」
「ええ。そのようです」
少し離れた所で、空と茨城は子供達を優しく見守っていた。
それからしばし、空達は山寺に滞在した。
本殿内の片付けと、遺骨を弔うために。
子供達はすっかり打ち解け、片付けを手伝う合間に元気に走り回っている。
そして、空達が下山する日。
再会を約束し、しばしの別れとなった。
泣き愚図る燐童と琴葉を、刹那と久遠がなだめ、説得するのに、丸一日費やしたのは余談である。
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