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10 彼の想い

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彼の言う事が信じられない。

彼は騎士団に入団してから恋人のために爵位を得ようと必死になっていたが、そのうち恋人は家のためにとノイマン伯爵別の男と結婚した。その後彼は手柄をたてたようで授爵の話が出たが辞退した。
騎士団は基本的に平民か爵位を継げない貴族の次男以下しかいない。だから爵位はみんな喉から手が出るほど欲しがる。それなのに辞退するなんてきっと恋人が忘れられず独身を通すつもりだ、と有名だ。
そしてそれを裏付ける様にどんなに素敵な女性に言い寄られても付き合うことはなかった。
今でも彼女のことを一途に思い続けている。そう思われていた。

それが今回の事故で彼はと言って私との婚約を決めたのだ。
そのため、以前辞退した授爵の話を王家にお願いしてドレン伯爵を賜ったのだ。
これには私の父である侯爵が娘を嫁がせるために伯爵位に上げさせたと巷で噂だ。これは噂ではなく真実だ。侯爵家の令嬢が子爵家に嫁ぐのは、と言うことで母の実家の持つドレン伯爵を返還し王家からの授爵としたのだ。

その一連の話を知っている私にとって彼の方が私に怪我を負わした『』が私の知る真相だ。


「やっぱり伝わってなかったな。」

フェルマン様は苦笑しながら場所を変えて今までのことを教えてくれた。



幼なじみで子爵令嬢のミラとは恋人同士だったが彼は伯爵家の次男で継げる爵位はない。彼女との結婚も視野に入れていた彼は早くから騎士として武勲をたて爵位を賜るべく鍛錬に明け暮れていた。それは彼女には伝わらず、彼女にしたら放置されていると思ったのだろう。不満を口にしては喧嘩になることもあった。
2人の仲がおかしくなってきたのは彼女が社交界デビューしてからだ。周りの男性から贈り物や熱心なアプローチがされ始めた。
他の男性からもらった贈り物を見せつけてみたり、結婚して平民になるなんて無理だ、兄を引き摺り降ろしてでも貴族になる気はないのかと彼を責め立て何度も喧嘩になっていた。その頃には彼女と顔を合わせても喧嘩になるので出来るだけ会わないようにしていた。

決定的になったのは、伯爵家の男性からプロポーズされたと言い彼女は彼を捨て裕福なノイマン伯爵と婚約、結婚したのだ。
彼は彼女に対して失望した。彼女のために頑張ってきたのにその努力を踏み躙られたのだから。

その後念願だった授爵の話が出たが、貴族になる必要もなくなり、反対に貴族の煩わしさを考えて辞退した。
彼女と別れてから色々な女性に言い寄られても、付き合う気にもなれなくてずっと恋人も作らなかった。
それを周りが勝手にまだ彼女の事が好きで一途に思い続けていると誤解した。数度否定したが信じてもらえなくて諦めて噂を放置した。

私との婚約は怪我の責任を取るために申し出た。伯爵子息としてそれは常識だった。だが、このまま平民として生きていくのに責任感だけだといえ侯爵令嬢を娶るわけにはいかない。無理だとわかっていたので、以前お話があった授爵を王家にお願いすることにしたのだ。
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