【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音

文字の大きさ
上 下
5 / 12

5 変わらない婚約者

しおりを挟む
ルーリラはただ立ち尽くしていた。

「ルーリラ?」

アイリスの心配そうな声にハッとして大丈夫だと答えた。アイリスはルーリラを抱きしめてきた。

「大丈夫だなんて…。泣いてるのに無理しないで。」

ルーリラは泣いている自覚はなかったが、涙が勝手に流れていたのだ。
それから暫く何も言わずそのまま2人でいた。
やっと泣き止んだルーリラを見てアイリスが聞いた。

「ねえルーリラ、このまま彼と結婚して貴女幸せ?」

彼はで婚約したのだ。彼の心の中には未だに幼なじみの元恋人がいるのだ。
その元恋人が傷つき帰ってくるのに自分には不本意な婚約者がいるために慰めることもやり直すこともできない。
責任があるからと婚約解消などせず結婚し、元恋人への恋心は封印して、その後はきっと表面上だけの生活が待っているだろう。

アイリスは自分の事のように怒ってくれた。
涙で化粧が落ちたので控室に行き化粧を直したが、目が赤いのはどうにもならず、そのまま帰る事にした。






翌日フェルマン様が訪ねてこられた。
元恋人の話を聞いたフェルマン様から婚約解消されるのではないかとビクビクしてしまった。
パーティで戻ったら君がいなかった。何かあったのかと聞かれたので、昨晩はアイリスと話をしながらシャンパンを飲みすぎて酔っぱらっい酔いをさましていた。醜態を晒したくないから1人で帰ったという事にした。

「心配したよ。君がいないのに俺1人でいても仕方ないから俺もあの後すぐに帰ったよ。」

そう厳しい表情で言われた。
そうね。仕方なく結んだ婚約者とパーティに出ているのに勝手に帰られたら怒りもするわね。
しかも愛しの幼なじみが彼の元に戻れる話を聞いたのに、自分から婚約解消できないんだから。
『最悪だ』まさに貴方のその一言に尽きるわね。

ああ、卑屈になりすぎてる。ダメだダメだ。
こんな自分は大嫌いだ。
フェルマン様を好きになっているから悲しいけれど、自分のため、彼のために婚約を解消しよう。

フェルマン様はこの婚約が解消できたら彼女とヨリを戻するだろう。一時期自分を縛っていた婚約者として嫌な思い出ではなくせめて笑顔の私を覚えていて欲しいから、笑顔を心がけて素直に謝る。

フェルマン様は取り繕うように「今日は仕事も休みだし、体調が悪くなければどこか出かけないか?」そう言ってくださった。

「嬉しいわ。そうだ、ピクニックに行きたい。」

彼には子供っぽく付き合いきれないのだろうか?

「お弁当を持っていってそこで食べましょう。」

お揃いの物を持つ。自分の作った物を食べてもらう。街中をお忍びでデートする。
それらは恋人ができたらしたかった事だ。
フェルマン様には不本意かもしれないが、お揃いの物は婚約の印のピアス。
そして今からお弁当を持ってピクニック。フェルマン様に待っていてもらう間に以前から練習していたデザートを作って持っていこう。
お忍びのデートは行きたいと私が言えば優しいフェルマン様のことだから付き合ってくださるだろうが元恋人の事が気がかりできっと楽しい思い出にはならないだろう。

フェルマン様と婚約解消したら私にとって今後まともな結婚などないだろう。もうすぐ解放してあげるから今だけ幸せな夢を見させてほしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者を追いかけるのはやめました

カレイ
恋愛
 公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。  しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。  でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている

恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」 「はあ……なるほどね」 伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。 彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。 アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。 ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。 ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。

【完結】この運命を受け入れましょうか

なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」  自らの夫であるルーク陛下の言葉。  それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。   「承知しました。受け入れましょう」  ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。  彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。  みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。  だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。  そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。  あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。  これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。  前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。  ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。     ◇◇◇◇◇  設定は甘め。  不安のない、さっくり読める物語を目指してます。  良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

処理中です...