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番外編 婚約まで フェルマン視点
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マイコエントル伯爵家の次男として産まれてきたので爵位は継げない事は幼い頃からわかっていた。
だから、早くから剣技を磨き騎士として生きていく事を考えていた。
初恋の相手である幼なじみのミラと恋人になった。
子爵令嬢であるミラの為に武勲をあげ一代限りの騎士伯ではなくきちんとした爵位を貰えるように努力した。
力を求めて必死に努力するが、なかなかすぐには結びつかない。訓練に力を入れるあまり彼女を放置しすぎたらしい。
彼女は『もっと私との時間をとってほしい。俺からの愛を感じられない。訓練なんかよりデートに連れて行って。』と段々我儘を言い出した。少しは彼女に歩み寄ってはいたが、そのうち放置される様になり『俺が嫡男でないのが悪い。』とより良い相手を求めて嫁いで行ったのだ。
美人の彼女は大人になり周りからちやほやされ贈り物などの贅沢に慣れてしまい俺の好きだった彼女からは大きく変わってしまっていた。
その時に彼女への恋心はなくなった。
その後は女性とは愛よりお金なんだと納得して恋人を作る気にもならず、一層訓練にのめり込んだ。
それが愛し合う恋人と引き裂かれたがそれでも彼女を一途に思う誠実な男として噂されているとは思っていなかった。
皮肉なことに彼女と別れてから何度か武勲をあげ子爵位をと話が出るようになった。
爵位を欲する理由もなければ、爵位にこだわりはない。一緒独身でもいい。それなら爵位など面倒なだけだと、辞退していた。
年末に外交を担う侯爵が自宅でパーティを開くので騎士団に警備と警護の依頼が来た。
普段なら貴族の家で開くパーティの警備のために騎士団が呼ばれる事は全くではないがほぼない。今回は内密で他国の王族が来ると騎士団に依頼がきた。
王族相手、しかも内密にという事でマナーの面で騎士団でも数人しかいない貴族子息が警護に当たることになった。俺もその1人だ。
使節団の中に幼い子供がいた。それはその国の第二王子だという。父は政務で忙しく母が次の子を孕って体調を崩しており、城の中でも何やら不穏な動きがあるとのことで使節団と一緒に連れられてきたいうのだ。
幼い王子を1人連れ出すなんてその国はどうなっているのか?と呆れていたが、第一王子は第二妃の子であり、年が離れているし敵対されているらしい。王位争いに巻き込まれているのだろうと推測する。
だからといってそんな幼い子供が大人ばかりのパーティで楽しめるはずもなくしばらくすると飽きた。と言って外に出たがった。
侯爵家の令嬢が王子を庭を案内することになり付いて行った。
他国の要人を招いてパーティをすることも多い侯爵家らしく庭は見応えのある様々な花で溢れかえっている。
彼女はそこではなく幼い王子が喜びそうな生垣で作った迷路のような場所に連れて行った。
王子は目を輝かせて迷路を楽しんでいた。
その時見慣れない男が反対側から急に出てきた。その手には短剣が握られていた。パーティに参加するにあたって剣帯は許されていない。俺は咄嗟に王子の前に出てそいつを捕まえた。
王子に何事もなく犯人を捕まえられたと安堵して振り返って愕然とした。
そこには王子を庇い抱き抱えるようにして生垣に倒れている令嬢がいたからだ。
俺が王子の前に出ようとした時に令嬢は王子に怪我をさせてはいけないと引き寄せようとしていた。その空いた空間を抜けようとして令嬢に当たったらしい。その衝撃で令嬢は生垣に倒れ込んだのだ。
幸い季節は冬で衣装の生地は厚いが無傷でいられるわけはない。
令嬢も咄嗟に顔は避けようとしたが全てを避けきれず、無防備な首元や手に枝が刺さり血が流れていた。
「申し訳ありません。」
貴族として生きてきて令嬢が傷を負うことはどんな事がわかっている。
傷はそれほど酷くはなかったため、数日も経つと薄らとピンク色になりしばらくすると跡も残らず消えると言われた。
だが、自分の取るべき行動は分かっているつもりだ。
すぐに侯爵家に責任を取ると伝えた。
侯爵からは
「娘は責任など望んでいない。貴方は仕事を全うしただけだと。
侯爵家の令嬢であるあの子が傷を負うことの意味をわからない訳はない。傷は残らないとしてもだ。それでも君に無理強いをしたくないそうだ。
幸いこの件は公にする事はできないから丁度良い。君にも気にする事ないようにと伝えて欲しいと言われている。」
その言葉には衝撃を受けた。
俺は見目だけならかなり好まれるようで騎士団の公開試合でもかなりの声援を受けている。貴族の令嬢達からプレゼントも貰うこともある。
だからこの話は断られるとは思っていなかった。それと同時に彼女のこちらを気遣う心が伝わってくるようで好感が持てた。
それでも彼女に甘える事はしたくなかった。
彼女は爵位を気にしているのだろうか?伯爵家の次男の俺は本来なら平民になる。
だが、侯爵家の令嬢を娶るには少し位が低すぎるだろうが辞退している子爵位を賜る事ができる事も伝え結婚したいと伝えた。
「君の気持ちはわかった。私はどのような形であれ君と娘が決めた結果を尊重しようと思う。」
侯爵と話し合いをして王家も巻き込み、伯爵位を賜る予定になった。
最終的な話し合いの為に彼女と面会をした。
手は手袋をしていて見えないが、顔と首筋にあったはずの傷はどこにも見当たらなかった。傷痕は残らないと聞いたが、早すぎる。と思って凝視していると、彼女は苦笑して言った。
「マイコエントル様、女性をそんなにじっと見るものではありませんわ。
侍女達が気をつかい顔や首筋は白粉で隠しております。気になっていらっしゃるのはこれでしょう。」
そう言って手袋を外して手を見せてくれた。
そこには傷痕が薄らとピンク色になっていた。
「よく見ないとわからないでしょう。だから気になさらなくていいと申しましたのよ。傷もなくなるのですから貴方が犠牲になる必要はありませんわ。貴方はただお仕事を全うされただけですもの。」
くすくすと笑いながらもこちらを気遣う彼女。
なんだか責任だけで結婚するそんな男に見られているように思えた。確かに責任という言葉に否定はできない。だが、あの日血を流しながら王子を守った姿やその後の俺を気遣う凛とした姿に彼女を好ましいと思ったのも事実だ。
そして、今の苦笑する彼女に俺は俺の意思で彼女と結婚しよう、いや結婚したいと思った。
「ルーリラ・ヒューナイト嬢。私と結婚してください。」
だから、早くから剣技を磨き騎士として生きていく事を考えていた。
初恋の相手である幼なじみのミラと恋人になった。
子爵令嬢であるミラの為に武勲をあげ一代限りの騎士伯ではなくきちんとした爵位を貰えるように努力した。
力を求めて必死に努力するが、なかなかすぐには結びつかない。訓練に力を入れるあまり彼女を放置しすぎたらしい。
彼女は『もっと私との時間をとってほしい。俺からの愛を感じられない。訓練なんかよりデートに連れて行って。』と段々我儘を言い出した。少しは彼女に歩み寄ってはいたが、そのうち放置される様になり『俺が嫡男でないのが悪い。』とより良い相手を求めて嫁いで行ったのだ。
美人の彼女は大人になり周りからちやほやされ贈り物などの贅沢に慣れてしまい俺の好きだった彼女からは大きく変わってしまっていた。
その時に彼女への恋心はなくなった。
その後は女性とは愛よりお金なんだと納得して恋人を作る気にもならず、一層訓練にのめり込んだ。
それが愛し合う恋人と引き裂かれたがそれでも彼女を一途に思う誠実な男として噂されているとは思っていなかった。
皮肉なことに彼女と別れてから何度か武勲をあげ子爵位をと話が出るようになった。
爵位を欲する理由もなければ、爵位にこだわりはない。一緒独身でもいい。それなら爵位など面倒なだけだと、辞退していた。
年末に外交を担う侯爵が自宅でパーティを開くので騎士団に警備と警護の依頼が来た。
普段なら貴族の家で開くパーティの警備のために騎士団が呼ばれる事は全くではないがほぼない。今回は内密で他国の王族が来ると騎士団に依頼がきた。
王族相手、しかも内密にという事でマナーの面で騎士団でも数人しかいない貴族子息が警護に当たることになった。俺もその1人だ。
使節団の中に幼い子供がいた。それはその国の第二王子だという。父は政務で忙しく母が次の子を孕って体調を崩しており、城の中でも何やら不穏な動きがあるとのことで使節団と一緒に連れられてきたいうのだ。
幼い王子を1人連れ出すなんてその国はどうなっているのか?と呆れていたが、第一王子は第二妃の子であり、年が離れているし敵対されているらしい。王位争いに巻き込まれているのだろうと推測する。
だからといってそんな幼い子供が大人ばかりのパーティで楽しめるはずもなくしばらくすると飽きた。と言って外に出たがった。
侯爵家の令嬢が王子を庭を案内することになり付いて行った。
他国の要人を招いてパーティをすることも多い侯爵家らしく庭は見応えのある様々な花で溢れかえっている。
彼女はそこではなく幼い王子が喜びそうな生垣で作った迷路のような場所に連れて行った。
王子は目を輝かせて迷路を楽しんでいた。
その時見慣れない男が反対側から急に出てきた。その手には短剣が握られていた。パーティに参加するにあたって剣帯は許されていない。俺は咄嗟に王子の前に出てそいつを捕まえた。
王子に何事もなく犯人を捕まえられたと安堵して振り返って愕然とした。
そこには王子を庇い抱き抱えるようにして生垣に倒れている令嬢がいたからだ。
俺が王子の前に出ようとした時に令嬢は王子に怪我をさせてはいけないと引き寄せようとしていた。その空いた空間を抜けようとして令嬢に当たったらしい。その衝撃で令嬢は生垣に倒れ込んだのだ。
幸い季節は冬で衣装の生地は厚いが無傷でいられるわけはない。
令嬢も咄嗟に顔は避けようとしたが全てを避けきれず、無防備な首元や手に枝が刺さり血が流れていた。
「申し訳ありません。」
貴族として生きてきて令嬢が傷を負うことはどんな事がわかっている。
傷はそれほど酷くはなかったため、数日も経つと薄らとピンク色になりしばらくすると跡も残らず消えると言われた。
だが、自分の取るべき行動は分かっているつもりだ。
すぐに侯爵家に責任を取ると伝えた。
侯爵からは
「娘は責任など望んでいない。貴方は仕事を全うしただけだと。
侯爵家の令嬢であるあの子が傷を負うことの意味をわからない訳はない。傷は残らないとしてもだ。それでも君に無理強いをしたくないそうだ。
幸いこの件は公にする事はできないから丁度良い。君にも気にする事ないようにと伝えて欲しいと言われている。」
その言葉には衝撃を受けた。
俺は見目だけならかなり好まれるようで騎士団の公開試合でもかなりの声援を受けている。貴族の令嬢達からプレゼントも貰うこともある。
だからこの話は断られるとは思っていなかった。それと同時に彼女のこちらを気遣う心が伝わってくるようで好感が持てた。
それでも彼女に甘える事はしたくなかった。
彼女は爵位を気にしているのだろうか?伯爵家の次男の俺は本来なら平民になる。
だが、侯爵家の令嬢を娶るには少し位が低すぎるだろうが辞退している子爵位を賜る事ができる事も伝え結婚したいと伝えた。
「君の気持ちはわかった。私はどのような形であれ君と娘が決めた結果を尊重しようと思う。」
侯爵と話し合いをして王家も巻き込み、伯爵位を賜る予定になった。
最終的な話し合いの為に彼女と面会をした。
手は手袋をしていて見えないが、顔と首筋にあったはずの傷はどこにも見当たらなかった。傷痕は残らないと聞いたが、早すぎる。と思って凝視していると、彼女は苦笑して言った。
「マイコエントル様、女性をそんなにじっと見るものではありませんわ。
侍女達が気をつかい顔や首筋は白粉で隠しております。気になっていらっしゃるのはこれでしょう。」
そう言って手袋を外して手を見せてくれた。
そこには傷痕が薄らとピンク色になっていた。
「よく見ないとわからないでしょう。だから気になさらなくていいと申しましたのよ。傷もなくなるのですから貴方が犠牲になる必要はありませんわ。貴方はただお仕事を全うされただけですもの。」
くすくすと笑いながらもこちらを気遣う彼女。
なんだか責任だけで結婚するそんな男に見られているように思えた。確かに責任という言葉に否定はできない。だが、あの日血を流しながら王子を守った姿やその後の俺を気遣う凛とした姿に彼女を好ましいと思ったのも事実だ。
そして、今の苦笑する彼女に俺は俺の意思で彼女と結婚しよう、いや結婚したいと思った。
「ルーリラ・ヒューナイト嬢。私と結婚してください。」
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