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2 婚約への疑問

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私の怪我は数日もすれば他の肌に比べて薄らとピンク色になっているだけでほとんど目立たなくなっていた。
きっとそんな深い傷ではなかったのだろう。だから気にしないでほしいと伝えたのにフェルマン様からはお見舞いの品が花と共に毎日贈られてきていた。
今は冬季休暇の為学園はお休みになっており、3日後の休暇明けには何事もなく学園に通うことができそうだ。



休暇明けの学園で久しぶりに会う友人に顔を見るなり挨拶もなしに言われた。

「左耳のピアス…ルーリラ、貴女いつの間に婚約したの?」

不満そうな顔の友人の視線は婚約者からいただいたピアスが着けられた私の左耳に向けられている。
この国では婚約すると男性側から贈られた1組のピアスを2人で分け一つずつ左耳につけるのだ。
左耳にだけついたピアスは婚約者がいる事を示す。
驚くのも無理がないだろう。
そういえば年末のパーティから色々な事が目まぐるしく起こり、しかも話せないことも多くてアイリスには何も話をしていなかった。
まあ、私自身も婚約した事をまだ実感できてないのかもしれない。

「おはよう。アイリス。会って1番がそれなの?
黙ってた訳ではなく婚約したのはつい最近なの。急に話が纏まって私もまだ実感がわいてないの。貴女に指摘されるまで忘れていた位よ。
お相手の方が今は忙しくてまだ婚約披露パーティすら決まっていないの。パーティの日程が決まったら招待状を出すから出席してくれると嬉しいわ。」

「おめでとう、で良いのかしら?」

急に決まる婚約なんて政略的なものがほとんどだ。だから、アイリスの複雑そうな顔もわかる。

「パーティはもちろん出席させていただくわ。それでお相手の方はどなたなの?」

好奇心を隠そうともしないアイリスに苦笑しながら当たり障りのないところだけを伝えた。

「貴女も知っている騎士団に勤めていらっしゃるフェルマン様よ。」

「えっ、それってあのマイコエントル伯爵家の…」

アイリスは信じられないと驚いた顔をしている。
騎士団は騎士を目指す男性は勿論、結婚相手を探す事も含めて若い女性の憧れの的だ。
誰が手柄を立てたとかの真面目な話から誰が素敵だとか誰が誰と付き合っているなど下世話な噂話も入ってくる。
アイリスも騎士団に憧れの人がいるようで私も何度か誘われて騎士団の公開試合を見に行っていた。
だから騎士団に詳しい彼女はフェルマン様が次男で家を継ぐことはなく平民になるのが分かっているのだ。きっと平民に嫁ぐ事になる私を心配してるのだろう。

「ええ。と言ってもフェルマン様はつい最近ドレン伯爵位を授爵されたところなの。」

その言葉でホッとした表情になった。彼女も伯爵令嬢として使用人に傅かれて生活している。平民の生活は想像すらできないのだ。
それでも次次に質問を口にしようとする友人に苦笑してしまう。
疑問が次から次へと湧き出てくるのだろう。私も彼女の立場ならそうなるだろう。
つい最近付けたばかりで馴染みのないの婚約の印のピアスを触りながら「詳しくはお昼ご飯を食べながら話すわ」と彼女からの質問をかわした。



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