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アンリエッタ視点
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寝室に入ると旦那様は私をそっとベッドへと下ろして覆いかぶさるような格好で語りかけた。
「ここまでしてわからない?」
近すぎる距離に顔を赤らめるが
「エリナさんの代わりですか?」
私を攫って娼館へと売り飛ばそうとした首謀者は旦那様の恋人のエリナだった。旦那様が最近私に構い自分を使用人扱いしだしたのは私がいるせいだと思い、私がいなくなれば元通り恋人に戻れると思って行動したらしい。
「ふふっ、まさか。僕は君を愛しているんだ。」
そうして触れるだけのキスをされた。
愛している?
「ですが…私たちは契約結婚ですよ。後、1ヶ月程すれば離婚するのです。」
「その契約は破棄だ。君とは別れない。」
考えてもみなかった。最近旦那様は私に優しいから嫌われてはいないだろう。だが、結婚を続行する意味がわからない。
「それとレオンは解雇する。」
「えっ。レオンは私の使用人です。いくら旦那様とはいえ勝手に辞めさせる事はさせません。」
レオンを辞めさせると言う言葉に反応する。なぜレオンを辞めさせるのか?
「駄目だ。いくら君の使用人だとしても夫として愛する妻の浮気相手を側に置くわけないだろう?」
「はぁ?浮気相手?旦那様でもあるまいし…」
思わず心の声が漏れた。勘違いにもほどがある。
「レオンには愛し愛される妻ナタリーがいます。浮気相手だなんてレオンにもナタリーにも失礼です。」
「そうか。でもレオンに妻がいても君はレオンの事が好きなんだろ?」
「レオンもナタリーも大好きです。2人とも私が最も信頼する使用人です。」
そうレオンもナタリーも家族よりも大切な存在。
「なら結婚を継続しても何の問題もないよね?」
そう言われてすぐに答えが出ない。
最初は政略結婚でも、契約結婚でもどちらでも構わないと思っていた。両親のようにお互いが必要な時に助け合いすれば愛などいらないと思っていた。
それと同時にお互いを大切に想い合うナタリー夫妻の姿にも憧れていた。
旦那様には恋人がいるから、契約が終了して市井で暮らせば私にもそんな人が現れるのではと思っていたのだ。結婚を継続したらどうなるのだろう。わからない。
戸惑いながらもでも…と言う言葉は旦那様の口の中に消えていった。
あれから何時間も寝室から出されないままに抱かれた。その最中に旦那様は結婚の継続を求められた。半ば意識が朦朧としている時に了承したのだ。
たた、身体を貪るだけではなく、優しく触れる手にわからなかったはずの愛情を感じたから。
視線を感じたのか意識が浮上した。目を開けると目の前に満面の笑みを浮かべる旦那様。
「おはよう、アンリエッタ。」
そう言いながら私の髪におでこに頬に唇にキスをする。
甘い。まるで市井で見かける憧れていた恋人達のようだ。
「そろそろ旦那様ではなくグレイと名前で呼んでくれないか?これから死ぬまで一生一緒なんだから。」
そうね。まだまだ旦那様のように愛を返せないかもしれないけれど、死ぬまで一緒に暮らせば同じくらい愛せるのかもしれない。
「ここまでしてわからない?」
近すぎる距離に顔を赤らめるが
「エリナさんの代わりですか?」
私を攫って娼館へと売り飛ばそうとした首謀者は旦那様の恋人のエリナだった。旦那様が最近私に構い自分を使用人扱いしだしたのは私がいるせいだと思い、私がいなくなれば元通り恋人に戻れると思って行動したらしい。
「ふふっ、まさか。僕は君を愛しているんだ。」
そうして触れるだけのキスをされた。
愛している?
「ですが…私たちは契約結婚ですよ。後、1ヶ月程すれば離婚するのです。」
「その契約は破棄だ。君とは別れない。」
考えてもみなかった。最近旦那様は私に優しいから嫌われてはいないだろう。だが、結婚を続行する意味がわからない。
「それとレオンは解雇する。」
「えっ。レオンは私の使用人です。いくら旦那様とはいえ勝手に辞めさせる事はさせません。」
レオンを辞めさせると言う言葉に反応する。なぜレオンを辞めさせるのか?
「駄目だ。いくら君の使用人だとしても夫として愛する妻の浮気相手を側に置くわけないだろう?」
「はぁ?浮気相手?旦那様でもあるまいし…」
思わず心の声が漏れた。勘違いにもほどがある。
「レオンには愛し愛される妻ナタリーがいます。浮気相手だなんてレオンにもナタリーにも失礼です。」
「そうか。でもレオンに妻がいても君はレオンの事が好きなんだろ?」
「レオンもナタリーも大好きです。2人とも私が最も信頼する使用人です。」
そうレオンもナタリーも家族よりも大切な存在。
「なら結婚を継続しても何の問題もないよね?」
そう言われてすぐに答えが出ない。
最初は政略結婚でも、契約結婚でもどちらでも構わないと思っていた。両親のようにお互いが必要な時に助け合いすれば愛などいらないと思っていた。
それと同時にお互いを大切に想い合うナタリー夫妻の姿にも憧れていた。
旦那様には恋人がいるから、契約が終了して市井で暮らせば私にもそんな人が現れるのではと思っていたのだ。結婚を継続したらどうなるのだろう。わからない。
戸惑いながらもでも…と言う言葉は旦那様の口の中に消えていった。
あれから何時間も寝室から出されないままに抱かれた。その最中に旦那様は結婚の継続を求められた。半ば意識が朦朧としている時に了承したのだ。
たた、身体を貪るだけではなく、優しく触れる手にわからなかったはずの愛情を感じたから。
視線を感じたのか意識が浮上した。目を開けると目の前に満面の笑みを浮かべる旦那様。
「おはよう、アンリエッタ。」
そう言いながら私の髪におでこに頬に唇にキスをする。
甘い。まるで市井で見かける憧れていた恋人達のようだ。
「そろそろ旦那様ではなくグレイと名前で呼んでくれないか?これから死ぬまで一生一緒なんだから。」
そうね。まだまだ旦那様のように愛を返せないかもしれないけれど、死ぬまで一緒に暮らせば同じくらい愛せるのかもしれない。
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