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アンリエッタ視点
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私、アンリエッタ・クラレンスは1年ほど前に婚約したグレイ・ドリオルから結婚を数日後に控えたある日「他に好きな人がいる」と告白された。
私と彼の婚約は
ドリオル伯爵家当主が伯爵家を継ぐことのできないグレイに婚姻と同時に自身が持つもう一つの爵位である子爵位を譲ろうと考えた。そこで年頃の娘のいる友人のクラレンス伯爵家に目をつけた。
クラレンス伯爵家は新たな事業を起こそうとしたが後ろ盾がないと色々な意味で無理だと諦めていた。
婚姻によりドリオル伯爵家が後見につく。まさに両家の思惑が一致した政略結婚だったのだ。
色々と事業もある程度進んでいて今更後ろ盾を失う訳にはいかない。
1年の間に婚約者に対し少しは友情というか家族愛的なものが芽生えていた。それがここにきてこれだ。
家族のことを考えると婚約解消できない。それならば
「私達の結婚は政略ですし、婚儀もあと5日となっており諸々の準備も済んでおり、今更結婚を取りやめにできないでしょう。
ですから1年間だけお付き合いください。私はその間に生活基盤を確立しますので、1年後離婚いたしましょう。」
1年ほどあれば実家の事業も目処が立つだろう。それに離婚後は市井に降りて暮らせるように準備する期間が必要だ。と思った。
産まれて嫁ぐまで政略結婚の相手が誰でも尽くす様にと育てられてきた。両親も政略結婚だが結婚後はお互い歩み寄っている。特別良くもないが悪くもない。私もそうなりたいと思っていた。ううんそうしようと思っていた。だけど相手に好きな人がいるなんて思ってもみなかった。
結婚して初夜を迎える。本来なら白い結婚が理想的なのはわかる。だが、私はここで女主人として1年間過ごさなければならない。使用人達にきちんと主人として見てもらうためには必要不可欠なのだ。
旦那様に初夜を決行していただいた。
これは旦那様達に対しての嫌がらせも入っている。恋人がいるのに恋人以外の人を抱くという事をさせるのだ。もちろん恋人もそれがわかる立場にいる。だってこの邸に恋人を連れてきているのだから。
その後は寝室を分けることなく過ごしていただいた。そしてこの婚姻の間は恋人と身体を繋げることはしないと約束していただいている。
結婚から2ヶ月ほどして、旦那様の執務室の隣にベッドを入れた休憩室が完成した。結婚する前、父の執務の大変な時期を見ていたから少しの時間で良いので体を休める場所を作ってあげたかったのだ。
恋人が同じ邸で暮らしていても接触できない旦那様にとって体だけでなく心も休める場所にして欲しいと思ったのも事実だ。
結婚してからは社交の講師を呼んで上級のマナーや社交界の事を学んだ。安心して離婚するために旦那様の地位を確立すると共に実家も売り込む。そのために色々な爵位や職業の方々と交流を持つ。
それと同時に離婚後の生活基盤を作るためにそれとなく色々なところから情報を得ていた。
学園の教えである『知識は武器になる』という言葉を信じて色々な分野の情報を集めていた。
その中でフェルン侯爵家の嫡男ハデル様がマイナーな作家を気に入っているのを知った。私もその事をお伝えしたら気に入られたようで何かと話しかけられるようになった。
その作家の作品が舞台化されるので一緒に見に行かないか?と誘われた。お断りしても話のわかるお仲間が欲しいらしくなかなか諦めてくださらない。
1年間の契約結婚だとはいえ今はクオンティオ子爵夫人だ。醜聞は避けたい。
とはいえ、ハデル様は次期フェルン侯爵。独身で見目も麗しいと結婚相手として人気だ。話をするだけで全てではないが性格も良いようだ。
まあ、私には関係ないが。
私と彼の婚約は
ドリオル伯爵家当主が伯爵家を継ぐことのできないグレイに婚姻と同時に自身が持つもう一つの爵位である子爵位を譲ろうと考えた。そこで年頃の娘のいる友人のクラレンス伯爵家に目をつけた。
クラレンス伯爵家は新たな事業を起こそうとしたが後ろ盾がないと色々な意味で無理だと諦めていた。
婚姻によりドリオル伯爵家が後見につく。まさに両家の思惑が一致した政略結婚だったのだ。
色々と事業もある程度進んでいて今更後ろ盾を失う訳にはいかない。
1年の間に婚約者に対し少しは友情というか家族愛的なものが芽生えていた。それがここにきてこれだ。
家族のことを考えると婚約解消できない。それならば
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ですから1年間だけお付き合いください。私はその間に生活基盤を確立しますので、1年後離婚いたしましょう。」
1年ほどあれば実家の事業も目処が立つだろう。それに離婚後は市井に降りて暮らせるように準備する期間が必要だ。と思った。
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旦那様に初夜を決行していただいた。
これは旦那様達に対しての嫌がらせも入っている。恋人がいるのに恋人以外の人を抱くという事をさせるのだ。もちろん恋人もそれがわかる立場にいる。だってこの邸に恋人を連れてきているのだから。
その後は寝室を分けることなく過ごしていただいた。そしてこの婚姻の間は恋人と身体を繋げることはしないと約束していただいている。
結婚から2ヶ月ほどして、旦那様の執務室の隣にベッドを入れた休憩室が完成した。結婚する前、父の執務の大変な時期を見ていたから少しの時間で良いので体を休める場所を作ってあげたかったのだ。
恋人が同じ邸で暮らしていても接触できない旦那様にとって体だけでなく心も休める場所にして欲しいと思ったのも事実だ。
結婚してからは社交の講師を呼んで上級のマナーや社交界の事を学んだ。安心して離婚するために旦那様の地位を確立すると共に実家も売り込む。そのために色々な爵位や職業の方々と交流を持つ。
それと同時に離婚後の生活基盤を作るためにそれとなく色々なところから情報を得ていた。
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その中でフェルン侯爵家の嫡男ハデル様がマイナーな作家を気に入っているのを知った。私もその事をお伝えしたら気に入られたようで何かと話しかけられるようになった。
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とはいえ、ハデル様は次期フェルン侯爵。独身で見目も麗しいと結婚相手として人気だ。話をするだけで全てではないが性格も良いようだ。
まあ、私には関係ないが。
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