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10 契約破棄
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いつかの夜会のように寝室にアンリエッタを連れていくと今度はそっとベッドの上におろした。
「ここまでしてわからない?」
覆いかぶさるような格好でアンリエッタの耳に優しげに語りかけるとアンリエッタは近すぎる距離に赤くなりながら
「エリナさんの代わりですか?」
ここまでしてわからないはずはないというのに
「ふふっ、まさか。僕は君を愛しているんだ。」
そうして触れるだけのキスをする。
「ですが…私たちは契約結婚ですよ。後、1ヶ月程すれば離婚するのです。」
「その契約は破棄だ。君とは別れない。」
アンリエッタは余程予想外だったのかキスをしても心ここに在らずだ。最近は以前と比べて態度も柔らかく自分を受け入れ始めていたと思ったのに。
「それとレオンは解雇する。」
「えっ。レオンは私の使用人です。いくら旦那様とはいえ勝手に辞めさせる事はさせません。」
レオンという言葉に反応するのは腹がたつ。しかも自分の側から離さない宣言だ。
「駄目だ。いくら君の使用人だとしても夫として愛する妻の浮気相手を側に置くわけないだろう?」
「はぁ?浮気相手?旦那様でもあるまいし…」
愛する妻の部分は華麗にスルーされてしまった。更には追い討ちをかけるように過去の自分への非難をされた。
飽きれた顔をしてこちらを見るアンリエッタからそっと視線を外す。
「レオンには愛し愛される妻ナタリーがいます。浮気相手だなんてレオンにもナタリーにも失礼です。」
「そうか。でもレオンに妻がいても君はレオンの事が好きなんだろ?」
レオンが妻帯者でほっとしつつも疑問を口にすれば
「レオンもナタリーも大好きです。2人とも私が最も信頼する使用人です。」
「なら結婚を継続しても何の問題もないよね?」
畳み掛けるように言う。迷っているのかアンリエッタはすぐに答えを出さない。
戸惑いながらもでも…と否定的な事を言う口を塞いだ。
あれから何時間抱いていたのか、太陽が沈み月が真上に昇る頃にはアンリエッタは結婚を継続する事を了承した。
疲れ果てて寝てしまったベッドに横たわるアンリエッタを抱きしめながら幸せを感じていると控えめにドアがノックされた。
ナタリーだった。部屋には入れず廊下で話を聞く。
「旦那様、アンリエッタ様はまだ本調子ではございません。ご無理をさせないでください。」
「ああ、わかっている。大事な妻だからね。」
ああ、なぜナタリーとレオンが気に食わないのかわかった。
「君もレオンも彼女の事を奥様と呼ばないのはなぜだ?」
ナタリーは一瞬迷い、軽く睨みつけるようにこちらを見て
「旦那様とは契約結婚で1年後別れると聞いております。なので奥様とはお呼びしません。」
やはりそうだったか。時々ナタリーから憎々しげに見られていたのは主人を思ってのことだったのか。
「それなら契約は破棄した。アンリエッタとは別れる事はないから今から奥様と呼ぶように。レオンにも伝えておいてくれ。
それからアンリエッタが起きたら食べれるように身体に優しいスープを用意しておいてくれ。」
ナタリーは納得していないようだが、諦めた表情をした後無表情でかしこまりましたと頭を下げて去っていった。
部屋に戻るとベッドに潜り込み、寝ているアンリエッタを抱きしめる。
もう離さない。誰が何を言おうとしようとアンリエッタは自分の妻だ。
アンリエッタが逃げようとするなら監禁も辞さないだろう己の執着に思わず笑った。
身動きがしてアンリエッタが目を覚ます。
目蓋が上がり理知的な瞳が見える。その瞳に映るのが自分である事に喜びを感じた。
「おはよう、アンリエッタ。」
髪におでこに頬に唇にキスをすると頬をバラ色に染めたアンリエッタが小さな声で返してくれた。
「おはようございます。旦那様。」
「まだ朝ではないからお腹が空いていないのならもう一眠りしたらどうだい?
それとそろそろ旦那様ではなくグレイと名前で呼んでくれないか?これから死ぬまで一生一緒なんだから。」
「ここまでしてわからない?」
覆いかぶさるような格好でアンリエッタの耳に優しげに語りかけるとアンリエッタは近すぎる距離に赤くなりながら
「エリナさんの代わりですか?」
ここまでしてわからないはずはないというのに
「ふふっ、まさか。僕は君を愛しているんだ。」
そうして触れるだけのキスをする。
「ですが…私たちは契約結婚ですよ。後、1ヶ月程すれば離婚するのです。」
「その契約は破棄だ。君とは別れない。」
アンリエッタは余程予想外だったのかキスをしても心ここに在らずだ。最近は以前と比べて態度も柔らかく自分を受け入れ始めていたと思ったのに。
「それとレオンは解雇する。」
「えっ。レオンは私の使用人です。いくら旦那様とはいえ勝手に辞めさせる事はさせません。」
レオンという言葉に反応するのは腹がたつ。しかも自分の側から離さない宣言だ。
「駄目だ。いくら君の使用人だとしても夫として愛する妻の浮気相手を側に置くわけないだろう?」
「はぁ?浮気相手?旦那様でもあるまいし…」
愛する妻の部分は華麗にスルーされてしまった。更には追い討ちをかけるように過去の自分への非難をされた。
飽きれた顔をしてこちらを見るアンリエッタからそっと視線を外す。
「レオンには愛し愛される妻ナタリーがいます。浮気相手だなんてレオンにもナタリーにも失礼です。」
「そうか。でもレオンに妻がいても君はレオンの事が好きなんだろ?」
レオンが妻帯者でほっとしつつも疑問を口にすれば
「レオンもナタリーも大好きです。2人とも私が最も信頼する使用人です。」
「なら結婚を継続しても何の問題もないよね?」
畳み掛けるように言う。迷っているのかアンリエッタはすぐに答えを出さない。
戸惑いながらもでも…と否定的な事を言う口を塞いだ。
あれから何時間抱いていたのか、太陽が沈み月が真上に昇る頃にはアンリエッタは結婚を継続する事を了承した。
疲れ果てて寝てしまったベッドに横たわるアンリエッタを抱きしめながら幸せを感じていると控えめにドアがノックされた。
ナタリーだった。部屋には入れず廊下で話を聞く。
「旦那様、アンリエッタ様はまだ本調子ではございません。ご無理をさせないでください。」
「ああ、わかっている。大事な妻だからね。」
ああ、なぜナタリーとレオンが気に食わないのかわかった。
「君もレオンも彼女の事を奥様と呼ばないのはなぜだ?」
ナタリーは一瞬迷い、軽く睨みつけるようにこちらを見て
「旦那様とは契約結婚で1年後別れると聞いております。なので奥様とはお呼びしません。」
やはりそうだったか。時々ナタリーから憎々しげに見られていたのは主人を思ってのことだったのか。
「それなら契約は破棄した。アンリエッタとは別れる事はないから今から奥様と呼ぶように。レオンにも伝えておいてくれ。
それからアンリエッタが起きたら食べれるように身体に優しいスープを用意しておいてくれ。」
ナタリーは納得していないようだが、諦めた表情をした後無表情でかしこまりましたと頭を下げて去っていった。
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もう離さない。誰が何を言おうとしようとアンリエッタは自分の妻だ。
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「おはよう、アンリエッタ。」
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「おはようございます。旦那様。」
「まだ朝ではないからお腹が空いていないのならもう一眠りしたらどうだい?
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