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8 グレイの変化
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あれから毎晩夫婦の寝室に行きアンリエッタを抱き潰す日々。アンリエッタの首元から全身に所有印をつけている。
「旦那様、4日後カイナル侯爵の夜会に奥様とご招待されております。」
「アンリエッタは体調が優れなくて欠席だ。」
本日の予定と共に来ている招待状の予定を告げるスティーブンに答えると無表情で返される。
「流石にそれはできません。今回の夜会は奥様をお連れするのがカイナル侯爵夫人のたっての希望ですので。」
チッと舌打ちがでた。アンリエッタは高位貴族の奥様方に人気があり、ぜひ奥様を伴って…と招待状を送ってくる。
高位貴族からの招待は断れないし、こんな良い機会は逃したくないのもある。
だが、胸元を大きく広げるデザインのドレスが流行っている今、キスマークだらけの身体は流行のドレスでは隠しきれない。アンリエッタを狙う男どもには牽制の意味で見せつけても良いが、女性相手にはそうもいかない。見せない流行遅れのドレスでは馬鹿にされてしまう。それもあって欠席させようとしているのに。
眉をしかめたスティーブンが恭しく頭を下げる。
「奥様と仲がよろしいのは良いのですが、社交シーズンですので見える場所はお控えください。」
慇懃無礼とはこのことか。
渋々肯く。まあ、見える位置に付けなければ良いだけだ。見えてしまうのはショールででも隠せば良い。
夜会に出かけるために玄関ロビーで待っていると
「お待たせしました。」
そう言って階段から降りてきたアンリエッタは自分の服と揃いのダークグリーンのドレスだ。
ドレスは首にドレスと同布のチョーカーがありそこから胸元にむかい薄手のシフォンが付いている。しかもシフォンに所々小さな刺繍があり、上手くキスマークが誤魔化されているが肌は透けて見えている。上手く流行をとりいれている。
このドレスは凛としているが色気が溢れている彼女にぴったりだ。
見せびらかしたい。誰にも見せたくない。相反する気持ちを持て余していると
「旦那様?」
はっとして間近に迫ったアンリエッタを見た。下から覗き込むように上目遣いで見つめられてつい抱き寄せてキスをしようとしていた。
「旦那様。夜会に遅れてしまいます。」
スティーブンの無粋な声で止められた。
すかさずナタリーがやってきて自分からアンリエッタを引き離し、少しも乱れていない髪の毛を手直しする。
ナタリーはここ最近は自分への警戒を露わにしている。
アンリエッタは自分の妻だ。彼女に向い笑顔で腕を出す。
「さあ、奥様参りましょう。」
夜会でアンリエッタのドレスは注目を集めた。肌を隠すような濃い色のシフォンではあるが近くに寄れば肌は透けて見えるのだ。
ただ肌を晒すだけよりよほど艶かしい。女性の羨望の眼差しもさることながら男性の視線を釘付けにした。
本人は気付いていないが。
会場で主催者に挨拶に行くとカイナル侯爵夫人が
「アンリエッタ。最近体調崩しているって聞いて心配していたの。元気そうで良かったわ。
貴女に会えるのを楽しみにしていたのよ。あちらにルモンド公爵夫人もお待ちよ。さあ行きましょう。」
そう言うとさっさとアンリエッタを連れて行ってしまった。
後に残されたカイナル侯爵が申し訳なさそうに
「妻は君の奥方がお気に入りでね。娘のように可愛がっているんだ。」
相手が侯爵でなければアンリエッタを側から離しはしないのだが。そんな事を考えていたのが顔に出たのか、
「大丈夫。妻が言っていただろう。ルモンド公爵夫人もいると。彼女がいるテーブルにそうそう近づける者はいないよ。特に男性は。」
しばらくカイナル侯爵と談笑していた。その間にも主催者の侯爵に挨拶に来た人たちを紹介されて、人脈を広げるとても有意義な時間になった。
「旦那様、4日後カイナル侯爵の夜会に奥様とご招待されております。」
「アンリエッタは体調が優れなくて欠席だ。」
本日の予定と共に来ている招待状の予定を告げるスティーブンに答えると無表情で返される。
「流石にそれはできません。今回の夜会は奥様をお連れするのがカイナル侯爵夫人のたっての希望ですので。」
チッと舌打ちがでた。アンリエッタは高位貴族の奥様方に人気があり、ぜひ奥様を伴って…と招待状を送ってくる。
高位貴族からの招待は断れないし、こんな良い機会は逃したくないのもある。
だが、胸元を大きく広げるデザインのドレスが流行っている今、キスマークだらけの身体は流行のドレスでは隠しきれない。アンリエッタを狙う男どもには牽制の意味で見せつけても良いが、女性相手にはそうもいかない。見せない流行遅れのドレスでは馬鹿にされてしまう。それもあって欠席させようとしているのに。
眉をしかめたスティーブンが恭しく頭を下げる。
「奥様と仲がよろしいのは良いのですが、社交シーズンですので見える場所はお控えください。」
慇懃無礼とはこのことか。
渋々肯く。まあ、見える位置に付けなければ良いだけだ。見えてしまうのはショールででも隠せば良い。
夜会に出かけるために玄関ロビーで待っていると
「お待たせしました。」
そう言って階段から降りてきたアンリエッタは自分の服と揃いのダークグリーンのドレスだ。
ドレスは首にドレスと同布のチョーカーがありそこから胸元にむかい薄手のシフォンが付いている。しかもシフォンに所々小さな刺繍があり、上手くキスマークが誤魔化されているが肌は透けて見えている。上手く流行をとりいれている。
このドレスは凛としているが色気が溢れている彼女にぴったりだ。
見せびらかしたい。誰にも見せたくない。相反する気持ちを持て余していると
「旦那様?」
はっとして間近に迫ったアンリエッタを見た。下から覗き込むように上目遣いで見つめられてつい抱き寄せてキスをしようとしていた。
「旦那様。夜会に遅れてしまいます。」
スティーブンの無粋な声で止められた。
すかさずナタリーがやってきて自分からアンリエッタを引き離し、少しも乱れていない髪の毛を手直しする。
ナタリーはここ最近は自分への警戒を露わにしている。
アンリエッタは自分の妻だ。彼女に向い笑顔で腕を出す。
「さあ、奥様参りましょう。」
夜会でアンリエッタのドレスは注目を集めた。肌を隠すような濃い色のシフォンではあるが近くに寄れば肌は透けて見えるのだ。
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本人は気付いていないが。
会場で主催者に挨拶に行くとカイナル侯爵夫人が
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貴女に会えるのを楽しみにしていたのよ。あちらにルモンド公爵夫人もお待ちよ。さあ行きましょう。」
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「妻は君の奥方がお気に入りでね。娘のように可愛がっているんだ。」
相手が侯爵でなければアンリエッタを側から離しはしないのだが。そんな事を考えていたのが顔に出たのか、
「大丈夫。妻が言っていただろう。ルモンド公爵夫人もいると。彼女がいるテーブルにそうそう近づける者はいないよ。特に男性は。」
しばらくカイナル侯爵と談笑していた。その間にも主催者の侯爵に挨拶に来た人たちを紹介されて、人脈を広げるとても有意義な時間になった。
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