【完結】政略結婚から契約結婚へ… 契約結婚は幸せになれますか?

里音

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3 初夜

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部屋は夫婦の寝室を挟み右側にグレイの私室、左側にアンリエッタの私室がある。夫婦の寝室にはどちらの部屋からも行き来出来る扉が付いている。

グレイはアンリエッタを自分の私室に連れて行き、そのままメイドにお茶を頼み用意が終わると人払いをした。
「アンリエッタ。君に言っておかなければならない事がある。」

そう切り出して自分の想い人を告げた。
アンリエッタは知っていたのか驚いた様子もなく淡々とそうですか。と言った。
その後少し思案して

「私は貴方様のことを旦那様、グレイ様、どちらで呼べばよろしいでしょうか?」

罵倒されることも非難されることもなく話題が変わったことに拍子抜けした。

「どちらでも貴女が好きな呼び方で。」

「では旦那様とお呼びします。1年間だけの夫婦なんですからきちんと線引きする為にも。」

結婚直後に離婚の話か?と少し不機嫌になったが、そんな事を無視するように

「旦那様。今日は初夜になります。お嫌でしょうが抱いていただけますか?」

アンリエッタは真顔で爆弾発言をした。
てっきり期間限定の契約結婚なのだから白い結婚を望むと思ったのだが…。
そんな考えは顔に出ていたのだろう。彼女は

「今日だけ我慢してください。婚姻関係は離婚するまでの1年間だけとはいえ使用人達は離婚をすることを知りません。なので婚姻の事実と私が女主人だと示さないといけません。その為には破瓜の印の付いたシーツが必要なのです。」



翌朝、目が覚めると横でアンリエッタが言った。

「旦那様、無理を聞いていただきありがとうございます。これだけは私だけではどうにもできなかったのです。今後は閨を共にしていただかなくて大丈夫です。」

気怠げで掠れた声で自分を労る言葉をかける彼女に何を言って良いのかわからない。

「いや、気にする事はない。それより喉に良さげな飲み物を持ってこさせよう。」

メイドを呼ぶとエリナが来た。なんとなく目が合わせられないままアンリエッタの飲み物を頼む。



アンリエッタの狙い通りなのか周りはきちんと私達2人を主夫妻として仕えている。
同じ邸に暮らしているのにまともに顔を合わせ会話をするのは食事の時だけ。夜は部屋を分けることはせず同じベッドで休むが肌を合わせることはしていない。

同じベッドで寝なくてもいいと言ったが、離婚するまで使用人に変に心配や気遣いをされたくないと言ってそのままになっている。

アンリエッタはベッドの端に申し訳程度で寝ている。同じベッドに入り離れているとはいえ甘い香りがアンリエッタからする。
アンリエッタと肌を合わせたのは初夜の一度だけだが、きめ細やかな肌から香る甘い香りと柔らかな身体。処女らしい初心な反応。
愛していなくてもついつい手が出そうになる。
一度肌を合わせているのだ。それならもう一度抱いても良いのではないか?今は夫婦なのだから。と思わずにはいられないが、何度も頭を振りその考えを追い出す。
自分から結婚を取りやめにしようとしたのだ。しかも好きな人が他にいると言い。
その恋人と接触できないからアンリエッタで。なんて厚顔無恥な事はできない。
そう必死に耐える。

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