【完結】政略結婚から契約結婚へ… 契約結婚は幸せになれますか?

里音

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クラレンス伯爵令嬢アンリエッタは婚儀を5日後に控えた婚約者グレイから爆弾発言を受けた。

「すまない。他に好きな人がいるんだ。このまま君と結婚することはできない。」

この国は一夫一妻制である。恋愛結婚が増えつつあるとはいえまだ政略結婚が主だ。ゆえに愛人を持つことに対して少し寛容だ。もちろん大っぴらにはできないがある程度身分も保障あり公然の秘密とされる。だからと言って離婚が認められていないわけでもない。ただ離婚はまだまだ男性上位の風習から女性側には不利となる。

アンリエッタは表情を曇らせ、少し考えてこう口にした。

「私達の結婚は政略ですし、婚儀もあと5日となっており諸々の準備も済んでおり、今更結婚を取りやめにできないでしょう。
ですから1年間だけお付き合いください。私はその間に生活基盤を確立しますので、1年後離婚いたしましょう。」

あまりの潔さにグレイは驚いた。
だが、アンリエッタからの提案はグレイにとって丁度良かった。
婚約してから約1年、婚儀まで数日しかないこの時に告げる話ではないことは承知していた。アンリエッタのことを知り好きになれると思っていた。そう思っていた。だが、愛しの彼女は自邸のメイドとして常に側にいるのだ。ついつい目で追い手を伸ばせば触れられる距離に、人目を避けてのスリリングな逢瀬に諦めるというのは難しかった。

「わかった。ではこのまま進めさせてもらおう。条件があれば出来る限り受け入れよう。」

自分の身勝手さにうしろめたい気持ちから逃げるように言った。
アンリエッタは少し考え込んでから

「結婚による結びつきをなくさないために円満離婚が前提となります。なのでパーティなど外での夫婦関係は不穏に見えない程度に努力してください。それと結婚後1年間は申し訳ありませんが、お好きな方との身体的接触はお控えください。もし、お相手にお子ができるような事がありましたら円満離婚は難しくなりますので。円満だと周知徹底させたいので申し訳ないのですが離婚後半年から1年は再婚をお控えください。」

そうしてクラレンス伯爵令嬢アンリエッタとドリオル伯爵子息グレイの政略結婚取りやめ契約結婚が決まったのだ。



ドリオル伯爵家当主が伯爵家を継ぐことのできないグレイに婚姻と同時に自身が持つもう一つの爵位である子爵位を譲ろうと考えた。そこで友人でもあるクラレンス伯爵家に着目した。クラレンス伯爵家には年頃の娘アンリエッタがいた。
クラレンス伯爵家は新たな事業を起こそうとしたが後ろ盾がないと色々な意味で無理だと諦めていた。
婚姻によりドリオル伯爵家が後見に着く。まさに両家の思惑が一致した政略結婚だ。
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