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2 アーノルド視点
しおりを挟む残されたアーノルドは呆然としてしまった。
両親から無理につけられた婚約者は貧乏伯爵家の令嬢だった。公爵家の自分とはあまりにかけ離れた相手なので相手が自分のことを好いていて仕方なく婚約することになった。と勘違いしていた。
彼女の容姿は整っており性格は余り出過ぎず穏やかで優しかった。家柄は置いといて、まあ彼女が婚約者でも良いか?程度には思っていた。
何より彼女の家は伯爵家。おまけに公爵家に恩があるとのことで自分が優位に立つことができる相手だった。
彼女は婚約してから公爵家の婚約者にふさわしいマナーを含めた勉強を強要されていた。更には学園での自分の監視、矯正を両親から任されていたようだ。
それを一切知らされていなかった僕は控え目だった彼女が自分の行動にいちいち口を出すことに嫌気が差してきていた。
家では兄が公爵家を継ぎ自分は母親の持っていた格下の伯爵位を継ぐ事が決まっている。自分の婚約者が貧乏伯爵令嬢だということや結婚したら伯爵位になる事もあり、公爵家子息としての立ち振る舞いや勉強はどうでもよくなっていた。
その時、悪い友人に誘われた行動で鬱屈していたものがなくなるような気がした。
それからはエリートコースから外れても気にしなくなった。ゆくゆくは公爵ではなく伯爵なのだ。エリートであり続ける意味がない。それなりでいいのだ。
その度に婚約者のマリエールが行動を諫める小言を言いにきた。
きっと公爵家子息のエリートの自分しか見ていないのだろう。当てが外れたのか?そう思っていた。小言は言われれば鬱陶しいと思うが、言われなければなんとなく見捨てられた気がしていたのも事実だ。
そんな時留学してきたデミトア国の侯爵令嬢ミーアと仲良くなった。
ミーアは妖艶な美人でみんなが注目している。そんな彼女が僕を立ててくれるし、何をしても否定されない。気分が良かった。
僕は段々ミーアに惹かれていった。
そんな時
「アーノルド様。ご自分の行動を鑑みてください。」
最近、彼女との逢瀬のために授業を抜け出していることに対して婚約者のマリエールがまた小言を言いにきた。
「たかだか伯爵家の、しかも名前だけの婚約者のくせに僕の行動に口を出すな。君といるより彼女といる方がどれだけ安らげるか。どうして君が僕の婚約者なんだ?君さえいなければ彼女と婚約出来ただろうに。とんだ貧乏くじだ。」
彼女は傷ついたような表情をしたようだが、さっと表情を変えた。
「申し訳ごさいません。ですがマエスト家の方々からも言われておりますので…。」
「お前は僕の婚約者なのに僕の行動を家族に密告しているのか?
そんな卑しいお前とは婚約者だなんて。婚約破棄だ。」
家から監視がついているのか?それに従っているのか?頭にきて婚約破棄を口にした。
彼女の家は公爵家に恩があり逆らえないのだ。このくらい言っても大丈夫だろう。そんな気持ちがあった。なのに彼女は
「婚約破棄承知いたしました。」
それだけ口にすると一礼して僕の前からいなくなった。
あまりにあっさりとした彼女の態度に呆然としてしまったが僕が何も言わなければ婚約破棄などできないだろう。しばらくは小言も言われないで快適に過ごせると思っていた。
しばらくして両親から
「パール伯爵令嬢との婚約は解消した。彼女はお前には勿体ないほどの優秀な女性だったのに…。お前には失望した。ノスタル伯爵位は卒業後すぐにやるからお前は好きにするが良い。ただしマエスト公爵家に迷惑はかけるな。」
と言われた。
事実上の縁切りだ。どうしてこうなった。
でも、僕にはミーアがいる。ミーアに求婚した。
ミーアは喜んでくれた。結婚の話や婚姻後の話をするとミーアの態度が急変した。
「アーノルド。貴方伯爵になるの?マエスト公爵家は?」
「マエスト公爵家は兄が継ぎ、僕は卒業後ノスタル伯爵になる。君は侯爵だから今よりは少し不自由になるかもしれないが我慢してくれ。」
伯爵位だとて学園を卒業したら王宮で文官になることも決まっている。生活レベルは今よりは落ちるが愛し合っているのだから関係ないだろう。
「アーノルド。婚約は無かったことにして頂戴。ああ、正式に婚約してなくて良かったわ。
わたくしは貴方が公爵子息だから付き合ってきたの。伯爵になるだなんて、ましてや王宮勤めの文官の妻になるなんてごめんだわ。さようなら。もう声もかけないで。」
そう言い捨てて去っていった。
デミトア国は選民意識の高い国だ。だが、ミーアがそこまでだとは思ってもみなかった。
よく見れば、クラスメイトに対しても高位貴族には優しいが下位貴族には冷たく当たっている。
恋に目がくらみ見えてなかったのだろう。
両親からも恋人からも捨てられて自棄になっていた。
そんな時元婚約者のマリエールを見つけた。
そうだマリエールと婚約を結び直せば両親も元のようになる。そう単純に考えてしまっていた。
飛び出した時マリエールはエストリア伯爵子息のグレンに求婚されていた。
「結婚はまだ考えられませんが…」
マリエールの言葉にかっとなった。
「待て、何を言っている。マリエールは僕の婚約者だ。」
マリエールはきょとんとした表情を浮かべ
「マエスト様。何を仰っているのですか?私は貴方と婚約解消いたしましたのでもう何も関係のない他人ですわ。呼び捨てなどおやめくださいませ。迷惑です。」
「婚約破棄の事を怒っているのか?ミーアの事は悪かった。もう済んだ事だ。
婚約を再度結び直せば良いだろう。お前もそれを望んでいるのだろう。」
以前はアーノルド様と呼んでいたのに家名呼びだなんて他人行儀だ。ミーアと一緒で公爵子息としてしか見ていなかったとしても今の自分はノスタル伯爵。相手と同じ伯爵だ。それなら実家が力のある公爵家の自分と婚約を結びたいと思うはずだ。
「私と貴方との婚約は元々政略です。しかも恩のあるマエスト公爵家からの打診でしたので断れなかっただけです。その経緯はご存知のはずです。
婚約が解消され、恩も貸し借りもなくなり再度婚約する理由もありません。なので婚約はお断りします。」
「何っ?お前は僕のことを好いていたのだろう。両親もお前のことを僕の婚約者に相応しいと認めていたんだ。これ以上ない婚約ではないか。
なんだ、恥ずかしがっているのか?」
かっとして言い出したが、冷静になればマリエールは恥ずかしがっているのだろうと思い至り余裕が出てきた。なのに彼女は厳しい表情で
「婚約を結び直す事は絶対ありません。今まで私が言ってきた事が全てです。もう一度ご忠告させていただきますわ。ご自分の行動を鑑みてください。それから貴方へのエールとして、ご自分の行動を、言動を反省したら周りをよく見てください。」
そう言って一礼した彼女をグレンがエスコートしてその場を離れて行くのをボンヤリと見つめていた。
僕は彼女を婚約者として出席する夜会以外でエスコートすることなどなかった。なのでエスコートされて去って行く彼女のあの笑顔は見たことがない。
彼女が公爵家に大恩がある伯爵家の娘だからと下に見ていた。そういえば婚約者だったのに2人で出掛けてる事もなく贈り物さえしていなかった。
そんな俺の側には誰もいない。
両親から無理につけられた婚約者は貧乏伯爵家の令嬢だった。公爵家の自分とはあまりにかけ離れた相手なので相手が自分のことを好いていて仕方なく婚約することになった。と勘違いしていた。
彼女の容姿は整っており性格は余り出過ぎず穏やかで優しかった。家柄は置いといて、まあ彼女が婚約者でも良いか?程度には思っていた。
何より彼女の家は伯爵家。おまけに公爵家に恩があるとのことで自分が優位に立つことができる相手だった。
彼女は婚約してから公爵家の婚約者にふさわしいマナーを含めた勉強を強要されていた。更には学園での自分の監視、矯正を両親から任されていたようだ。
それを一切知らされていなかった僕は控え目だった彼女が自分の行動にいちいち口を出すことに嫌気が差してきていた。
家では兄が公爵家を継ぎ自分は母親の持っていた格下の伯爵位を継ぐ事が決まっている。自分の婚約者が貧乏伯爵令嬢だということや結婚したら伯爵位になる事もあり、公爵家子息としての立ち振る舞いや勉強はどうでもよくなっていた。
その時、悪い友人に誘われた行動で鬱屈していたものがなくなるような気がした。
それからはエリートコースから外れても気にしなくなった。ゆくゆくは公爵ではなく伯爵なのだ。エリートであり続ける意味がない。それなりでいいのだ。
その度に婚約者のマリエールが行動を諫める小言を言いにきた。
きっと公爵家子息のエリートの自分しか見ていないのだろう。当てが外れたのか?そう思っていた。小言は言われれば鬱陶しいと思うが、言われなければなんとなく見捨てられた気がしていたのも事実だ。
そんな時留学してきたデミトア国の侯爵令嬢ミーアと仲良くなった。
ミーアは妖艶な美人でみんなが注目している。そんな彼女が僕を立ててくれるし、何をしても否定されない。気分が良かった。
僕は段々ミーアに惹かれていった。
そんな時
「アーノルド様。ご自分の行動を鑑みてください。」
最近、彼女との逢瀬のために授業を抜け出していることに対して婚約者のマリエールがまた小言を言いにきた。
「たかだか伯爵家の、しかも名前だけの婚約者のくせに僕の行動に口を出すな。君といるより彼女といる方がどれだけ安らげるか。どうして君が僕の婚約者なんだ?君さえいなければ彼女と婚約出来ただろうに。とんだ貧乏くじだ。」
彼女は傷ついたような表情をしたようだが、さっと表情を変えた。
「申し訳ごさいません。ですがマエスト家の方々からも言われておりますので…。」
「お前は僕の婚約者なのに僕の行動を家族に密告しているのか?
そんな卑しいお前とは婚約者だなんて。婚約破棄だ。」
家から監視がついているのか?それに従っているのか?頭にきて婚約破棄を口にした。
彼女の家は公爵家に恩があり逆らえないのだ。このくらい言っても大丈夫だろう。そんな気持ちがあった。なのに彼女は
「婚約破棄承知いたしました。」
それだけ口にすると一礼して僕の前からいなくなった。
あまりにあっさりとした彼女の態度に呆然としてしまったが僕が何も言わなければ婚約破棄などできないだろう。しばらくは小言も言われないで快適に過ごせると思っていた。
しばらくして両親から
「パール伯爵令嬢との婚約は解消した。彼女はお前には勿体ないほどの優秀な女性だったのに…。お前には失望した。ノスタル伯爵位は卒業後すぐにやるからお前は好きにするが良い。ただしマエスト公爵家に迷惑はかけるな。」
と言われた。
事実上の縁切りだ。どうしてこうなった。
でも、僕にはミーアがいる。ミーアに求婚した。
ミーアは喜んでくれた。結婚の話や婚姻後の話をするとミーアの態度が急変した。
「アーノルド。貴方伯爵になるの?マエスト公爵家は?」
「マエスト公爵家は兄が継ぎ、僕は卒業後ノスタル伯爵になる。君は侯爵だから今よりは少し不自由になるかもしれないが我慢してくれ。」
伯爵位だとて学園を卒業したら王宮で文官になることも決まっている。生活レベルは今よりは落ちるが愛し合っているのだから関係ないだろう。
「アーノルド。婚約は無かったことにして頂戴。ああ、正式に婚約してなくて良かったわ。
わたくしは貴方が公爵子息だから付き合ってきたの。伯爵になるだなんて、ましてや王宮勤めの文官の妻になるなんてごめんだわ。さようなら。もう声もかけないで。」
そう言い捨てて去っていった。
デミトア国は選民意識の高い国だ。だが、ミーアがそこまでだとは思ってもみなかった。
よく見れば、クラスメイトに対しても高位貴族には優しいが下位貴族には冷たく当たっている。
恋に目がくらみ見えてなかったのだろう。
両親からも恋人からも捨てられて自棄になっていた。
そんな時元婚約者のマリエールを見つけた。
そうだマリエールと婚約を結び直せば両親も元のようになる。そう単純に考えてしまっていた。
飛び出した時マリエールはエストリア伯爵子息のグレンに求婚されていた。
「結婚はまだ考えられませんが…」
マリエールの言葉にかっとなった。
「待て、何を言っている。マリエールは僕の婚約者だ。」
マリエールはきょとんとした表情を浮かべ
「マエスト様。何を仰っているのですか?私は貴方と婚約解消いたしましたのでもう何も関係のない他人ですわ。呼び捨てなどおやめくださいませ。迷惑です。」
「婚約破棄の事を怒っているのか?ミーアの事は悪かった。もう済んだ事だ。
婚約を再度結び直せば良いだろう。お前もそれを望んでいるのだろう。」
以前はアーノルド様と呼んでいたのに家名呼びだなんて他人行儀だ。ミーアと一緒で公爵子息としてしか見ていなかったとしても今の自分はノスタル伯爵。相手と同じ伯爵だ。それなら実家が力のある公爵家の自分と婚約を結びたいと思うはずだ。
「私と貴方との婚約は元々政略です。しかも恩のあるマエスト公爵家からの打診でしたので断れなかっただけです。その経緯はご存知のはずです。
婚約が解消され、恩も貸し借りもなくなり再度婚約する理由もありません。なので婚約はお断りします。」
「何っ?お前は僕のことを好いていたのだろう。両親もお前のことを僕の婚約者に相応しいと認めていたんだ。これ以上ない婚約ではないか。
なんだ、恥ずかしがっているのか?」
かっとして言い出したが、冷静になればマリエールは恥ずかしがっているのだろうと思い至り余裕が出てきた。なのに彼女は厳しい表情で
「婚約を結び直す事は絶対ありません。今まで私が言ってきた事が全てです。もう一度ご忠告させていただきますわ。ご自分の行動を鑑みてください。それから貴方へのエールとして、ご自分の行動を、言動を反省したら周りをよく見てください。」
そう言って一礼した彼女をグレンがエスコートしてその場を離れて行くのをボンヤリと見つめていた。
僕は彼女を婚約者として出席する夜会以外でエスコートすることなどなかった。なのでエスコートされて去って行く彼女のあの笑顔は見たことがない。
彼女が公爵家に大恩がある伯爵家の娘だからと下に見ていた。そういえば婚約者だったのに2人で出掛けてる事もなく贈り物さえしていなかった。
そんな俺の側には誰もいない。
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