【完結】これじゃあ、どちらが悪役かわかりません!

里音

文字の大きさ
上 下
3 / 7

シリル視点2

しおりを挟む
あれからもオリビアは体調不良だとかで学園に来ていない。長期休学届けが出ている。


その後グレイテス伯爵家から婚約を解消したいと言われたが、オリビアとの婚約は今は保留になっている。
この婚約は王家からの打診で決まったのであり、今更臣下のグレイテス伯爵から解消を申し出られてもそう易々と受け入れるのは王家としての威厳を潰される、オリビアには妃教育など様々な事を強要してきた、そしてその教育に関する費用等の件で揉めているのが理由だ。

父である国王から婚約解消について意見を聞かれた。
この婚約は王家からの打診であったこと。それは政略結婚の意味合いが深い。だけど、婚約から交流を持ち微かな恋心さえあったのだ。自惚れでなければお互いに。

それでも彼女の行動に腹を立て、彼女に会いに行くまでの自分は解消する気だった。だが、オリビアから信頼していないとはっきりと言われて腹が立っているが、あの時の言葉とあの何もかも諦め俺を拒絶した様な顔が気になり解消したいと言えなかった。



毎日悶々としながら学園に通う。オリビアはあれからも学園を休んでいるが、リュエルは相変わらず側にいる。階段から落ちた時の怪我は見た目より軽かったのか痕も残らずすっかり良くなったようだ。

あれ以降オリビアと婚約破棄して自分と新たに婚約を結ばないかとグイグイ迫ってくる。
友人として接していた時は良かったが、こんなにグイグイと来られると辟易してしまい、少し距離を置くことにした。


するとまた、いじめにあっていると言ってきた。
侯爵令嬢のリュエルがこんなに頻繁にいじめに合うなんておかしいと思い始めた。それでいじめの首謀者に心当たりはないかと聞けば、オリビアだと平然と言う。オリビアはあれからずっと学園を休んでいるというのに。
無実だと言っていたオリビアの言葉は正しかったのか。

「リュエル嬢。相手は見たのかい?」

確かめたくてそう問う。するとリュエルは平然と答えた。

「はっきりと見ました。オリビア様でしたわ。」

リュエルが嘘を言っていたんだ。いじめていないと言うオリビアの言葉は本当だったのだ。

「リュエル嬢。オリビアはここのところずっと学園を休んでいる。本当に見たのかい?」

不安そうに目をキョロキョロさせながら

「オリビア様だと思ったのだけれど……きっと学園を休んでいないことにして隠れて学園に来ていていじめをしてるのよ。そうすればオリビア様も言い逃れできますもの。」

ああ、俺は騙されていたんだ。
気分が悪くなりリュエル達から離れ教室を出た。
教室の扉を閉め廊下に出たがどうするべきか悩みその場から動く事は出来なかった。
するとリュエルの甲高い声が聞こえてきた。

「オリビアが学園を休んでいるのは本当なの?どうしてわたくしにそれを伝えないの?シリル様に疑いを持たれてしまったじゃない。仕方ないわオリビアに似た生徒を探し出して来なさい。それと、次からはオリビアに唆された友人がいじめをしているという噂を流すのよ。
あれだけしてやっと婚約辞退に動き出したのよ。本当に伯爵家ともなると鈍感なんだから。」

あれだけしても……それは一体なんのことなんだ。そう思って聞いていると

「ですがリュエル様。オリビア様を階段から突き落としたのはやりすぎだったのでは?密かに調べさせたところ、かなりの怪我をしたと聞いております。」

「うふふっ。そうね。流石にちょっとやりすぎたかしら?でも怖がって学園に来てないのでしょう。このまま引きこもりになればシリル様の婚約者に相応しくないと婚約は解消されるでしょう?どちらにしても私が次の婚約者よ。」

そんな声と共に高笑いが聞こえた。
背後から頭を殴られたようだ。全てリュエルに騙されていたのか?

足音を立てずにその場を去り、信頼のおける者に今回のいじめの事を調べさせた。

それによるとリュエルはいじめにあっておらず、逆にオリビアがリュエル達にいじめられていた。
いじめられていた事をオリビアは吹聴することもなく、黙って耐えていたようだ。

その頃の俺は変な正義感でいじめられている婚約者ではなく本当のいじめの首謀者であるリュエルを側に置いて守っているつもりだったのだ。そんな俺に言えるわけない。

そして俺に問い詰められて無実を訴えたが信じてもらえなかった。
1番信用して欲しい相手に疑われているのだから、婚約を解消しようとするのもわかる。

オリビアを追い詰めたのはリュエルだけではない。俺もだ。情けない。婚約者として俺こそが彼女を守らなければならないのに。まず誰よりも彼女の言い分を信じなければならなかったのに。

今更謝ったところで許してもらえないかもしれない。
せめてリュエルの仕打ちを明らかにして彼女の名誉を回復させて、何の憂いもなく学園に通ってもらいたい。


それから自分でもオリビアの周りを調査した。
結論はオリビアはいじめにあっていたとオリビアの友人が詳しく教えてくれた。
最初はリュエルとその取り巻きに呼び出されて悪口を言われ婚約を解消するように迫られていたそうだ。その後は彼女の物を隠したり、壊したりしていた。これは教師陣にも確認している。

それでも首を縦に振らない彼女に対してわざとぶつかったり、足を引っ掛けたり、背後から押したりと行動がエスカレートしたそうだ。

時には手に飲み物を持って故意にぶつかり飲み物をかけたりもしていたそうだ。
友人の話によるとオリビアはいじめの相手が自分より身分の高い令嬢とその取り巻きなので泣き寝入りしかなかったそうだ。

しかも友人たちに口外しないように口止めしていたのだ。
友人たちがなぜかと問えば、相手は侯爵令嬢そして本来なら婚約者になるはずだったのだ。オリビア自分が王子の婚約者として相応しくない。そう考えるリュエルの気持ちもわかる。こんなことで彼女の気が済むのなら……そっとしておいて欲しい。そう言っていたのだ。

だが、そのままにしておけない。オリビアは階段から突き落とされたのだ。運が悪ければ死んでいたかもしれない大怪我をしていたのだ。

もちろんオリビアからは何も言わない。学園には体調不良で長期休養として休学届けを出している。
グレイテス伯爵邸の使用人に何度も尋ね、やっとオリビアが全身の打撲と擦り傷、右手首と右足の骨折と聞いた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

完璧令嬢が仮面を外す時

編端みどり
恋愛
※本編完結、番外編を更新中です。 冷たいけど完璧。それが王太子の婚約者であるマーガレットの評価。 ある日、婚約者の王太子に好きな人ができたから婚約を解消して欲しいと頼まれたマーガレットは、神妙に頷きながら内心ガッツポーズをしていた。 王太子は優しすぎて、マーガレットの好みではなかったからだ。 婚約を解消するには長い道のりが必要だが、自分を愛してくれない男と結婚するより良い。そう思っていたマーガレットに、身内枠だと思っていた男がストレートに告白してきた。 実はマーガレットは、恋愛小説が大好きだった。憧れていたが自分には無関係だと思っていた甘いシチュエーションにキャパオーバーするマーガレットと、意地悪そうな笑みを浮かべながら微笑む男。 彼はマーガレットの知らない所で、様々な策を練っていた。 マーガレットは彼の仕掛けた策を解明できるのか? 全24話 ※話数の番号ずれてました。教えて頂きありがとうございます! ※アルファポリス様と、カクヨム様に投稿しています。

わたしを追い出した人達が、今更何の御用ですか?

柚木ゆず
恋愛
 ランファーズ子爵令嬢、エミリー。彼女は我が儘な妹マリオンとマリオンを溺愛する両親の理不尽な怒りを買い、お屋敷から追い出されてしまいました。  自分の思い通りになってマリオンは喜び、両親はそんなマリオンを見て嬉しそうにしていましたが――。  マリオン達は、まだ知りません。  それから僅か1か月後に、エミリーの追放を激しく後悔する羽目になることを。お屋敷に戻って来て欲しいと、エミリーに懇願しないといけなくなってしまうことを――。

婚約破棄だと言われたので喜んでいたら嘘だと言われました。冗談でしょ?

リオール
恋愛
いつも婚約者のそばには女性の影。私のことを放置する婚約者に用はない。 そう思っていたら婚約破棄だと言われました。 やったね!と喜んでたら嘘だと言われてしまった。冗談でしょ?

婚約破棄って、貴方誰ですか?

やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。 何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。 「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」

駆け落ちから四年後、元婚約者が戻ってきたんですが

影茸
恋愛
 私、マルシアの婚約者である伯爵令息シャルルは、結婚を前にして駆け落ちした。  それも、見知らぬ平民の女性と。  その結果、伯爵家は大いに混乱し、私は婚約者を失ったことを悲しむまもなく、動き回ることになる。  そして四年後、ようやく伯爵家を前以上に栄えさせることに成功する。  ……駆け落ちしたシャルルが、女性と共に現れたのはその時だった。

王命って何ですか?

まるまる⭐️
恋愛
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

元婚約者は入れ替わった姉を罵倒していたことを知りません

ルイス
恋愛
有名な貴族学院の卒業パーティーで婚約破棄をされたのは、伯爵令嬢のミシェル・ロートレックだ。 婚約破棄をした相手は侯爵令息のディアス・カンタールだ。ディアスは別の女性と婚約するからと言う身勝手な理由で婚約破棄を言い渡したのだった。 その後、ミシェルは双子の姉であるシリアに全てを話すことになる。 怒りを覚えたシリアはミシェルに自分と入れ替わってディアスに近づく作戦を打ち明けるのだった。 さて……ディアスは出会った彼女を妹のミシェルと間違えてしまい、罵倒三昧になるのだがシリアは王子殿下と婚約している事実を彼は知らなかった……。

結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。ありがとうございます。

黒田悠月
恋愛
結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。 とっても嬉しいです。ありがとうございます!

処理中です...