【完結】これじゃあ、どちらが悪役かわかりません!

里音

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始まり

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この国の第一王子シリル・ブラック。その婚約者が私、オリビア・グレイテス。グレイテス伯爵家の長女。

この婚約はお互いが10歳の時に王家からの打診で決まりそれから徐々に距離を縮めていった。それが今年になってからなんだかおかしくなってきた。
それは、学園でピンク侯爵家の令嬢リュエル様が私達の前に現れたからだ。



本来第一王子よシリルと侯爵令嬢のリュエルが婚約する『出来レース』の顔合わせのお茶会があった。

隣国で流行病にかかったリュエルはそのまま療養し、顔合わせのお茶会までに帰ってくるはずだった。そのお茶会は後日行われるシリル10歳の誕生日祝いと同時に行われる婚約者発表のためのもので時期をずらすことは困難だったのだ。

そのお茶会にリュエルは隣国から帰国せずに欠席したため顔合わせが出来ず、急遽オリビアがシリルの婚約者となった。

シリルの婚約者から外れたリュエルは病気は早くに治っていたが、5年後学園入学に合わせて帰国した。


オリビアとシリルの関係はお互いを好意的に思ってはいるが、まだ愛ではない。
そこにリュエルが入ってきた。もちろん学園に通う者たちはシリルの

^_^婚約者はオリビアだと認識している。
だが、事前にリュエルが婚約者の最有力候補であったことは表立って言わないが上位貴族を中心に知られており、婚約者選びのスタートラインにいなかっただけで今でもシリルの婚約者に一番ふさわしいのは彼女だと、いや家柄的にも伯爵令嬢のオリビアではなく侯爵令嬢のリュエルを婚約者に変えても良いのではないか?と思っている者が多いのだ。

もちろんオリビアも頭では同じ事を考えるが、婚約者となって5年の間にシリルに対して少なからず好意を抱いている。このまま何もなかったようにはしたくない。シリルも同じ想いだと思いたい。


学園に入りオリビアはシリルとクラスも違うこともあり顔を合わせることも少なく噂話でシリルとリュエルが親密な関係だと聞いた。

移動の際にシリルとリュエルが仲睦まじく顔を近づけ内緒話をしているのを見たり、友人というには近すぎる距離で2人が腕を組み歩くのを見かけた。
婚約者であるオリビアとシリルはそんな距離感で行動したことはない。

2人の様子と周りから聞かされるもあり、オリビアはシリルからの婚約解消もあり得ると思いはじめた。
それと共に早い段階からオリビアはいじめを受けはじめていた。
始めは軽い口撃だった。

「シリル様の婚約者だからといって良い気になっているんじゃないわよ」
(良い気になんてなってませんから)

「伯爵令嬢の貴女がどうやって侯爵令嬢のリュエル様を押し除けてシリル様の婚約者に収まってるのよ」
(押し除けてませんし、どうして私だったのかこちらが聞きたいです)

「どんな手を使ったのよ。身体かしら?」
(身体なんて使ってませんし、使ったとしてもシリル様は見向きもしないでしょう?もし使ってたとしてシリル様がそれで騙されると思っているならそれこそシリル様に不敬です)

心の中で色々と思っていても何も言い返せません。相手が侯爵令嬢とその取り巻きなんですから…。
このままシリル様と婚姻が済めば王太子妃となり私の方が身分は上になるが、今は第一王子の婚約者とはいえ伯爵令嬢ですからね。

口撃から始まり最近では持ち物を隠されたり、壊されたり、捨てられたりした。

隠されるのは授業に必要な教科書だったり、文房具だったりで授業に支障をきたす。先生方も最初は私に注意をしていたが、だんだん何も言われなくなった。呆れられたのかいじめがあるのがわかったのか。いじめだと分かっていても事なかれ主義なのだろう何も言われない。

なくなる度に新しく教科書や文房具を買ったりとキリがない。対策として学園に大事なものは持ち込まない、常に持ち歩く、必要なものは持ち込み持ち帰るようにした。

そうすると今度はわざとぶつかられたり背後から押されたり足を引っ掛けられたりする。
押されたり足を引っ掛けれたりは避けきれなくて転んでしまい毎日擦り傷やあざが絶えない。大きな怪我がないのが幸いだ。

あとはすれ違いざまに悪口や私から婚約解消しろと言われる。悪意を持った事実無根の噂を流されたりもした。シリル様との婚約がなくならないとこのいじめがずっと続くのだろう。

この婚約は王家からの申し入れであり、伯爵家から解消を申し立てるなんて不敬にあたり出来るわけない。もし申し立て出来る立場だとしても自分からは言い出したくない。
それだからいつまで経っても婚約は続行していて私へのいじめも止むことがない。

リュエル様は私よりシリル様と仲が良いのだから、私をいじめてないでシリル様に泣きつけば良いのだ。「シリル様から婚約解消をしてほしい」と、今のシリル様はリュエル様を気に入っているようし、王家からの打診だったとしても本来ならリュエル様が婚約者になるはずだったのだから婚約を解消するのは容易だろう。


悪意を持った噂を流されているが、更に追い討ちをかけるように、噂の一つのいじめは婚約者シリル様の愛情を得るリュエル様が憎いとかで、加害者は私で被害者はリュエル様になっているらしい。

シリル様のそばにいるリュエル様が包帯を巻いているのを見かけた。私はリュエル様に対していじめなんてしていないし、できない。相手は侯爵家、第一王子の婚約者といえうちは格下の伯爵家だ。できるわけがない。なので包帯の下に怪我があるのかないのかはわからない。

きっとリュエル様の側にいるシリル様はいじめの噂を信じているのだろう。
それでも、シリル様は私に何も言ってこない。噂を知らないのか知っていても気を使っているのか?だとしたら大きな間違いだ。


どんどん日がたつがシリル様は何も動かないし、私も婚約破棄を申し出ないからか、いじめはだんだんエスカレートしてついには階段を降り始めた時背後から

「シリル様は婚約者を元通りに戻したいとおっしゃってましたわ。早く諦めてくださいまし。」

振り返ろうとしたが、背中を押された。
ころげ落ちながらも出来るだけ頭を庇いなんとか死は免れた。
身体中が打撲と擦り傷で痛い。右手右足は腫れている。たぶん骨折しているのだろう。足に力を入れようとしても無理だ。

もうこのままではいられない。このままでは待っているのは死だけだろう。
シリル様との婚約を解消してもらおう。

階段下に座り込み恐怖でガクガクと震える身体を抱きしめた。このままシリル様との関係がなくなる事よりも恐怖といじめに屈した悔しさで涙が出てきた。


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