【完結】乙女ゲームのモブの私は気ままに過ごします。

里音

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5 間話 シュナイザーの生い立ち

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⭐︎⭐︎シュナイザー視点⭐︎⭐︎

ジュトール伯爵家に引き取られたのは母親が亡くなった時だ。
父親は物心ついた時にはいなかった。元貴族だという父は母と大恋愛の末駆け落ちしたが、父は良いところの坊ちゃんだったために厳しい労働に耐えられず早くに亡くなったらしい。
その後は母が1人で俺を育ててくれた。
その母も8歳の時に亡くなった。まだ、1人で生きていくには厳しい年齢の俺は困っていた。
そんな時ジュトール伯爵がやってきた。父の遠い親戚らしい。母が死ぬ前にどこかに手紙を出していたのはきっとこれを予見していたからだろう。

「君の母親の死に間に合わなくてすまない。」

それだけ言うと自宅に俺を連れて行った。家に着くまでにジュトール家には娘しかおらずジュトール伯爵家を継いでほしいと言われた。
更に後々養子縁組するが、今は自分の娘の婿候補婚約者である。娘に好きな人ができても家の事を考えて諦めずにすむように俺を跡取りとして迎えた。
一人娘だと爵位目当ての貴族の次男以下の男が近寄ってくる。それを避けるために対外的に俺を跡取りとしたのだ。婚約も俺と娘が結婚すれば娘は家を出て行かない。それを狙っている。
だが、娘に嫌われたくないので、娘に好きな人ができその相手に問題もなくお互いに結婚の意思があればそっちを優先する。
その場合、娘にはかなりの支度金を持たせるが、家と爵位はお前にやる。
娘に負担をかけたくない自由恋愛をしてほしいので婚約者という事は秘密だと言われた。

俺にとって会ってもいない彼の娘との結婚なんて考えられない。
彼の娘が好きになれないのであれば嫌われるように振る舞い彼女が好きになれる人をあてがえばいいだけだ。
そうすれば今までのような暮らしから裕福な暮らしを手に入れられる。そんな打算が働いていた。


初めての顔合わせ。
デオドルドに連れられて彼の娘フローリアに会った。
ふわふわの柔らかそうな金髪。琥珀色の大きな瞳で父親の言うことを理解しようと頑張っている姿。その時は平民と違い貴族の令嬢は流石に可愛らしい。と思っていたが後から思うと一目惚れだったのだろう。
フローリアはよく考え事をする。そうなると周りを見ない。
ある時はお茶会の途中で考え事をし始め、危うく中身の入ったカップを落としそうになっていた。
ある時は散歩の途中で前を見ずに歩いていていばらの生垣に突っ込みそうになっていた。
危なっかしくて目が離せなくなった。だから出かける時は必ず手を繋いだ。

そんなフローリアには幼馴染のガブリエルがいる。ガブリエルももちろん、フローリアを好いている。家を通して婚約を申し込んできた。ガブリエルは次男なため継げる爵位はない。それもあり娘溺愛のデオドルドは断っていた。

断られたガブリエルは武道と剣技を習うようになった。たぶん爵位がないのを気にして騎士伯を目指してのことだろう。
幼いながら武道を学びに行くガブリエルをフローリアが褒めたことで俺も一緒に習おうと思ったのだ。
ガブリエルに対して幼すぎるただの嫉妬だ。いまならわかるがたかだか10歳の考える事だ幼くて当たり前だ。
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