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急展開
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「俺はマリアティナ嬢とは結婚しません。」
そう言った彼はソファーから立ち上がり私の側に来て跪いた。
慌てる私の手を両手で覆うように握り
「間違って貴女を傷つけてしまい申し訳ありませんでした。
これは言い訳にしかならないのですが、友人にカクテスト伯爵家の令嬢の名前を聞いたらマリアティナと教えられたのです。カクテスト伯爵家に令嬢が2人なのも双子なのも知らず、貴女の愛称がティナと言うことだけしか知らず、マリアティナと聞いてそれが貴女の名前だと思い込んでしまっていました。
俺が好きなのはセレスティナ、貴女です。
俺は街で貴女を保護した時から貴女が気になっていました。
あの夜抱いたのも貴女だとわかっていたからです。カクテスト伯爵にはマリアティナ嬢との話は無かったことにしてもらいました。俺は爵位が欲しいのではありません。
俺が欲しいのも、結婚したいのも貴女だけです。
愛しいティナ。セレスティナ、愛してます。俺と結婚してもらえませんか?」
嬉しい。彼は私の思っていた通りの人だ。彼からの求婚が嬉しすぎて涙が止まらない。声を出そうとしても上手く言葉に出来ず小さく頷いた。
彼は壊れ物に触れるかのようにそっと抱きしめ頬を流れる涙を拭ってくれた。
「子供には父親が必要です。俺を父親にしてください。」
ゲイルの求婚を受け入れたその日に婚姻証明書を提出し、その日から夫婦となった。
彼は爵位にはこだわらないと言っていたが、仕事で手柄を立てたようでグランツ子爵位を賜ったそうだ。騎士として生きていくつもりだった彼にとって爵位は邪魔でしかなく、今まで与えられるはずの爵位は辞退していたそうだ。だが、自分に爵位がなければ私もこれから産まれてくる子供も平民となる事を懸念し爵位をもらったそうだ。
「これで産まれてくる子供にもきちんとした教育が受けさせられる。」
そう言ってまだ膨らみのない私のお腹を撫ぜている。
あの舞踏会の夜の行為で私は妊娠していた。
避妊していなかったので万が一のことを考えて
早急に家を出ていた。未婚の令嬢が妊娠だなんて醜聞だ。家にも迷惑がかかる。
本当に妊娠していたら彼には内緒にして1人で産むつもりだったのだが…。
あれからも孤児院の子供たちは毎日来ている。体調が悪くなければ読み書き計算、マナーを教えている。
私はゲイルとこの邸で暮らしている。
孤児院が近く私が気に入っているのもあり、ゲイルが父から買い取ったのだ。だからここは正式にグランツ子爵邸。彼と私の家だ。
あれからカリン達4人はグランツ子爵として彼が正式に雇った。そして教会から何人かはまた見習いとして手伝いに来ている。一人前になると紹介状を書いて他の家にも勤められるようにしている。
職業訓練校は今まで全員が2年間の就学だった。だが、読み書き計算ができる子達の1年コースもでき、そして学園で給食が提供されるようになった。
だから今まで以上にやる気のある子供達は学校へも通えるようになった。
それはゲイルが王家の信頼に厚い人物だからだ。
ゲイルが仕事として王族の護衛についている時に私の事を話しているらしい。(のちに王子に会った時に毎回惚気られて困っていると言われてしまったが…)
私が行なっている読み書き計算の教育や孤児院の内情。さらに職業訓練校に通う為の金銭的な事など私がなんとかしたいと思っていた事をゲイルに話したら、ゲイルが王子に話し、その王子が打開策を打ち出して実行しているからだ。
ここの孤児院出身者は勉強の基礎もだが、マナーが身についているので優秀であると学校でもお墨付きをいただき、皆が良い仕事に就けている。
そして、我が家に子供が産まれた。彼によく似た男の子でケリーと名付けた。ゲイルは目に入れても痛くない程の親バカぶりだ。
なのに、幼く母を求めるケリーにもヤキモチを焼く彼。わたしは相変わらず溺愛されている。
ゲイルはあの違えてしまった朝を未だに後悔しているらしい。毎朝私に愛の言葉を囁く。
今日も
「おはよう、俺の可愛い奥さん。愛しているよティナ。俺にステキな家族をありがとう。」
そう言ってキスを贈ってくれる。
時々キスだけでは終わらない時もあるが…。
そんな彼はまた出世するそうで、
「今度は伯爵位を…」と言われているようだ。
今の暮らしに不満もなく爵位に興味がない彼は断っているが、王子の我儘の為には身分が必要で無理に叙勲されるようだ。
そう言った彼はソファーから立ち上がり私の側に来て跪いた。
慌てる私の手を両手で覆うように握り
「間違って貴女を傷つけてしまい申し訳ありませんでした。
これは言い訳にしかならないのですが、友人にカクテスト伯爵家の令嬢の名前を聞いたらマリアティナと教えられたのです。カクテスト伯爵家に令嬢が2人なのも双子なのも知らず、貴女の愛称がティナと言うことだけしか知らず、マリアティナと聞いてそれが貴女の名前だと思い込んでしまっていました。
俺が好きなのはセレスティナ、貴女です。
俺は街で貴女を保護した時から貴女が気になっていました。
あの夜抱いたのも貴女だとわかっていたからです。カクテスト伯爵にはマリアティナ嬢との話は無かったことにしてもらいました。俺は爵位が欲しいのではありません。
俺が欲しいのも、結婚したいのも貴女だけです。
愛しいティナ。セレスティナ、愛してます。俺と結婚してもらえませんか?」
嬉しい。彼は私の思っていた通りの人だ。彼からの求婚が嬉しすぎて涙が止まらない。声を出そうとしても上手く言葉に出来ず小さく頷いた。
彼は壊れ物に触れるかのようにそっと抱きしめ頬を流れる涙を拭ってくれた。
「子供には父親が必要です。俺を父親にしてください。」
ゲイルの求婚を受け入れたその日に婚姻証明書を提出し、その日から夫婦となった。
彼は爵位にはこだわらないと言っていたが、仕事で手柄を立てたようでグランツ子爵位を賜ったそうだ。騎士として生きていくつもりだった彼にとって爵位は邪魔でしかなく、今まで与えられるはずの爵位は辞退していたそうだ。だが、自分に爵位がなければ私もこれから産まれてくる子供も平民となる事を懸念し爵位をもらったそうだ。
「これで産まれてくる子供にもきちんとした教育が受けさせられる。」
そう言ってまだ膨らみのない私のお腹を撫ぜている。
あの舞踏会の夜の行為で私は妊娠していた。
避妊していなかったので万が一のことを考えて
早急に家を出ていた。未婚の令嬢が妊娠だなんて醜聞だ。家にも迷惑がかかる。
本当に妊娠していたら彼には内緒にして1人で産むつもりだったのだが…。
あれからも孤児院の子供たちは毎日来ている。体調が悪くなければ読み書き計算、マナーを教えている。
私はゲイルとこの邸で暮らしている。
孤児院が近く私が気に入っているのもあり、ゲイルが父から買い取ったのだ。だからここは正式にグランツ子爵邸。彼と私の家だ。
あれからカリン達4人はグランツ子爵として彼が正式に雇った。そして教会から何人かはまた見習いとして手伝いに来ている。一人前になると紹介状を書いて他の家にも勤められるようにしている。
職業訓練校は今まで全員が2年間の就学だった。だが、読み書き計算ができる子達の1年コースもでき、そして学園で給食が提供されるようになった。
だから今まで以上にやる気のある子供達は学校へも通えるようになった。
それはゲイルが王家の信頼に厚い人物だからだ。
ゲイルが仕事として王族の護衛についている時に私の事を話しているらしい。(のちに王子に会った時に毎回惚気られて困っていると言われてしまったが…)
私が行なっている読み書き計算の教育や孤児院の内情。さらに職業訓練校に通う為の金銭的な事など私がなんとかしたいと思っていた事をゲイルに話したら、ゲイルが王子に話し、その王子が打開策を打ち出して実行しているからだ。
ここの孤児院出身者は勉強の基礎もだが、マナーが身についているので優秀であると学校でもお墨付きをいただき、皆が良い仕事に就けている。
そして、我が家に子供が産まれた。彼によく似た男の子でケリーと名付けた。ゲイルは目に入れても痛くない程の親バカぶりだ。
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そんな彼はまた出世するそうで、
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