8 / 9
ゲイル視点
決着
しおりを挟む
カクテスト伯爵令嬢で自身の婚約者であるはずの令嬢が部屋に入ってきた。
彼女と姿形は似ているが、雰囲気など俺の知る彼女と一致しなかった。
令嬢は俺の無礼な態度に眉をひそめるがすぐに淑女として挨拶してくれた。
「カクテスト伯爵の長女マリアティナでございます。あなた様は私に求婚されたグランベリー伯爵家のゲイル様ではないのですか?」
言葉尻にトゲがある。目の前にいる女性はあの時の彼女ではない。
だが、確かに家を通して俺はマリアティナに求婚していた。
「失礼しました。グランベリー伯爵の次男ゲイルだ。だが、君は私の知るカクテスト伯爵令嬢とは違うようだが…」
戸惑いつつ、話しかけると目の前の令嬢は隠すことなくため息を吐き
「セレスティナのことかしら?時々いるのよ。私たち双子の姉妹を見分けられない殿方が。もしかして見分けられないまま私に求婚されたのかしら?」
「君たちは双子だったのか?それで彼女は?」
「セレスティナは邸にはいません。家を出ました。」
「結婚したのか?」
「ティナは…セレスティナは私が結婚したら同じ顔の自分がいると旦那様が混乱するだろうと半月前に自ら出て行きました。」
「ティナとはセレスティナ嬢の愛称なのか。ではあなたの愛称は?」
「私はマリアよ。」
あの時助けた令嬢は送って行った時に「ティナ」と呼ばれてた。
俺が結婚したいのは目の前のマリアティナではない。あの時友人に聞いた名前がマリアティナだったからすっかりティナの名前がマリアティナだと思い込んでいた。双子の姉妹だったなんて知らなかったのだ。
「マリアティナ嬢。本当にすまないが、この話は無かったことにしてほしい。彼女の名前を知らず友人に聞いた名が君の名前だったようだ。」
マリアティナは呆れ顔で
「ゲイル様。私との結婚をあの子にすり替えるおつもりですか?ティナは双子の妹。家を…爵位を継ぐのは私。ゲイル様は次男、あの子と結婚したら継ぐべき爵位はないのよ。平民になるか良くて騎士伯よ。冷静になってよくお考えになられたらよろしいのではなくて?」
あの時ティナの態度が急変したのは、俺には継ぐ爵位がないからか?あきらかに好意を感じていたのに、マリアティナと間違えてしまったから。俺が爵位を継ぐためにも長女のマリアティナを欲していると思ったのか?
「どこでティナを見初めたのか知らないけど、このまま私と結婚すれば爵位を手に入れることができるわ。
結婚後はお互い恋人を作れば良いのよ。政略結婚ではよくある話よ。だからあなたの愛人がティナでも私は構わないわ。私の産む子が爵位を継げさえすればね。」
政略結婚ではお互い恋人を持つ事もあるとは一般的に知られている。推奨はされないが糾弾もされない。
だが、それが双子の姉妹だなんて嫌ではないのだろうか?
もっとも俺は貴族としての生き方を否定はしないが、受け入れもできない。
「カクテスト伯爵。申し訳ないが、マリアティナ嬢との結婚の話はなかったことにしてほしい。
私が結婚したかったのはセレスティナ嬢だ。友人に聞いた名前が間違っていたようだ。」
怒られるのを覚悟してそう正直に言うと、カクテスト伯爵は怒るでもなく困った顔をした。
「ゲイル殿。考え直してはどうだろうか?
セレスティナにこだわらなくてもあの2人は双子だ。容姿はよく似ている。それにどちらかといえばマリアティナの方が華やかさがあり、君の横に立つにはふさわしいだろう。
それに次男の君は爵位を継ぐマリアティナがいいのではないか?」
爵位など関係ない。俺は彼女が良い。それに彼女の純潔を散らしたのは俺だ。
彼女の処女喪失を親であるカクテスト伯爵に伝えるのは彼女に悪いと思ったが、彼女を得る為だ。仕方がない。
意を決して口を開こうとした。
「最近は若者の貞操観念が緩いと言われており、恥ずかしい話ですがセレスティナもそのようでして。
縁を切ることはしておりませんが、邸を別に与えそちらで住まわせてます。
それに比べてマリアティナは貞淑な妻になると思いますよ。」
セレスティナの貞操観念が緩い?俺に抱かれるまで処女だったのに?
それにマリアティナが貞淑な妻?腹立ち紛れに先ほど聞いた話を言う。
「マリアティナ嬢と結婚しても上手くいきませんよ。彼女は恋人がいるようですし、その彼と結婚させればいいのではないですか?
私との結婚後はお互い恋人を持つと言われました。」
「マリアはそこまであなたに話したのか?
マリアの恋人は男爵家の三男だ。そんな奴にこのカクテスト伯爵家を任せられると?
私はあなたを見込んで求婚の話を受けたのだ。
それに、ティナは誰ともわからない男と閨を共にした。相手の男は避妊もしていない。妊娠しているかもしれないんだ。
そんなティナと結婚したいと思えるのか?
ましてや、子が産まれたらその子を愛することができるのか?」
あのティナが誰ともわからない男と閨を共にした?
あの時のティナからは考えられない。
もしや、俺の間違った求婚を聞いて態度を急変させたから相手が俺だとは言えなかったのでは?
カクテスト伯爵にあの仮面舞踏会での出来事を話し、マリアティナとの結婚は相手をセレスティナに変えることで話は決着した。
彼女と姿形は似ているが、雰囲気など俺の知る彼女と一致しなかった。
令嬢は俺の無礼な態度に眉をひそめるがすぐに淑女として挨拶してくれた。
「カクテスト伯爵の長女マリアティナでございます。あなた様は私に求婚されたグランベリー伯爵家のゲイル様ではないのですか?」
言葉尻にトゲがある。目の前にいる女性はあの時の彼女ではない。
だが、確かに家を通して俺はマリアティナに求婚していた。
「失礼しました。グランベリー伯爵の次男ゲイルだ。だが、君は私の知るカクテスト伯爵令嬢とは違うようだが…」
戸惑いつつ、話しかけると目の前の令嬢は隠すことなくため息を吐き
「セレスティナのことかしら?時々いるのよ。私たち双子の姉妹を見分けられない殿方が。もしかして見分けられないまま私に求婚されたのかしら?」
「君たちは双子だったのか?それで彼女は?」
「セレスティナは邸にはいません。家を出ました。」
「結婚したのか?」
「ティナは…セレスティナは私が結婚したら同じ顔の自分がいると旦那様が混乱するだろうと半月前に自ら出て行きました。」
「ティナとはセレスティナ嬢の愛称なのか。ではあなたの愛称は?」
「私はマリアよ。」
あの時助けた令嬢は送って行った時に「ティナ」と呼ばれてた。
俺が結婚したいのは目の前のマリアティナではない。あの時友人に聞いた名前がマリアティナだったからすっかりティナの名前がマリアティナだと思い込んでいた。双子の姉妹だったなんて知らなかったのだ。
「マリアティナ嬢。本当にすまないが、この話は無かったことにしてほしい。彼女の名前を知らず友人に聞いた名が君の名前だったようだ。」
マリアティナは呆れ顔で
「ゲイル様。私との結婚をあの子にすり替えるおつもりですか?ティナは双子の妹。家を…爵位を継ぐのは私。ゲイル様は次男、あの子と結婚したら継ぐべき爵位はないのよ。平民になるか良くて騎士伯よ。冷静になってよくお考えになられたらよろしいのではなくて?」
あの時ティナの態度が急変したのは、俺には継ぐ爵位がないからか?あきらかに好意を感じていたのに、マリアティナと間違えてしまったから。俺が爵位を継ぐためにも長女のマリアティナを欲していると思ったのか?
「どこでティナを見初めたのか知らないけど、このまま私と結婚すれば爵位を手に入れることができるわ。
結婚後はお互い恋人を作れば良いのよ。政略結婚ではよくある話よ。だからあなたの愛人がティナでも私は構わないわ。私の産む子が爵位を継げさえすればね。」
政略結婚ではお互い恋人を持つ事もあるとは一般的に知られている。推奨はされないが糾弾もされない。
だが、それが双子の姉妹だなんて嫌ではないのだろうか?
もっとも俺は貴族としての生き方を否定はしないが、受け入れもできない。
「カクテスト伯爵。申し訳ないが、マリアティナ嬢との結婚の話はなかったことにしてほしい。
私が結婚したかったのはセレスティナ嬢だ。友人に聞いた名前が間違っていたようだ。」
怒られるのを覚悟してそう正直に言うと、カクテスト伯爵は怒るでもなく困った顔をした。
「ゲイル殿。考え直してはどうだろうか?
セレスティナにこだわらなくてもあの2人は双子だ。容姿はよく似ている。それにどちらかといえばマリアティナの方が華やかさがあり、君の横に立つにはふさわしいだろう。
それに次男の君は爵位を継ぐマリアティナがいいのではないか?」
爵位など関係ない。俺は彼女が良い。それに彼女の純潔を散らしたのは俺だ。
彼女の処女喪失を親であるカクテスト伯爵に伝えるのは彼女に悪いと思ったが、彼女を得る為だ。仕方がない。
意を決して口を開こうとした。
「最近は若者の貞操観念が緩いと言われており、恥ずかしい話ですがセレスティナもそのようでして。
縁を切ることはしておりませんが、邸を別に与えそちらで住まわせてます。
それに比べてマリアティナは貞淑な妻になると思いますよ。」
セレスティナの貞操観念が緩い?俺に抱かれるまで処女だったのに?
それにマリアティナが貞淑な妻?腹立ち紛れに先ほど聞いた話を言う。
「マリアティナ嬢と結婚しても上手くいきませんよ。彼女は恋人がいるようですし、その彼と結婚させればいいのではないですか?
私との結婚後はお互い恋人を持つと言われました。」
「マリアはそこまであなたに話したのか?
マリアの恋人は男爵家の三男だ。そんな奴にこのカクテスト伯爵家を任せられると?
私はあなたを見込んで求婚の話を受けたのだ。
それに、ティナは誰ともわからない男と閨を共にした。相手の男は避妊もしていない。妊娠しているかもしれないんだ。
そんなティナと結婚したいと思えるのか?
ましてや、子が産まれたらその子を愛することができるのか?」
あのティナが誰ともわからない男と閨を共にした?
あの時のティナからは考えられない。
もしや、俺の間違った求婚を聞いて態度を急変させたから相手が俺だとは言えなかったのでは?
カクテスト伯爵にあの仮面舞踏会での出来事を話し、マリアティナとの結婚は相手をセレスティナに変えることで話は決着した。
54
お気に入りに追加
389
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件
よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます
「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」
旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。
彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。
しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。
フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。
だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。
私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。
さて……誰に相談したら良いだろうか。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる