【完結】取り違えたのは?

里音

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ゲイル視点

決着

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カクテスト伯爵令嬢で自身の婚約者であるはずの令嬢が部屋に入ってきた。
彼女と姿形は似ているが、雰囲気など俺の知る彼女と一致しなかった。

令嬢は俺の無礼な態度に眉をひそめるがすぐに淑女として挨拶してくれた。

「カクテスト伯爵の長女マリアティナでございます。あなた様は私に求婚されたグランベリー伯爵家のゲイル様ではないのですか?」

言葉尻にトゲがある。目の前にいる女性はあの時の彼女ではない。
だが、確かにグランベリー伯爵家を通して俺はマリアティナに求婚していた。

「失礼しました。グランベリー伯爵の次男ゲイルだ。だが、君は私の知るカクテスト伯爵令嬢とは違うようだが…」

戸惑いつつ、話しかけると目の前の令嬢は隠すことなくため息を吐き

「セレスティナのことかしら?時々いるのよ。私たち双子の姉妹を見分けられない殿方が。もしかして見分けられないまま私に求婚されたのかしら?」

「君たちは双子だったのか?それで彼女は?」

「セレスティナはここにはいません。家を出ました。」

「結婚したのか?」

「ティナは…セレスティナは私が結婚したら同じ顔の自分がいると旦那様が混乱するだろうと半月前に自ら出て行きました。」

「ティナとはセレスティナ嬢の愛称なのか。ではあなたの愛称は?」

「私はマリアよ。」

あの時助けた令嬢は送って行った時に「ティナ」と呼ばれてた。
俺が結婚したいのは目の前のマリアティナではない。あの時友人に聞いた名前がマリアティナだったからすっかりティナの名前がマリアティナだと思い込んでいた。双子の姉妹だったなんて知らなかったのだ。

「マリアティナ嬢。本当にすまないが、この話は無かったことにしてほしい。彼女の名前を知らず友人に聞いた名が君の名前だったようだ。」

マリアティナは呆れ顔で

「ゲイル様。私との結婚をあの子にすり替えるおつもりですか?ティナは双子の妹。家を…爵位を継ぐのは私。ゲイル様は次男、あの子と結婚したら継ぐべき爵位はないのよ。平民になるか良くて騎士伯よ。冷静になってよくお考えになられたらよろしいのではなくて?」

あの時ティナの態度が急変したのは、俺には継ぐ爵位がないからか?あきらかに好意を感じていたのに、マリアティナと間違えてしまったから。俺が爵位を継ぐためにも長女のマリアティナを欲していると思ったのか?

「どこでティナを見初めたのか知らないけど、このまま私と結婚すれば爵位を手に入れることができるわ。
結婚後はお互い恋人を作れば良いのよ。政略結婚ではよくある話よ。だからあなたの愛人がティナでも私は構わないわ。私の産む子が爵位を継げさえすればね。」

政略結婚ではお互い恋人を持つ事もあるとは一般的に知られている。推奨はされないが糾弾もされない。
だが、それが双子の姉妹だなんて嫌ではないのだろうか?
もっとも俺は貴族としての生き方を否定はしないが、受け入れもできない。



「カクテスト伯爵。申し訳ないが、マリアティナ嬢との結婚の話はなかったことにしてほしい。
私が結婚したかったのはセレスティナ嬢だ。友人に聞いた名前が間違っていたようだ。」

怒られるのを覚悟してそう正直に言うと、カクテスト伯爵は怒るでもなく困った顔をした。

「ゲイル殿。考え直してはどうだろうか?
セレスティナにこだわらなくてもあの2人は双子だ。容姿はよく似ている。それにどちらかといえばマリアティナの方が華やかさがあり、君の横に立つにはふさわしいだろう。
それに次男の君は爵位を継ぐマリアティナがいいのではないか?」

爵位など関係ない。俺は彼女が良い。それに彼女の純潔を散らしたのは俺だ。
彼女の処女喪失を親であるカクテスト伯爵に伝えるのは彼女に悪いと思ったが、彼女を得る為だ。仕方がない。
意を決して口を開こうとした。

「最近は若者の貞操観念が緩いと言われており、恥ずかしい話ですがセレスティナもそのようでして。
縁を切ることはしておりませんが、邸を別に与えそちらで住まわせてます。
それに比べてマリアティナは貞淑な妻になると思いますよ。」

セレスティナの貞操観念が緩い?俺に抱かれるまで処女だったのに?
それにマリアティナが貞淑な妻?腹立ち紛れに先ほど聞いた話を言う。

「マリアティナ嬢と結婚しても上手くいきませんよ。彼女は恋人がいるようですし、その彼と結婚させればいいのではないですか?
私との結婚後はお互い恋人を持つと言われました。」

「マリアはそこまであなたに話したのか?
マリアの恋人は男爵家の三男だ。そんな奴にこのカクテスト伯爵家を任せられると?
私はあなたを見込んで求婚の話を受けたのだ。
それに、ティナは誰ともわからない男と閨を共にした。相手の男は避妊もしていない。妊娠しているかもしれないんだ。
そんなティナと結婚したいと思えるのか?
ましてや、子が産まれたらその子を愛することができるのか?」

あのティナが誰ともわからない男と閨を共にした?
あの時のティナからは考えられない。
もしや、俺の間違った求婚を聞いて態度を急変させたから相手が俺だとは言えなかったのでは?

カクテスト伯爵にあの仮面舞踏会での出来事を話し、マリアティナとの結婚は相手をセレスティナに変えることで話は決着した。
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