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06 オーラを見る

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お昼を食べた後はアトラスを含め4人で次の部屋に行った。

そこにいたのは緑のオーラの人達だ。他の色の人はいなかった。
アシュリーもマディも慣れてきたのか、テキパキと進んだ。
アトラスは興味深そうについてきてそして何人かに何か声をかけていた。


次に赤のオーラの部屋へ行った。
部屋に入る前にレイフォードが、

「この部屋の人間は癖が強いからオーラの濁りはエスコートする腕をトンと叩いて。何か気になる事はトントンと2回。そしたら君の口元に耳を寄せるからそこで小声で知らせて。」

入る前に練習したが、オーラの濁りを知らせるのはできるが、気になる点の時は見えていなくても恥ずかしい。自然と顔が赤くなる。


癖が強いという意味が部屋に入ってわかった。なんとなく部屋の空気が重いのだ。殺気といえばわかりやすいかもしれない。

この部屋には確かに濁りのある人が他の色の人よりも多い。
慎重に大きさを見て並べ替えてもらう。その際にもチッという舌打ちが聞こえてきたりして嫌な感じだ。
大きさ以外にこの部屋にはオーラの勢いのある人が多い。その時はレイフォードに知らせるのだが、レイフォードの「んっ?」という声に妙な艶っぽさを感じて、精神がガリガリと削られていくようだ。
この人には見た目の美しさだけでなく声も人を惹きつける事ができるのだと思い知った。

かなり精神が疲弊したので一度休憩を挟んだ後、豪華そうな部屋に連れて来られた。
何故ぼんやりとしか見えないのに豪華な部屋だとわかったかというと、絨毯がフカフカだからだ。
ヒールを取られないようにレイフォードのエスコートする腕に力を込めて捕まる。
レイフォードは気がついたようで歩みをゆっくりとしてくれた。彼の心遣いがくすぐったいようで嬉しくて小さく「ありがとう」とお礼を言った。

この部屋には魔法省のお偉方がいるようだ。
オーラは今まで見た部屋の人達より大きい。アトラスと同等かそれ以上だ。でも、アトラスは勢いがあるのでもっと大きくなるだろう。
レイフォード程大きなオーラの持ち主はそうそういない。レイフォードは勢いもあるからだ。
レイフォードの次に大きいのは魔法省のトップだ。白のオーラだが、勢いが消えかけている。


魔法省のお偉方には濁りのあるオーラの方はいなかった。
白は生活魔法に特化している。魔力の検知なども得意だ。
緑は本来は植物などの育成に干渉出来る能力らしい。それが治療魔法に繋がるのだという。わかるようでわからない。
赤は攻撃魔法が得意なのだ。だから、魔術騎士団として魔法を得意とする騎士団を結成していたりする。
レイフォードの様にラピス色はいなかった。レイフォードはだいたいどの属性も使いこなせるらしく、今は魔法の解析や新たな魔法の構築などをしているらしい。
魔法省のお偉方は魔導師と呼ばれているそうで、アトラスやレイフォードなどと一緒でオーラが大きい。
また、ここの魔導師の中に濁ったオーラの持ち主はいなかった。
魔法省にいる全ての人のオーラを見て、やっと一息ついた。

レイフォードのエスコートで部屋に戻りソファーに腰掛けるとレイフォードが目の前に手を持ってきて術をかけてくれる。
途端に視界がクリアになった。

「レイフォード様、ありがとうございます。」

レイフォードの顔を見て笑顔で礼を言う。それからゆっくりと周りを見て

「初めまして。でよろしいのでしょうか?アトラス様とマディ様ですよね。アトラス様もお噂に違わず整ったお顔なんですね。マディ様は静かな方でしたので冷たい印象でしたが、イメージとは違いお優しいお顔なんですね。お年ももっと上の方だと思ってましたわ。」

アトラスはアシュリーをまじまじと見た。レイフォードと自分を見ても顔を赤らめるでもなくアピールをする事なく普通に対応してくれた。そんな令嬢は今まで周りにはいなかった。
アシュリーは自分と年の近そうなマディが色々と気になるようで話しかけている。

「マディ様はお年はおいくつですの?」

それにはマディは静かに「18です」と返している。

「まあ、私の2つ上ですの?しっかりとされてますのね。」
「マディ。お茶を淹れてくれないか?」

アシュリーがまだ話し続けようとしているのに珍しくレイフォードが遮った。

「よろしければ、私もお手伝いいたしますわ。」

アシュリーの申し出に、レイフォードはイラつきながら

「客人に手伝わせるなんて出来ません。マディ、お茶を淹れたらお菓子をもらってきてくれ。」

アトラスにはレイフォードがアシュリーからマディを引き離そうとしているのがわかり、ついニヤニヤとレイフォードを見てしまう。
多分、見た目や地位で自分を見ていないアシュリーが気に入ったのだろう。それなのに、全く自分に興味を持ってもらえないのが気にくわないのだ。矛盾しているが、気持ちはわかる。
ついアトラスはクスクスと笑っていた。

ふとこちらを見たアシュリーが、小首を傾げながら不思議そうに聞いてきた。

「何か楽しい事がありました?」

「いえ、何でもありませんよ。」

ここでアトラスの方に意識がいくとレイフォードの機嫌はきっともっと悪くなるだろう。そつなく返事をすると、アシュリーはもう興味を失ったようだった。
お茶を飲んでくつろいでいると

「アシュリー、今日はありがとう。君に見てもらったオーラでかなりの人数が適性を伸ばすことができるだろう。今度は王立学園にも付いてきてもらいたいのだが、良いだろうか?」

「ええ、構いませんわ。」
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