四季を彩るアルビノへ

「なあ、アルビノって知ってる?」
「あー、身体が真っ白なんだっけ?」
「そうそう、最近この辺にアルビノがいるらしいぜ」
「何のアルビノ?」
「それが、わからないんだよ。噂で広まっただけだからそこまでは確認できてないんだ。……もし人間だったら、お前どうする?」
 大学の広い講義室で、後ろの席に座る名前も知らない男子ふたりの会話が耳に着く。他人の話を盗み聞きするのは趣味じゃないが、授業を聞くよりかはまだ面白味があった。
 バイトは辞めた。辞めさせてもらいます、と突然に僕が言うものだから、店長は酷く驚いていた。辞めた理由は酷く単純で、ただ他人の日用品や食料に音を鳴らしてお金を貰うだけの作業に窮屈さを感じていた。そしてもう一つ、このバイトをしていると目が渇き、痛むのだ。仕事中は忙しいと目薬を注すことができず、耐えるしかない。
 週末には眼科に向かい、ドライアイ用の目薬を購入する。この費用だって、意外と嵩んでくる。しばらくの間は、親からの仕送りに頼るしかない。運の良いことに僕は大学デビューに失敗し、友達もいないから人付き合いなどによる出費はなかった。
暇つぶしに始めてみた読書も長くは続かなかった。昔はよく読んでいたのに、いつからか本も苦手になっていた。数日前に本屋で購入した数冊の小説や辞典、自己啓発本は今となってはどこに仕舞ったのかも忘れてしまった。
 このまま何の楽しいことも起きず、それなりの成績で、何となく就活をして、卒業式にも出るか悩んだまま大学生活を終えるのだろう。終わりというのは、いつも唐突だとわかっているにも関わらず。

※小説家になろう、魔法のiらんど、エブリスタ、カクヨムにて重複投稿
24h.ポイント 0pt
0
小説 194,447 位 / 194,447件 恋愛 57,844 位 / 57,844件

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

ゴキブリ戦役

清水そら
大衆娯楽
数多の環境変化を乗り越え、幾星霜もの年月を生き抜く「彼の生物」と私の死闘の半日を描いた半分ノンフィクションの作品です。 幾星霜の進化の歴史という重みを、重圧を、我が人類が生み出した文明の利器は対抗できるのか。「彼の生物」と私の死闘の行く末はいかに。平凡だった私の人生に起きた激動の半日を皆の目でしかと見届けてください。

写る記憶と宝物

有箱
恋愛
私は目が見えない。けれど、今は幸せだ。 それもこれも、妻の存在があるからだ。 それともう一つ、ある存在も。 私には、日課がある。 その一つが、妻の調理音で目を覚ますこと。 そして、もう一つが写真を撫でること。 しかし、それは妻との写真ではない。 ――私の、初恋の人との写真だ。

恋は盲目少女に光差す

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
神様から貰った祝福に恵まれなかったメージュは、ダンジョンを探索することで日銭を稼いでいた。 ある日、偶然通りかかった小部屋で倒れている少女を発見する。 どう考えても厄介ごとの匂いがするが、見捨てることができず拾って帰ってしまう。 少女はメージュが借りている宿で目覚めるが、彼女は目が見えない様子で―― 表紙イラスト/ノーコピライトガール様より

貴方の隣で呼吸がしたい。

ハリエンジュ
恋愛
恋人が、死んだ。 将来を誓い合った仲だった、大切な人だった、誰よりも、何よりも愛していた。 「きみ、異世界転生って知ってるかね?」 ちょっとした顔見知りのその少年は、そんな突拍子もないことを平然と私に訊ねてきた。 喪失感が消えぬまま彼女の墓の前で立ち尽くす私に、少年は言った。 「きみの恋人はね、異世界で新しい人生を一から始めたのだよ。こことは全く別の世界さ。――もし、きみがもう一度彼女に会える方法があるとおれが言ったら、きみはどうする?」 「きみはね、異世界転移をすればいいのだよ。彼女が転生したその異世界に。まあ、ルールはいくつかあるのだがね。まず第一に、きみはこの世界での立場を何もかも捨てなければいけない。別世界の人間になるのだからね。第二に、彼女にかつてきみと彼女が恋仲だったと知られてはならない。今の彼女にはこの世界の記憶がないわけだから。第三に、きみにはこの世界と同じく、異世界でも教職についてもらう。そして別世界の彼女はきみの生徒になる。だから大っぴらに彼女に迫ったりはできない。立場上ね」 俄かには信じ難い話を、少年は饒舌に語って。 そして、彼は意味深に笑った。 「以上を踏まえて、だ。きみ、異世界転移に興味はあるかね?」 「おれなら、きみの願いを叶えてあげられるのだよ」 「――なんたって、おれは、『神様』だからね」 普段の私なら、馬鹿馬鹿しいと一蹴していただろう。 それでも。 それでも最愛の存在を失った私は、彼が差し伸べて来た手を縋るように握って。 ――愛する彼女に再び出会う為だけに、私は生まれ育った世界を簡単に捨てたのだ。 『貴方の隣で呼吸がしたい。』は死んで異世界転生した恋人に異世界転移で会いに行った主人公がヒロインをただひたすら想い続けるラブストーリーです。 ※ヒロインの柊木小夜ちゃん含む大半の登場人物の設定は海月水母さん(@unatuki_minamo)にお借りしました。ありがとうございます!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

東方並行時空 〜Parallel Girls

獣野狐夜
ファンタジー
アナタは、“ドッペルゲンガー”を知っていますか? この世には、自分と全く同じ容姿の人間“ドッペルゲンガー”というものが存在するそう…。 そんな、自分と全く同じ容姿をしている人間に会ってみたい…そう思ってしまった少女達が、幻想入りする話。 〈当作品は、上海アリス幻樂団様の東方Projectシリーズ作品をモチーフとした二次創作作品です。〉

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

処理中です...