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第一話
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「レミリア嬢。君との婚約は破棄させもらう。」
栗色の巻き毛。少しつんつんとした髪。
貴方は毛直しに時間がかかると言ってきらっていたけれど、私は可愛らしくて好きだった。
きらきらと輝く翠眼が、私をうつしてくれると自分まできれいになれたようで嬉しかった。
私の歩幅を気にして、後ろを振り返って手を引いてくれるあなたが好きだった。
それなのに。
こんな形で終わってしまうなんて許せない。
愛しているんです。貴方を。
貴方だけを…………。
その平民が転校してきたのは、6月のはじめだった。
「こ、コルトと言います。よろしくお願いします。」
少し緊張している風で、可愛らしかった。2つの三つ編みを揺らして一生懸命話していた。
スカートをぎゅうっと握って、なにかに耐えるようにしている姿は私が守ってあげたいとさえ思った。
「平民と同じクラスだなんて! レミリア嬢に失礼ですわ。」そう言う友人にあいまいに頷く。
公爵家の人間である私が接触すれば、よくないことになることはめに見えている。
なるべく接触しないようにしようと心に決めた。
音楽の授業での教室移動のときだ。王子とコルトという平民が初めて話している姿をみたのは。
服装や佇まいはお世辞にも釣り合っているとはいえなかったが、優しい王子が孤立するであろうコルトと教室内の生徒の仲を取り持つため話しかけにいったことは明白だった。
王子と2人が並ぶ姿をとくに気にもしなかった。
「レミリア、すまない。今日はコルトたちと一緒にピクニックの約束があるんだ。」婚約者である王子はある時そんなことを言った。
なるほど。コルトはそんなに王子と仲良くなっていたのね。
まったく知りも知なかったわ。
コルトは平民出ということもあり、最初のころは他の貴族生徒たちに距離を取られることも多かったが、王子が表へでて関係を築くことでコルトと仲良くなれば王子とのパイプにでもなると思ったのか、表立って彼女を避けるものはいなくなっていた。
王子は日に日に私との時間より、コルトとの時間を大切にするようになっていた。王子に苦言を申し上げたのも一度や二度ではない。私の心は引き裂かれんばかりに痛んだ。
私の問いに王子はすべてをはぐらかすばかりだった。
そこで私はコルトを王子から引きはがすことにした。王子がコルトから離れてくれないのであれば仕方ない。
コルトに王子から離れたいと思わせるしかない。
「コルト、あなたが最近時間をともにしているお方はこのレミリア嬢の婚約者である方なのよ。身の程をわきまえなさいっ!」友人は大声で怒鳴り、コルトはうつむいて震え始めた。
やりすぎたか、そう思ったがもう引き返せなかった。
それからコルトへの嫌がらせが始まった。教科書、私物いろんなものを私の友人たちが隠した。
コルトの机や椅子を汚した。昼食を床にぶちまけてやった。
すべて王子がいないときを見計らっておこなった。学友たちは、そんな私たちをなにも言わずにみつめていた。
「レミリア! 君、コルトにひどいことをしているそうじゃないかっ! どうしてそんなことをするんだ。」王子は私を問い詰めてきた。
「ひどいこと? 私は貴方にひどいことをされていないというの?」私は初めて王子に腹が立っていた。
婚約者がありながら、平民に懸想するのはひどいことではないというの?
そんなはずはない。私たちは婚約しているのよ。
王子は私をみて、「だとしても! 彼女に嫌がらせめいたことをするのは間違ってるだろう! 君はそれでも公爵令嬢なのか?」と顔をゆがめて言う。
そんなの、仕方がないじゃない!
私は貴方のなんなのよ。婚約者でしょ。
「どうして平民のっ、コルトなんか構うのよ!」
「……、コルトなんか? っ、そんなこと君にいわれることじゃない。……はっきり言うよ。もう僕との婚約は破棄してほしい。………、コルトが好きなんだ。愛している。」
は?
その言葉に頭が真っ白になった。
「なにを言っているの! 破棄ってどういう……。」
「そのままの意味だよ。僕はもうコルトを愛してるんだ。王子として平民を愛してしまうなんておかしいってわかってる。でももう止められないんだ。」
うそでしょ?
なにも言葉がでなかった。どうして、どうしてこんなことに。
「レミリア嬢、すまない。君との婚約は破棄させてもらう。この件は僕から国王、ならびに関係者へ伝えるよ。… …、さよなら。」王子が何か言って、去っていった。
引き留めるすべもなく立ち尽くす。
栗色の巻き毛。少しつんつんとした髪。
貴方は毛直しに時間がかかると言ってきらっていたけれど、私は可愛らしくて好きだった。
きらきらと輝く翠眼が、私をうつしてくれると自分まできれいになれたようで嬉しかった。
私の歩幅を気にして、後ろを振り返って手を引いてくれるあなたが好きだった。
それなのに。
どうしてこんなことに……。
こんな形で終わってしまうなんて許せない。
愛しているんです。貴方を。
貴方だけを…………。
栗色の巻き毛。少しつんつんとした髪。
貴方は毛直しに時間がかかると言ってきらっていたけれど、私は可愛らしくて好きだった。
きらきらと輝く翠眼が、私をうつしてくれると自分まできれいになれたようで嬉しかった。
私の歩幅を気にして、後ろを振り返って手を引いてくれるあなたが好きだった。
それなのに。
こんな形で終わってしまうなんて許せない。
愛しているんです。貴方を。
貴方だけを…………。
その平民が転校してきたのは、6月のはじめだった。
「こ、コルトと言います。よろしくお願いします。」
少し緊張している風で、可愛らしかった。2つの三つ編みを揺らして一生懸命話していた。
スカートをぎゅうっと握って、なにかに耐えるようにしている姿は私が守ってあげたいとさえ思った。
「平民と同じクラスだなんて! レミリア嬢に失礼ですわ。」そう言う友人にあいまいに頷く。
公爵家の人間である私が接触すれば、よくないことになることはめに見えている。
なるべく接触しないようにしようと心に決めた。
音楽の授業での教室移動のときだ。王子とコルトという平民が初めて話している姿をみたのは。
服装や佇まいはお世辞にも釣り合っているとはいえなかったが、優しい王子が孤立するであろうコルトと教室内の生徒の仲を取り持つため話しかけにいったことは明白だった。
王子と2人が並ぶ姿をとくに気にもしなかった。
「レミリア、すまない。今日はコルトたちと一緒にピクニックの約束があるんだ。」婚約者である王子はある時そんなことを言った。
なるほど。コルトはそんなに王子と仲良くなっていたのね。
まったく知りも知なかったわ。
コルトは平民出ということもあり、最初のころは他の貴族生徒たちに距離を取られることも多かったが、王子が表へでて関係を築くことでコルトと仲良くなれば王子とのパイプにでもなると思ったのか、表立って彼女を避けるものはいなくなっていた。
王子は日に日に私との時間より、コルトとの時間を大切にするようになっていた。王子に苦言を申し上げたのも一度や二度ではない。私の心は引き裂かれんばかりに痛んだ。
私の問いに王子はすべてをはぐらかすばかりだった。
そこで私はコルトを王子から引きはがすことにした。王子がコルトから離れてくれないのであれば仕方ない。
コルトに王子から離れたいと思わせるしかない。
「コルト、あなたが最近時間をともにしているお方はこのレミリア嬢の婚約者である方なのよ。身の程をわきまえなさいっ!」友人は大声で怒鳴り、コルトはうつむいて震え始めた。
やりすぎたか、そう思ったがもう引き返せなかった。
それからコルトへの嫌がらせが始まった。教科書、私物いろんなものを私の友人たちが隠した。
コルトの机や椅子を汚した。昼食を床にぶちまけてやった。
すべて王子がいないときを見計らっておこなった。学友たちは、そんな私たちをなにも言わずにみつめていた。
「レミリア! 君、コルトにひどいことをしているそうじゃないかっ! どうしてそんなことをするんだ。」王子は私を問い詰めてきた。
「ひどいこと? 私は貴方にひどいことをされていないというの?」私は初めて王子に腹が立っていた。
婚約者がありながら、平民に懸想するのはひどいことではないというの?
そんなはずはない。私たちは婚約しているのよ。
王子は私をみて、「だとしても! 彼女に嫌がらせめいたことをするのは間違ってるだろう! 君はそれでも公爵令嬢なのか?」と顔をゆがめて言う。
そんなの、仕方がないじゃない!
私は貴方のなんなのよ。婚約者でしょ。
「どうして平民のっ、コルトなんか構うのよ!」
「……、コルトなんか? っ、そんなこと君にいわれることじゃない。……はっきり言うよ。もう僕との婚約は破棄してほしい。………、コルトが好きなんだ。愛している。」
は?
その言葉に頭が真っ白になった。
「なにを言っているの! 破棄ってどういう……。」
「そのままの意味だよ。僕はもうコルトを愛してるんだ。王子として平民を愛してしまうなんておかしいってわかってる。でももう止められないんだ。」
うそでしょ?
なにも言葉がでなかった。どうして、どうしてこんなことに。
「レミリア嬢、すまない。君との婚約は破棄させてもらう。この件は僕から国王、ならびに関係者へ伝えるよ。… …、さよなら。」王子が何か言って、去っていった。
引き留めるすべもなく立ち尽くす。
栗色の巻き毛。少しつんつんとした髪。
貴方は毛直しに時間がかかると言ってきらっていたけれど、私は可愛らしくて好きだった。
きらきらと輝く翠眼が、私をうつしてくれると自分まできれいになれたようで嬉しかった。
私の歩幅を気にして、後ろを振り返って手を引いてくれるあなたが好きだった。
それなのに。
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こんな形で終わってしまうなんて許せない。
愛しているんです。貴方を。
貴方だけを…………。
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