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「アル? ほんとに着替えなくていいの?」
「……いらねぇよ。問題ない」
アルをさっき彼が倒れていた洞窟へ案内しながら、僕は尋ねた。
僕の少し後ろを歩く彼は、身体の縮む前の服を着ているから、袖は長いし、裾はダボダボだ。
何回か折り込んで短くしているみたいだけど、転げたら可哀そうだし、心配だ。
危ないから僕の服を貸すと言ったけど、さっき僕が笑ったことを根に持っているのか、素っ気ない風にいらない、と言われしまった。
洞窟がある森は、家から少し離れた場所にある。
魔獣も出るし、村の人はあまり寄り付かない場所だ。
村の人とは極力会いたくないから、仕事場にはぴったり。
理由はそれだけじゃないけど。
「おい、この洞窟か?」
「うん。アルが倒れてたのはここらへんだよ」
例の洞窟に着き、僕は入り口付近を指さす。
アルはその指の先をじーっと目で追って、なるほど、とつぶやいた。
「この魔力の色、やっぱり見たことがある。あれはこの土地のものだったのか」
「なにかわかったの?」
地面に座り込んでいるアルの隣に、僕も座る。
「あぁ、俺がここに飛ばされたのは、やっぱりあのへぼやろうのせいだった。魔法陣にミスがあったんだ。…あの花………、この土地と同じ魔力を持ってた。魔法陣のミスで、本来のものと違う魔力をとらえてしまったんだろうな」
うん、うん。なるほど。
「…………。ごめん、どういうこと?」
アルは、地面に向けていた視線を上げて僕を見た。
「……、要するに、魔法陣が本来作用するはずの魔力ではなく、この土地由来の魔力に作用してしまったために、テレポートの場所がこの場所になってしまったってことだ。この土地は極端に魔力量が薄いから、俺の身体はその魔力量に順応できる身体の大きさにされた、っていう感じだろう」
「な、なるほど。っていうか魔力の色なんてわかるの?そんなこと聞いたことないけど……」
「あぁ、俺は生まれつき魔力の色を見分けられるんだ。質にも量にもよるけど、大抵見分けがつく」
「へぇ、すごいんだね」
魔力が視える人がいるなんて聞いたことがない。
それは一体どんな世界なんだろう。
少しうらやましい気もする。
「こっちからは帰れないの? そのテレポートで」
「今の俺の魔力量じゃ無理だな。テレポートにはかなりの魔力が必要だ。魔力量を増やそうにも、今の身体はこんなだし…。容量を超える魔力は溜めておけない」
うーん。
それはやっかいだなー。
「なるほど。でも魔力量の多い土地に行ったからって身体が戻るわけでもないよね」
「そうだな。今俺の身体は魔法陣を利用したテレポートの副作用にかかってるみたいなもんだから、もう一度同じ種類の魔法陣を潜って、その作用をもとに戻すしか現状手はないと思う」
「うーん、そうだね。それなら変に動かずに向こうからの連絡を待ったほうがいいね」
僕がそう言ってアルを見ると、彼は目を大きくしてちょっと驚いたような顔をして僕を見た。
「お前、バカなのか賢いのかわからねぇな」
「バカじゃない! と思う……。魔法は……、少し勉強した程度だよ。学校に通ってたから」
「そうなのか」
感心したように頷くアルに、苦い気持ちになる。
「うん。……よし! じゃあ、アルは僕の家で向こうの人たちを待つんだよね」
なにも思い出したくなくて、アルに声をかける。
「あぁ、そうさせてもらえると嬉しい」
「じゃあ、とりあえず家に帰って着替えよう。その恰好僕が気になる」
「いや、俺はこのままで」
「着替えもないでしょ。ずっとその服着てるの?」
僕の言葉に途端、むすっとなるアルにまた吹き出しそうになる。
「とりあえず家に帰ろう。話はそれから」
横に座り込んでるアルになんとなく、手を伸ばす。
アルの手に自分の手を重ねようとすると、アルの少しふっくらした頬が赤く染まり、眉間にはしわが刻まれていく。
「……っ、俺は子供じゃねぇ! 子供あつかいすんな!」
「あ、ごめん。無意識に」
やばい。
なぜか無意識に手をつなごうとしていた。
さっき機嫌が治ってきたばかりなのに、また怒らせてしまったようだ。
「アル、わざとじゃないんだよ」
「うるせぇ」
アルはそう言って、家のほうへ機嫌悪く歩いていく。
その様子がなんだか可愛くて、僕は頬をむにむにしながら小さな背中を追った。
「……いらねぇよ。問題ない」
アルをさっき彼が倒れていた洞窟へ案内しながら、僕は尋ねた。
僕の少し後ろを歩く彼は、身体の縮む前の服を着ているから、袖は長いし、裾はダボダボだ。
何回か折り込んで短くしているみたいだけど、転げたら可哀そうだし、心配だ。
危ないから僕の服を貸すと言ったけど、さっき僕が笑ったことを根に持っているのか、素っ気ない風にいらない、と言われしまった。
洞窟がある森は、家から少し離れた場所にある。
魔獣も出るし、村の人はあまり寄り付かない場所だ。
村の人とは極力会いたくないから、仕事場にはぴったり。
理由はそれだけじゃないけど。
「おい、この洞窟か?」
「うん。アルが倒れてたのはここらへんだよ」
例の洞窟に着き、僕は入り口付近を指さす。
アルはその指の先をじーっと目で追って、なるほど、とつぶやいた。
「この魔力の色、やっぱり見たことがある。あれはこの土地のものだったのか」
「なにかわかったの?」
地面に座り込んでいるアルの隣に、僕も座る。
「あぁ、俺がここに飛ばされたのは、やっぱりあのへぼやろうのせいだった。魔法陣にミスがあったんだ。…あの花………、この土地と同じ魔力を持ってた。魔法陣のミスで、本来のものと違う魔力をとらえてしまったんだろうな」
うん、うん。なるほど。
「…………。ごめん、どういうこと?」
アルは、地面に向けていた視線を上げて僕を見た。
「……、要するに、魔法陣が本来作用するはずの魔力ではなく、この土地由来の魔力に作用してしまったために、テレポートの場所がこの場所になってしまったってことだ。この土地は極端に魔力量が薄いから、俺の身体はその魔力量に順応できる身体の大きさにされた、っていう感じだろう」
「な、なるほど。っていうか魔力の色なんてわかるの?そんなこと聞いたことないけど……」
「あぁ、俺は生まれつき魔力の色を見分けられるんだ。質にも量にもよるけど、大抵見分けがつく」
「へぇ、すごいんだね」
魔力が視える人がいるなんて聞いたことがない。
それは一体どんな世界なんだろう。
少しうらやましい気もする。
「こっちからは帰れないの? そのテレポートで」
「今の俺の魔力量じゃ無理だな。テレポートにはかなりの魔力が必要だ。魔力量を増やそうにも、今の身体はこんなだし…。容量を超える魔力は溜めておけない」
うーん。
それはやっかいだなー。
「なるほど。でも魔力量の多い土地に行ったからって身体が戻るわけでもないよね」
「そうだな。今俺の身体は魔法陣を利用したテレポートの副作用にかかってるみたいなもんだから、もう一度同じ種類の魔法陣を潜って、その作用をもとに戻すしか現状手はないと思う」
「うーん、そうだね。それなら変に動かずに向こうからの連絡を待ったほうがいいね」
僕がそう言ってアルを見ると、彼は目を大きくしてちょっと驚いたような顔をして僕を見た。
「お前、バカなのか賢いのかわからねぇな」
「バカじゃない! と思う……。魔法は……、少し勉強した程度だよ。学校に通ってたから」
「そうなのか」
感心したように頷くアルに、苦い気持ちになる。
「うん。……よし! じゃあ、アルは僕の家で向こうの人たちを待つんだよね」
なにも思い出したくなくて、アルに声をかける。
「あぁ、そうさせてもらえると嬉しい」
「じゃあ、とりあえず家に帰って着替えよう。その恰好僕が気になる」
「いや、俺はこのままで」
「着替えもないでしょ。ずっとその服着てるの?」
僕の言葉に途端、むすっとなるアルにまた吹き出しそうになる。
「とりあえず家に帰ろう。話はそれから」
横に座り込んでるアルになんとなく、手を伸ばす。
アルの手に自分の手を重ねようとすると、アルの少しふっくらした頬が赤く染まり、眉間にはしわが刻まれていく。
「……っ、俺は子供じゃねぇ! 子供あつかいすんな!」
「あ、ごめん。無意識に」
やばい。
なぜか無意識に手をつなごうとしていた。
さっき機嫌が治ってきたばかりなのに、また怒らせてしまったようだ。
「アル、わざとじゃないんだよ」
「うるせぇ」
アルはそう言って、家のほうへ機嫌悪く歩いていく。
その様子がなんだか可愛くて、僕は頬をむにむにしながら小さな背中を追った。
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