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少年はまず名前を教えてくれた。
アル、というらしい。
容貌と着ているものから全く平民には見えないが、何か言えない事情があるのだろうとそれ以上は聞かなかった。
アルは、この国エスターサ王国の反対側、約2万キロ離れた国シーべニア王国から来たという。
ある事件に巻き込まれ、魔法陣を渡ってこの国に来てしまったのだろう、と彼は言った。
「俺もまだよくわかってないがそうとしか考えられない。ここがほんとうにエスターサ王国なら、俺はま魔方陣でテレポートしてきたんだ」
「てれぽーとって?」
「まぁ簡単にいうと瞬間移動だな。2つのはなれた場所を瞬時に移動できる」
「はあ………」
よくわからないまま相槌を打つ。
離れた場所から瞬時に移動することができる力なんて……。
そんなもの聞いたことがない。
僕だけじゃない。
この世界のどこにもそんなことをできる人はいないはずだ。
「テレポートについては国でずっと研究を続けてきたんだ。瞬間移動なんて人類の夢だろ。……まぁ、今回はただの事故だけどな」
なんてことだ。
瞬間移動という夢のようなことをずっと研究していた国があって、今回それに成功しているなんて!
「え、事故? でもこっちにこれたなら成功じゃないの?」
すごい偉業を目の前に興奮する僕の言葉に、アルは呆れたような目を向けた。
「あほ。考えてみろよ。俺はシーべニア王国からきたんだぞ。こんなこと、この国の人間に知られたらどうなるか。一瞬のうちに自分の国へ不法入国されてるんだぞ」
「あ、たしかにそうだね」
「だからお前も絶対だれにもいうなよ。俺がここにいること。こんなことが国に伝われば戦争になりかねない」
12歳ほどに見えるアルの口から戦争なんて物騒な言葉が出て驚く。
彼は何者なんだろうか。
「それに……、俺はこんなテレポートみとめねぇ。身体がおかしくなるテレポートなんて」
「えっ! どこか身体いたいの!」
「え、いや痛いんじゃねぇよ」
「じゃあなに!」
まさかどこか怪我でもしていたのか?
そう気になって詰め寄る僕に、アルは観念したように口を開いた。
「身体が小さくなってんだよ! 俺は20だぞ! なのにこんなガキみてぇになっちまった」
「え! 20! 嘘だろっ」
「うそじゃねぇ! たぶん魔法陣が未完成だったせいで、この土地の魔力量にあわせて身体が小さくなっちまったんだ! あのへぼやろう! 今度会ったら絶対ゆるさねぇ」
またも恐ろしいことを聞いてしまった。
20歳だって!
アルが?
12歳くらいしか見えないのに、信じられない。
外見は可愛い天使みたいなのに……。
身体が縮んで若返るなんて、そんな非現実的なこと……。
「しんじられない……」
「俺だって信じたくねぇよ! だけど現実に小さくなってんだ。しかたねぇ。……だからお前に頼みがある」
頼み?
さっきもそんなことを言っていた。
「うん? なに?」
「しばらく俺をここにおいてくれねぇか。なんでもする。…さすがに海をわたり山をのぼって帰るには、遠すぎる。あっちからの連絡を待つほうが現実的だと思ってな」
「まぁ、それはいいけど」
アルが倒れているのを見つけて家に連れてくるときに最後まで面倒をみようと一応覚悟は決めていた。
まさかアルが本当は20歳だなんて思わなかったけど……。
って、そうだ20歳なんだ!
「ちょ、アル! 君バース性は!?」
「俺か? アルファだけど」
「アルファ!?」
「うおっ!? なんだよ!」
思わずアルから距離をとる。
その拍子に、棚に飾ってあった瓶が倒れ、ガチャーンと音を立てた。
アル、というらしい。
容貌と着ているものから全く平民には見えないが、何か言えない事情があるのだろうとそれ以上は聞かなかった。
アルは、この国エスターサ王国の反対側、約2万キロ離れた国シーべニア王国から来たという。
ある事件に巻き込まれ、魔法陣を渡ってこの国に来てしまったのだろう、と彼は言った。
「俺もまだよくわかってないがそうとしか考えられない。ここがほんとうにエスターサ王国なら、俺はま魔方陣でテレポートしてきたんだ」
「てれぽーとって?」
「まぁ簡単にいうと瞬間移動だな。2つのはなれた場所を瞬時に移動できる」
「はあ………」
よくわからないまま相槌を打つ。
離れた場所から瞬時に移動することができる力なんて……。
そんなもの聞いたことがない。
僕だけじゃない。
この世界のどこにもそんなことをできる人はいないはずだ。
「テレポートについては国でずっと研究を続けてきたんだ。瞬間移動なんて人類の夢だろ。……まぁ、今回はただの事故だけどな」
なんてことだ。
瞬間移動という夢のようなことをずっと研究していた国があって、今回それに成功しているなんて!
「え、事故? でもこっちにこれたなら成功じゃないの?」
すごい偉業を目の前に興奮する僕の言葉に、アルは呆れたような目を向けた。
「あほ。考えてみろよ。俺はシーべニア王国からきたんだぞ。こんなこと、この国の人間に知られたらどうなるか。一瞬のうちに自分の国へ不法入国されてるんだぞ」
「あ、たしかにそうだね」
「だからお前も絶対だれにもいうなよ。俺がここにいること。こんなことが国に伝われば戦争になりかねない」
12歳ほどに見えるアルの口から戦争なんて物騒な言葉が出て驚く。
彼は何者なんだろうか。
「それに……、俺はこんなテレポートみとめねぇ。身体がおかしくなるテレポートなんて」
「えっ! どこか身体いたいの!」
「え、いや痛いんじゃねぇよ」
「じゃあなに!」
まさかどこか怪我でもしていたのか?
そう気になって詰め寄る僕に、アルは観念したように口を開いた。
「身体が小さくなってんだよ! 俺は20だぞ! なのにこんなガキみてぇになっちまった」
「え! 20! 嘘だろっ」
「うそじゃねぇ! たぶん魔法陣が未完成だったせいで、この土地の魔力量にあわせて身体が小さくなっちまったんだ! あのへぼやろう! 今度会ったら絶対ゆるさねぇ」
またも恐ろしいことを聞いてしまった。
20歳だって!
アルが?
12歳くらいしか見えないのに、信じられない。
外見は可愛い天使みたいなのに……。
身体が縮んで若返るなんて、そんな非現実的なこと……。
「しんじられない……」
「俺だって信じたくねぇよ! だけど現実に小さくなってんだ。しかたねぇ。……だからお前に頼みがある」
頼み?
さっきもそんなことを言っていた。
「うん? なに?」
「しばらく俺をここにおいてくれねぇか。なんでもする。…さすがに海をわたり山をのぼって帰るには、遠すぎる。あっちからの連絡を待つほうが現実的だと思ってな」
「まぁ、それはいいけど」
アルが倒れているのを見つけて家に連れてくるときに最後まで面倒をみようと一応覚悟は決めていた。
まさかアルが本当は20歳だなんて思わなかったけど……。
って、そうだ20歳なんだ!
「ちょ、アル! 君バース性は!?」
「俺か? アルファだけど」
「アルファ!?」
「うおっ!? なんだよ!」
思わずアルから距離をとる。
その拍子に、棚に飾ってあった瓶が倒れ、ガチャーンと音を立てた。
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