僕の家にアルファがやってきた

白雨あめ

文字の大きさ
上 下
4 / 8

3

しおりを挟む
少年の疑問は至極当然のことだ。

「自己紹介が遅れてごめんね。僕はルイス。よろしく」

「ルイス?」

僕の名前を呼びながら、首を傾げる少年は可愛かった。
金髪に碧瞳。
顔の造形も完璧に整っていて、まるで絵画にでてくる天使のようだ。

「ルイスってだれだ」

「ん? いや、えっと僕がルイス」

「は? お前がルイス?」

「あ、うん。僕がルイス」

僕がそう言って頷くと、少年は顎に手を当てどこか考え込むような仕草をした。

「君、大丈夫?」

「ちょっと待て、いま考えてる」

少年の顔を覗き込もうとする僕を、止めるように出された少年のやや小さい手。

しばらくそのまま考え込んでいた少年は、まず自分の身体、次に僕、最後に僕の家の中をぐるりと見回した。
そして、またもその大きな目をもっと大きくして、はあ!? と大声を上げた。

「わっ! 今度はなにっ!」

驚いて再び尻もちをついた僕にかまいもせず、少年はベッドから降りるとぶかぶかの服を脱ぎ捨て全裸になった。
頭の位置が、僕の胸くらいの大きさだった。

「な、な、な……なんだこれ! なんだよこれっ。なんで小さくなってんだ! どうなってる!」

そう叫ぶとはっ、としたように僕を見て、

「お前はなんなんだ!」

と聞いていた。

僕はルイスだよ、と答えると少年は、そういうことじゃねぇと唸るように言いながら、頭を抱える。


酷く混乱しているような様子が可哀そうなので、彼のためにひとまずココアを作ってみた。

こういうときは温かい飲み物でも飲んで落ち着いたほうがいい。
ココア、嫌いじゃないといいけど。

「あの、ココアあるよ。飲む?」

床の上に膝を抱えるように座る少年に声をかけてみる。
裸なので非常に目のやり場に困る。

「…………」

少年はしばらく無言でココアから立ちのぼる湯気を見ていたが、少年を見る僕の視線に気づくと、わるい、と言ってカップを手に取った。

「飲む前に服着たほうがいいかも。風邪ひくよ。まだちょっと肌寒いし」

春になったばかりの気候で、裸は寒いだろう。
僕もなんか接しずらいし。

少年は僕の言葉に黙って頷くと、カップを近くの椅子に置き、いそいそと服を着始めた。

白いシャツと黒い革っぽい上着。
下も黒いズボンで統一されていた。
服にはところどころ刺繍がされており、僕の目が確かならかなり値がはるのではないかと思う。

服を着終わった少年はココアを置いていた椅子に座ると、ずずっと一口ココアを飲んだ。

「うまいな」

「そうかな。それはよかった」

少年の素直な感想に喜んでいると、彼はそのまま続けた。

「さっきは取りみだした。わるい。まさかこんなことになってるなんて思ってなかった。今でもしんじられねぇ。はぁ……、お前、たすけてくれたんだよな」

「うん、一応そのつもり。助けになったかは微妙だけど」

「いや、助かった。ありがとう」

頭を軽く下げてお礼を言われる。
胸のほうがほわほわと暖かくなるような不思議な感じがした。

「えっと、それで大丈夫なの? さっきはすごい混乱しているみたいだったけど」

僕の言葉に少年はもう一口ココアを飲むと、テーブルの上に置いた。

「全然だいじょうぶじゃねぇ。……、そうだ、ここはどこなんだ? まだ国内だとありがたいんだけどな」

「国内? ここはエスターサ王国の田舎町だよ。マーサ村っていう」

「エスターサ王国!?」

ガタンと少年は思わず、といった風に立ち上がった。

「うん、そうだけど」

「ま、まじかよ……。そんな遠くまで……。てか反対側じゃねぇか! しんじられねぇ、あのへぼやろう!」

絶望したと思ったら、突然怒り始める少年。

とりあえず事情を教えてもらわなくては協力もできないのだが。

「くそっ、……しかたねぇか」

そう言って顔を上げた彼は、その綺麗な碧瞳で僕の顔をじーっと見ると、頼みがあるとそう言った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく
BL
ファンタジーな世界で第二王子が総受けな話。 ボーイズラブ BL 趣味詰め込みました。 苦手な方はブラウザバックでお願いします。

R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)

黒崎由希
BL
   目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。  しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ? ✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻  …ええっと…  もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m .

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

処理中です...