僕の家にアルファがやってきた

白雨あめ

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「ふぅ」

シグーンを目標数仕留め、鞄の中に収納する。

そんなに大きくないと言っても数が増えればそれなりの重さだ。
引きずるようにして歩く。

そろそろお腹が空いてきた。
朝おきてから何もたべてない。

どこかに腰かけてお昼でも食べようかとあたりを見回りしていたら、ふと視界に光るものが見えた。

あれは……。

よく見ようとさっき光が見えた洞窟のほうへ近づく。

なんだ?

恐る恐る近づいていくと、小さい洞窟の入り口付近に少年が倒れているのを発見した。

「えっ! 人っ!」

驚いて思わず、叫んでしまう。
こんなところに人が倒れているなんて!
すごくびっくりした。

「死んでは、いなよな?」

とりあえず少年の腕に手を当てて脈を確認する。

よかった、脈はあるみたいだ。
死んではいない。

生きていることに安心しながら、少年の身体を観察する。
外傷と言えるようなものはとくに確認できない。
それよりも、少年の着ている服が奇妙だった。

「なんで、どれも一回り大きいんだ?」

少年の着ていた服はどれも少年の身体より一回り大きくぶかぶかだ。
纏っている服も、こんな田舎では誰も着ていないだろう高価そうなものだった。

よくわからない事態に困惑するも、このままにしておくわけにもいかない。

仕方ないか。

「よいしょ」

右手にシグーン、左手に少年を抱え、帰路時を急ぐ。

「おもい…」

途中何度も少年を抱えなおしながら、額に汗をかきながら、やっとの思いで家についた。

「はぁ、はぁ」

ドアを開け家に入る。
一つしかないベッドにひとまず少年を降ろす。

「はぁ、……重かった」

少年はベッドに降ろされる衝撃でも目覚めなかった。
外傷はないが、ここまで起きないとなると心配だ。
医者にみせたほうがいいのだろうか?
だが医者に見せるとなると隣街までいかなければならないし。

僕がいろいろと考えを巡らせていると、突然ぱちっ、と少年の目が開いた。

「わっ!」

び、びっくりした。

驚きすぎて尻もちをついてしまった。

は、はずかしい。

急速に熱をもつ頬を手で隠しながら、立ち上がる。
少年は、大きな碧瞳で僕を見ていた。

「ええっと、気づいたんだね。よかった。君が森に倒れてから僕の家に連れてきたんだ。大丈夫? 痛いところとかない?」

歳は12,3才といったところだろうか。
子供の丸みは抜けつつあるが、大人というにはまだ幼い顔だちをしていた。

「えっと、大丈夫?」

優しく話しかけてみるが、ぼーっとこっちを見てくるだけで反応がない。
もしかして話せない子、なのだろうか?
起きたばかりでぼーっとしているだけ?

考えても仕方ないので僕も少年を見つめてみる。

すると、少年の大きな目がさらに大きく見開かれ、赤く色づいている小ぶりな口が開いた。


「お前だれだっ!」



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