アーテ王女の冒険における奇跡をおこなう国 すなわち「人間」・大学・企業および社会システム 社会システムの一般放送関係批判1

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第一章其の二

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* * *

 アーテ王女が目指したのは、どこだろう。魔界である?
 そこまでの旅は、実に奇妙だった。
 まず、いくつかの門、扉をくぐりぬけ、家に入った。
 家に入ると煙突から抜け出し、町の空に上がる。
 すると、地面がひっくり返ったのか、上下が逆転し。
 アーテ王女は地中へのたびへと移った。
 地中。木の根っこ。
 砂利、ドロ、砂。
 さまざまな地層を経て、今度はマグマの中にはいる。
 入ったマグマは、ひっくり返り、アーテ王女を迎えた。
 やがて、のまま飛んでいると、再び地層をへて、地表から上がると薄暗い紫色の空が、そこにはあった。
 アーテ王女が黙ってみていると、アーテ王女は地表面にたたきつけられる。
 そこには灰色がかった砂があって、アーテ王女を、やさしくもたたきつけられた衝撃を迎えた。
 腕が、脱臼するかとおもった。
 しばらくそのまま。
しかし、やがてアーテ王女はぶらぶらと立ち上がった。
 さて、ここはどこだ? いや、魔界。
 アーテ王女が周りを見ていると、荒野である。
 どこかの砂浜だろうか。しかし、塩のにおいはしない。
 だが、どこから流れ着いたか、奇妙な流木が何本かあって、それに貝殻、そこはまるで海岸を思わせた。
 アーテ王女があたりを伺うと誰かいる。
一人の少年を見つけた。
 少年は、アーテ王女が気がつくと、たぶん拾い集めていた木の切れ端を放り出して、逃げ去っていく様子であった。
 何か、わけのわからない国の言葉を使っている。
「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女が追うとちょうど少年は、ひとつ砂丘を越えたあたりを走っていた。
 向こうに村か何かあるのだろうか。
 アーテ王女は仕方なく、少年が落としていったまきを拾い、そちらの方向へ歩いていった。
 村。
 アーテ王女が発見したのは、岸壁の間にたたずむ、ちいさなちいさな村だった。
 岸壁は、濃い紫色。
 アーテ王女が歩いていくと、岸壁に、降りられそうな階段状の石垣があることに気がついた。さっきの少年は、ここから降りていったのだろうか。ほかに、降りられそうな場所がなかったから、そのようだった。
 しかし、どうしてこんな場所に、村を作ったのだろう。
 それはわからなかったが、アーテ王女には、行動があった。
 とにかくまずは、人にあうこと。もしかしたら、その人たちが『古代の魔術』について、詳しく知っているかもしれない。さっきの少年の叫び声からすると、話のわかりそうな人間は、見当たらなかったが、住人に、一人ぐらいは話せるものがいるかも知れない。アーテ王女が歩みを進めると、村は、大きな町ぐらい大きさであることがわかった。
 町の入り口?
 標識。
 ・・・・・・タウン?
「・・・・・・・・・・・・」
 読めなかった。
 果たして話が出来そうな人間はいるだろうか。
 アーテ王女は歩みを進めた。
 町の中央付近に接近。
 アーテ王女が近づくと、なにやら町の連中が、ぞろぞろ現れ、アーテ王女を迎え入れた。
 アーテ王女が黙ってその様子を見ていると、なにやら年寄りが一人、アーテ王女の前に出現した。
 町長?
「!“##$$%%$%#&”$%‘!&(!&“$」
「・・・・・・・・・・・・」
 老人は、アーテ王女が話がわからないことを理解すると、今度は、
「###%$#&$#%&#$‘#“&”’&“YWREQH」
 また、なにやら声色を変えた。
「あんたは何者で、いったいどこからきなすった」
 やっと聞き取れる言語で話してもらって、アーテ王女は安心した。
 ここはどこ? それにおじいさんは誰?
「ここは魔界。魔界の王国。あんた、そんなことも知らんで、どうしてここに来よったのかな」
 アーテ王女が薪を地面に落としながら答えると、
「なんだって、では、例の、あの伝説の力を持ったもの、それがあんたなのかね?」
 あの? 伝説の力?
 それって竜?
「おどろきじゃ」
 すると、今度は、おじいさんは、町の衆に、
「“$”%#&$#&&!&#‘!&“QYW$#’$#&”Q」と、何事か並べ立て、今度はアーテ王女に、対して、「来なすった、来なすった。わしらがまっとったお人が来なすった。みなの衆」
 すると、何やらみなの衆は、おどろき、ふためき、何かをお祝いをする気配であった。
「わしらは今の今まで、あんたが来るのをまっとったんじゃ。こんな中間の世界におって、自身の同一性もわからず、どうして暮らしたらええのかわからんかった。それが、今はわかる。あんた、あんたは奇跡の人。いいかね?」
「・・・・・・・・・・・・」
「あんたは奇跡の人。ここから北にいったところに城がある、そこにいる、ゾラゴン大帝を、あんたは葬りに来た人じゃ。頼んだぞ、わしらの生活を、悪そり、尊ぶあの伝説の魔王に、鉄槌を下しに来たもの。心していくがよい」
「・・・・・・・・・・・・」
 どこに?
「北の山の城じゃ」
 どうして?
「あんたが、千年に一度現れる神童じゃからじゃよ」
 でも、あたしはそんなこと知らない。
 大帝倒したければこの中の一人が、倒しに行けば?
「あんた、もののわからんお人じゃ、わしらに敵うわけないじゃろう。こういうことは伝説の勇者の到来を待って、そうして倒してもらう、そういうものじゃ。いいかね、あんたは伝説の勇者。きっと大帝を、倒して、この、わしらのささやかな生活に、希望と、活気を与えてくれるだろう」
 でも、わたしには目的がある。
 魔術。伝説の古代の魔術を探して、この場所に来ました。
「それを探すほうが、わたしには大切です」
「そんなことをいわずに、どうかひとつ、北の山の城まで行ってくれ、そうして倒して来はくれないかの? 伝説の大帝じゃ、ほかに倒せるものがおらん。どうにか、頼むよ」
 アーテ王女は断りきれず、とりあえず、北の山を目指すことにした。
 そこには、この町の人々を苦しめる、大帝がいるという。
 いや、ゾロゴン。
 果たしてどうか。
 アーテ王女が町の外に向かうと、あとから一人の少年がやってきて、アーテ王女に棒をわたした。
 これはなに?
 聞くと、少年は何も言わずに去っていった。
 これで戦えというのだろうか?
 木の棒。

(「伝説だって、少しそんなのみんなでたらめさ少しよそ者がやってくると、すべて伝説として、伝説の火竜に向かわせるのさ」)

「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女がどうしようか悩んでいたが、何をすることもない。
 とにかくまずは、その大帝とやらの場所にいってみようではないか。
 行動。
 しばらくすると、北。
 少しいったところになるほど、小高い丘の上に、大きな城が建っている。
 大帝。
 どんなに恐ろしいのだろう。
 アーテ王女がそんなことをおもいながら城へと向かった。
 城の前。
 アーテ王女が城門に立つと、

(「王女、アーテ王女」)

「・・・・・・・・・・・・」
 何かがアーテ王女を呼んでいる。

(「王女、アーテ王女、この世の闇を見に来しもの」)

 誰?
「大帝」
「大帝?」
「そう。この世界の最後に存在し、この世界の闇を、すべて、持っているもの」
「その大帝?」アーテ王女は、強きでいった。「が、・・・・・・」
「なんだ」
「どうして弱きものを虐げているの?」
「答えは、簡単。つまり、力が支配する場所、それが、魔界」
「力があれば、なにをしても」アーテ王女は、なおも、強気でいった。
 ここは、自分の知っている世界とは、別の場所、そのことが、アーテ王女を、強気にしていたのだろうか。とにかくアーテ王女は、その「敵」を、恐れることなく、迎えることが出来た。
「われに対決してもらいたいと、そのように申すか」
 別に。
「なんだと。では、いったいここになにをしにきた」
 アーテ王女は、素直に答えた。つまり、こういうこと。
「魔界を支配している恐ろしい、存在があるから、それを対峙してほしいと、そのように、いわれ、ここまで来た、そういう事情」
 簡単でしょ?
「この恐ろしい大帝に、勝負を申しいれに来たと、申すか」
 だから、そうではない。ただ。
「この世で一番恐ろしいといわれているものが、どういうものであるのか、見たいなことには関心がない。問題は、つまり簡単なこと。すなわち・・・・・・」
「なんだ」
「あなた本当に強いの?」
「なんだと」
「だから、・・・・・・強いの?」
「なにをいっているんだ。地獄の世界に君臨する大帝だぞ。それが、弱いわけがないだろうが。なにを、わけのわからないことをいっているのだ。この子は」
「じゃ、勝負しましょうか」
「勝負?」
「そうです。魔術戦」アーテ王女は、にっこり微笑んだ。
「馬鹿な地獄の大帝だぞ。それと、魔導師戦をおこなって、勝てるとおもっているのか」
「わかりませんが、どういうことだか、わかる気がします」
「いいんだな、地獄の大帝だぞ、それを、向こうに回して、勝てると? そういうのか」
「あなた」
「なんじゃ」
「本当に強いの?」
「馬鹿な、本当の本当に、地獄の帝王だぞ。無茶苦茶強いと評判なんだぜ」
「だけど、見てみなくちゃ本当のところは分らない」
「うむ。そうか、そう申すか」
「どうします?」
「よかろう。はいってきなさい」
「勝負?」
「いいからはいって来なさい」
「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女は、その場に立ちつくし、どういう対応を取ったらよいか、考えて、そうして、とりあえず、ここは、地獄の大帝とやらにしたがうことにした。
 扉が開く。
 はいると、そこは城壁の中。また、前方に、扉がある。
 それにもはいれというのだろうか。
 扉は、アーテ王女に、入れといわんばかりに、すっと、開いた。
「・・・・・・・・・・・・」
「よいのだな。本当に、その扉に入ったら、二度とは戻れぬかも知れんのだぞ」
「ま、いいかな」
「気楽なやつ」
 どういうことになるかは、神様だけが知っている。
 アーテ王女は、扉にむかって歩いていった。
 はいる。
 すると、なかには、おかしな気配が漂っていた。
 まず、狭そう。しかし、中は真っ暗で、何も見えない。ただ、濃密な気配だけが、漂っているのである。
 何かがいる。魔導師のアーテ王女には、わかられた。
「ようこそ、地獄の世界へ」
「・・・・・・・・・・・・」
「では、地獄のショウをお見せしよう」
 すると、どこからともなく軽快な音楽が流れてきた。
「ふふ、ふふん、ふふ、ふふん、ふんふん」
「?」
「マジックバット」
 すると、なにやらおかしな仮面をしたものが、登場し、ダンスとともに、おかしな棒とともに、踊り始めた。
 しばらく続く。
 すると、今度は、火の輪をもった、人物が登場する。人物は、何か、踊りをすると、火の輪とともに、去っていった。
 おかしなことだと思ったのは、それにともない歓声が起こったことである。火の輪が人物の周辺を焦がすたびに、どこからともなく拍手が沸いていた。
「どうだね、アーテ君。君に、この意味が分るかね」
「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女は、だまっていた。
「お次はトラ使いだ」
 トラ使い?
 すると、鞭を持った人物が登場し、なにやら、ダンスを始める様子である。
 トラが出現した。
 すると、歓声が起こり、また、トラと人物が、交差するたびに、悲鳴がおこった。
 アーテ王女は、
「I call for the light.The light of the”raitonar binnkus”!!!(わたしは呼ぶ。光、ライトナー・ビンクスの光を)」
 周囲に閃光発生し、また、周囲に、闇がきれとんだ。
 あたりが、光源によって、照らされた。そうして出現したものがいた。
 一、二、・・・・・・四名の人間、そうして、トラ・・・・・・?
 トラは、光を見ると、おびえたようにして、去っていった。
「あらま」
「こりゃしまった」
「どうしよう」
「ねえ、トックヴィル」
「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女。
「この人本物の魔導師だよ」
「ああ、そうらしい」トックヴィルと呼ばれた人影。
「で、どうするんだ?」
「あの謎を解いたもらいましょうよ」
「そうだな、謎ね」
「謎?」アーテ王女。
「そうだな、それを目的として、やってきたんだ」
「解いてもらいましょうよ、きっとこの子なら出来るわ」
「何の話?」アーテ王女。
「そうだな、もともとは、魔導師を探してこうしてはじめたびっくりハウスだ。周りの住人たちがなんか知らんが騒ぐんで、それでもって、話は、終わってしまっていたが、もともとの作戦に戻る、いい機会ではないだろうか」
「そうよ、きっとこの子なら、いい回答を出してくれるわ」
「なんのこと?」アーテ王女。
「この世界のこと、なんでも聞きなさい、そうして、解いて、謎を」
「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女。
「いいな、そうだ、おれたち、もとの世界に帰れる」
「おれたちな」
「なに?」アーテ王女。
「旅のサーカス団。トラキラ・サーカス団。この世界にひょんなことから迷いこんで、どうにかして、逃げ出す道を探していたんだが、何しろ生きていくには、小銭がいろいろといりようだ。そうして、サーカスをはじめて生活の糧を稼ごうと、そういうことになったんだが、何しろ、何も外の世界、いや、おれたちは、昔いたところのことを、そう呼んでいるんだがね、で、行なわれていることに、まったく無反応な人間たちだろう? 何しろ、なんにしてもまったく物事を批判するということの出来ない人間たちだ、それだから、サーカスといわれても、わからない。いつの間にか、おれたちのことを、地獄の大帝だなんて、呼びやがる。いや、いくらか言語の勉強はしてね、何とか、ききとりだけは、出来るようになったんだけどね、だから、なんだか、わけがわからないうちに、どうやらおれたち、あがめられているような感じになってきて、まあ、そうすると、日々の糧には、困らない。そうすると、なんだか都合がいいような気がしてきて、そのまま、内部に潜入していったと、そういうわけさ」
「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女。
「トックヴィル。そんなことより、謎のこと」女性。
しかし、トックヴィルは、それを無視して、「紹介しておこう。われらがサーカス団員」
 別にいいですが。
しかし、トックヴィルの話は続くようだった。「まず、おれは、トックヴィル・ライラ。ライラってのは、曾爺さんのそのまたまえの爺さんの、名前なんだ、芸名といったところだね、ちなみに本名は、ラトキンズって言うんだ。実を言うと、ライラって、名前、ラトキンズに変えようとおもっているんだけど、その機会にめぐりあえなくてね、いまだに、ライラなんて、名前を名乗っていると、そういうことさ」
「ちょっと、トックヴィル」女性。
「ああ、わかっているよ、物には順序というものがある、まあ、待てよ」トックヴィル。
「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女は、関心がない。
「そうしておれにいま、話かけたこのサーカス団の紅一点。レイラ・リドリーを紹介しよう。彼女は、勇敢な、トラ使いにして、炎の業の持ち主」
レイラは、アーテ王女に会釈した。アーテ王女も、それに返す。
「そうして、こっちにいるデブが、魔法のバットを自在に操る、離れ業の使い手、リットン・ヘンビル」
 お辞儀、返す。
「で、最後に、そっちのほうにいるのっぽが、我がトラキラ・サーカス団の財務担当、ガンヘッド・マクナマン」
「自己紹介は、それまででいいわ」紅一点のレイラがいった。「それより謎よ」
「そうあせるなよ。何度も言わせるな。物事には、順序ってもんがある」
「いいわ、あたしが話すから」
「そうかい、レイラ。それならいいんだ」
「謎があるのよ」レイラ。
「なんの?」アーテ王女。
「そういえば、あんたの名前を聞いていなかった」トックヴィル。
「もう、トックヴィル」レイラ。
「なんていうの」トックヴィル。
 アーテ。アーテ・フォン・スベロヴィンスキー。
「フォン。・・・・・・大仰な名前だね、フォンだってさ」
「あんた王族か、なんか?」リットン。
「フォンというと、ドイツ系?」ガンヘッド。
「ま、そのようなものです」アーテ王女。
「でもスキーって、ドイツじゃないな、ロシアだ」
「ロシアでも、フォンって言うの?」
「詳しいことは知りません」アーテ王女、その辺を足でぶらぶらして、いった。
「まあ、いい、これからは、あんたのことは、アーテ王女って、呼ばしてもらおう」
「ねえ、トックヴィル」
「わかったよ、話せ」
「実はね。あたしたち、もとの世界に戻る方法を考案したのよ。でもね、それには、正真正銘本物の、地獄の帝王の作った壁を乗り越えなくてはならないのよ」
「壁?」アーテ王女。
「それは、魔術でしか破壊することが出来ない。強い、強い壁でね、どうしようかと、まよってたところなんだ」トックヴィル。
「で、あんたには、アーテ王女。その壁を吹っ飛ばしてもらいたい、そういうことなのよ」
「なるほど」
「実はね、その壁、この城の中にあるのよ」
「へえ」アーテ王女には、関心がない。
 それより、伝説の魔法の数々は、どこにあるのだろうか。いや、エンシャントレス。

(「われは魔術。貴様はおのれの力を試したいと、そのように申すか」)

「?」アーテ王女。
「どうした?」トックヴィル。
「いえ、何か聞こえなかった?」アーテ王女。
「空耳?」
「なんか、恐ろしいものをたたえる、地獄のそこにあって、それを実行する。ような・・・・・・」アーテ王女は、それをおびえた。

(「力を試す」)

「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女。
「なに」レイラ。
「壁」アーテ王女。
「どうしたい?」ガンヘッド。
 力を試す?

(「我がほうへきてれ、魔導師よ。そうして、それを乗り越えてみよ」)

「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女は、心の声で、反応した。
 力を得に来ました。

(「わが方へこい、魔導師よ」)

 大帝が魔術?

(「大帝?」)

「そういいました、村の人々は」
「何と話してんの?」レイラ。

(「人間とは困ったものだ、自身の知らぬものにレッテルを張り、その正体を知る前から恐れる。自身から遠のけようとする」)

 では、あなたは恐ろしい存在ではないの?

(「われは魔術。いつの日か、われを使用したいものが、われを呼び覚ましにやってくるのを待っていた、たまらぬ」)

 なにが?

(「おぬしの魔力じゃ。おぬしの魔力を、われにささげよ、さすれば、われはおぬしにその力を貸そうぞ」)

 のろい?

(「知っていたか。それはのろい。われらとの契約は、おぬしにはかり知れにない力を与えよう、しかし、良薬が、常に口辛しものであるように、それを持つものに、魔術の戒めを与える」)

「どんなの?」

(「それはわしにもわからん、ひとついえることは、強力な古代の魔術とは、そのどれもが、人間には重み、唱えるには難しものであるということ」)

「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女。
 では、わたしには唱えることが出来ないと?

(「ふむふむ、そうか、おぬしには、どうやら、わしは、激しい運命を与えようぞ。それは、どんなにどんなに逃れようと、やってくる、死のわな。強きもの」)

 なに?

(「強きもの。おぬしは自然、強き者である運命を与えられた身。その運命とやらがいやなのであれば、今、この場を去るがいい」)

 わたしは、強くなりたい、いや、帰りたい。
 もしも、帰ることが、強くなることにつながるのなら、仕方ありません。大帝。わたしは強くなります。

(「しかし、それは果てしない旅。その終わりが、どのような形でやってくるのかも、わからない。それでもお前は、自分の信じた道を行くと、そのようにいうのか」)

 帰るためなら、わたしはどんな運命でも受け取って、そうしてそれを自分の中で昇華します。

(「おぬしに出来るのか? わしを、自由自在に動かすことなど、どうじゃそれは波動。おぬしの波動とわしの波動との戦い。もしもおぬしの魂が、それにあまるものであるならば、おぬしの体は引き裂け、その魂は、五重のかなたへ飛んでいくだろう。それでも、おぬしはわしを得たいと、そのように申すか」)

 ひゃひゃひゃひゃ。

「?」

(「大帝」)

 別のもの、魔術? がいった。

(「こんな小娘に、何が出来るといいましょう。きっとこの娘は、おのれの運命に飲み込まれる身。たとえ一時、彼に魂を与えようと、それは一時的な付け焼刃に過ぎない。それより今、この場で賞味しようではありませんか。この娘の魂を、えぐり、裂き、そうしてわれわれで分配しようではありませんか」)

「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女。

(「待った」)

 と、別の声がいった。女である。

(「あたしは、この子に力を貸してあげてもいいとおもうな。きっとこの子はわたしたちを、次なる魔力まで導く身。きっとわたしたちに叶ったものを、与えてくれる」)

(「よいか」)

 と、大帝は、

(「おぬしは今、人生の岐路に立っている、もしもおぬしがわしらを手にするならば、人間などには得も知れぬ力を得ることになろう。しかし、それは闇。おぬしの体は毒の沼に半身つかったように、やがては蝕まれ、その運命にのろい殺されることとなろう。それでもおぬしはわしらを、その中に宿すというか」)

 それが運命なら、仕方ない。
 わたしはそれを受けます。

(「くどい。おぬしは運命というものがなんであるか、知った上で答えておるのか。何も知らぬ人間の子よ。おぬしはわしらを使いこなすと申すか」)

 巨竜はいいました。
 それがわたしの運命なら、逃げようとしても、逃がしてはくれません。
「巨竜? そうか、あの青二才、そんなことを言いおったか。よいよい」
 青二才?
 大帝はあの竜を知っているの?
 大帝は、

(「では、入るがよい。そうして一段ずつ階段を登り、おのれのその力を試せ、それこそが、おぬしの言葉、本当であることの証」)

「・・・・・・・・・・・・」アーテ王女。
 入っていいの?
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