アーテ王女の冒険における奇跡をおこなう国 すなわち「人間」・大学・企業および社会システム 社会システムの一般放送関係批判1

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第六章其の二 『奈落の世界の闘技場』2

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『奈落の世界の闘技場』

 ジルとアーテ王女が試合会場に着くと、試合は三回戦に進んでいた。
「きっとこの中に、あんたの土曜日の対戦者もいるわ。しっかりおさらいしておきましょう。相手は誰? どういう魔術を得意としているか? そうしてどういう対応を、あんたがするか? しっかり頭に入れておいて」
 アーテ王女が見ていると、試合は始まるらしかった。
 一人は火炎、一人はいかづち。
 勝ったのは火炎。
「あ」アーテ王女は、考えた。「あいつ・・・・・・」
「気がついたわね」ジルがいった。
「この前はじめてあなたをここに連れてきたときに、出ていたやつよ。火炎。三回戦に進んでいるわ。きっとこのあとも勝ち進んで、あなたとあたることになるかも知れないわ」
 ジルは、なにやらメモを取っている。優秀なトレーナーに当たってよかった。
 アーテ王女がおもっていると、
「しっかりして。どう? 勝てそう? あの火炎。ええと、バンペルト。結構な魔力を持っているみたいね。火炎をつかわせたら、あなたといい勝負。いえ、もしかしたら、もっと秘めたる能力を持っているかもしれないわ。隠しているのよ、あなたが見ていることを想定している。どう?」
「何?」アーテ王女は、いまいちその意味が分らない。
 こんなこと、それほどのものなのだろうか。生活がかかっているのだから、それもありかもしれないが。
「ヘルショットの面白さ、あなたにもわかる? ヘルショットはまさに頭脳戦。魔導師としての能力だけじゃないわ。こうして次の相手がどういう魔術を持っていて、そうしてどういう作戦で来るかなんてことを、しっかり理解したうえで、相手はむかってくるのよ。その頻度の重要性は、回が上がるごとに強くなる。つまり、下手な鉄砲を打つよりも、定められた一撃が、魔術の有無を決める、そういうこと」
 そうか。
 アーテ王女は感心した。
 ジルって本当にいいトレーナー。
 ジルに当たってよかった。
 アーテ王女がなおも感心していると、
「何を見ているのよ、試合が始まるわ。しっかり見といてね、次はあなたと当たるのよ、この人たち」
「そうね」
 アーテ王女は試合に注視した。

 帰路。
 列車内。
 アーテ王女は、ジルがとった、膨大なメモを発見した。
 ジルはメモをまとめている。
「すごい」アーテ王女は、感心した。「ジル、こんなにメモを取ったんだ」である。
「なにいってるの? のんびり感心している場合じゃないわ、あなた。あなた、わかっているの? どういう相手が、このあとあなたと当たるか。相手は誰でも相当な使い手よ。あなたに勝てそう?」
「わたしは大丈夫」アーテ王女はいった。
 自分の力を発揮することが出来れば勝てる気がするのである。
「あなたねえ・・・・・・」と、ジルがあきれた。「何度もいうけどね、相手はあなたのことを研究してくるのよ、ほかでもない、あなたを。それなのに、あなたの作戦といったら、自分の力を発揮する? それがなってないと、そういうのよ。作戦も何もなく、このあと戦ったら、あなたは百戦やっても、百戦負けるわ。これはね、あなたが出来そうな魔導師だからいうのよ。いいこと、己を知り相手を知れば、百戦してこれ危うからず。有名な孫子の文句よ。つまり、孫子の兵法が教えるのは、作戦をもって相手と戦いなさいってこと。あなた、それでも本当に、・・・・・・を、倒す気なの? 勝てないわよ、そんなことをしていたら、絶対あなたは命を落とす。いわれなかったわけ? あなたのあった、東の森の魔導師には。作戦」
「丸薬をもらった」アーテ王女は、電車の座席のうえで 、足をぶらぶらさせながらそれから答えた。「相手がどういう魔法を得意としているか、おしえてもらった」
「それで、あなたは安心したと、そういうわけ?」
「いけない?」
「もう、じれったい。あんた、本当に、この世界を変えて、帰る気があるわけ? もしもあんたが本気でここから帰りたいと、そういうなら、魔導師として、一流になるしかないのよ。そうしないと、・・・・・・には、到底勝つことが出来ない。わからないの?」
「わかるわよ」アーテ王女は、依然とぼけていた。
「本当に分っているの?」ジル。
「つまりこういうこと」
「何よ」ジルは一生懸命今日取ったメモを分類している。
「つまりね。しかし、相手がもしも真の魔導師なら、相手をどんなに研究しても無駄。負けるときは負ける、ということ」
「はあ?」ジルは、繭を潜めた。
「いいの。それがわかるのは、真の魔導師だけよ」
 ジルは黙った。
 そうして、今度口を開いたときは、「大きく出たわね、アーテさん。あなたはそれでいっぱしの魔術師気取り? いいでしょう、そういうと、あなたはこういうのね。つまり、ヘルショットなんて、ただのスポーツ。真の魔導師が行なうことではないと」
「かも知れない」
「ふうん、ただのスポーツね。いいわ。あなたがそういうなら、そうなんでしょう。だけど、あたしはあなたのトレーナーとして、明日も試合を調べに行くし、あさっても試合を調べにいくわ。いいわね、あたしはあたしの道を行く、あなたはあなたの道をお行きなさい。まったく、ぶつぶつ、ぶつぶつ」
 ジルはそうはいったが、アーテ王女のいったことに納得したらしかった。
 それ以上、メモを持って、口うるさく作戦を口にしなかったのが、その証拠である。

 翌日。
 ジルは昼近く、闘技場にむかった。
 アーテ王女は自宅に残った。
 アーテ王女はこのとき、初めてジルと、別々の行動をとった気が、していた。
 アーテ王女は本を読む。
 魔術の本で、かつてこの世界にいて、そうして、真のデイスナーとして活躍したハル・デーモンドの著作である。
 中には彼が、デイスナーとして成功していくまでの、苦労話や、実際に彼が使った魔術の数々が書かれていて、アーテ王女にとっては実に、参考になる本だった。彼も、アーテ王女と同じ疑問を持っていて、そうしてそれとして成功するための苦労を持っていた。アーテ王女が本を開くと、時間は風のように過ぎていった。
 ジルが、夕刻すぎに帰ってきた。
 ジルは、帰ってくるとすぐにアーテ王女のもとを訪れた。
「なに? あんた今日はずうっと本を読んでいたの? 熱中するのもいいけれど、ちょっとは考えたら? 今何時だとおもっているの? もうご飯の時間よ。あきれた。あんた、あたしが帰ってくるのを待っていて、夕食のひとつもご馳走してくれるとおもったのに、あたしが甘かったわ。一緒に作れと、そういうのね。いいわ作りましょう。おいしい夕御飯を」
 すると、二人は夕餉の膳に取りかかった。
 アーテ王女が火をたき、ジルが野菜を切る。
 煮魚に、野菜がたくさん入ったお味噌汁。
 御飯が炊けたころ、二人の食卓はそろった。
「で」アーテ王女が聞いた。「どうだった?」
「料理?」
「今日の試合」
「すごかった」
 ジルが御飯をほおばりながら、「やっぱり五回戦ともなると、世界が違うわ」
 ジルは説明した。
「まず、ルンバルってやつ。相当な氷魔使いよ。それを相手にしたゴローってやつ、こいつがまたとんでもない風使いでね。それに、ロンバルギンって人。これがハチャメチャなダブリンでね、たぶんそれ以上に別の魔術を使えるとおもう。光と闇の合成魔術がものすごかった。それでも相手もさしたるものでね、それに負けない防御魔術を使って、ええと、そう、ライトナー。こいつもダブリン。すごかった。閃光、舞い散りの大魔術合戦。あんた、見ないで正解だったかもよ。あんなの見せられちゃ、あんた、自信なくしてるところよ。」
「へえ」アーテ王女は、御飯を頬張りながらいった。「そうなんだ」
「人事みたいね。これは、あんたの問題なのよ」
「そう?」
「魔導師さん。あなた少しは、自分のことに感心もったら?」
「そんなにすごかった」アーテ王女は、お味噌汁を飲んでいる。「あたしも見ておけばよかったかな」
「そうね。そう」
「?」アーテ王女は、ジルの沈黙に、首をかしげた。
「だけど、あんたのいうとおり」
「?」
なにが?
「こんな試合、本当の魔導師の戦いじゃない。相手の手の内を、はじめから知って、どんぱちやって、喜んでいるだけよ。ショウね。いってみればただの。即座に相手の魔法を捕らえ、攻撃に転じる、一瞬の迷いが勝敗を分ける、そんな試合をあたしは見たいわ。たぶん」と、ジルは、お味噌汁に手を伸ばしながら、「そんな試合が出来るのは、本当の魔導師、あんたのいう通りよ。きっとあんたぐらいじゃないの? そんなことできるのは、そんな試合を客席に持っていけるのは・・・・・・」
「そうかしら」
「あんたは、魔導師。たいしたものよ」
「明日もいく?」アーテ王女は、にこにこわらっていった。
「それはいく。あたしはやると、はじめから決めたことはやり遂げるタイプの人間よ。たとえ試合が芝居がかっていても、下調べぐらいはしておくわ。あなたのために」
「それでこそ、ジル」アーテ王女は喜んだ。
ジルが、そういう人間であると、アーテ王女は、おもった。
 簡単に人には飲まれない。
 自分の信念を持った人。
 アーテ王女はそうした人間が好みであった。
 食事終了。
 ジルは、御飯を食べると自身の家に去っていった。
 アーテ王女はしばらくハル・デーモンドの本を読んで、それから眠った。

 アーテ王女が朝起きると、ジルはすでに出かけていた。
 アーテ王女は図書館に行った。
 そうして地下の古文書保管庫に入って、古代の文献をあさった。
 誰も知らない古代の魔術を、発見すれば、それは自身の糧になる。
 そういう本を書いている人は本当にまばらで、古代の魔術に対する研究は、閑散としていた。
 みんな、見た目の華々しさに、酔いしれ、魔術の本当の面を見ることを忘れている。アーテ王女には、そのようにおもわれた。
 それは、本来試合に勝つための道具ではありえない。
 たとえどんなに包み隠そうと、人を殺すための道具である。
 それを知った上で、魔術を扱うのならそれはいい。しかし、今の人々はそれを忘れている。
 このときアーテ王女は、ある結論にいたっていた。つまり、アーテ王女にとって魔術とは、人を殺害するための道具以外にはありえなかった。
 そうして魔術とは、きたるべき、・・・・・・との決戦のための道具である。
 アーテ王女がそうした日々をすごしていると、時もただにすぎていった。
 十日後。
 試合の当日である。
 朝、アーテ王女がいつものように午前六時に起きると、ジルも同じ時刻に起きてきた。
「おはよう、アーテ」ジルが朝の、決まりきった挨拶をした。
「さあ、あれから十日。今日が決戦の日。運命の五回戦。あんたには、あたしが今日までためてきた、メモ書きの数々を読んでもらうからね。せっかく作ったんだから、対戦者ノート。活用するだけは、活用してもらいますよ」
 ジルと、アーテ王女は朝食の支度に取り掛かった。
 その間にも、ジルはうるさくも、アーテ王女に今日当たるかもしれない対戦者の情報を流し込んだ。あいつはこうだ、こいつはこれだ。あれはああだ。あっちはそうだ。
 アーテ王女が黙っていると、
「聞いているの? アーテ。あなたのために集めた情報なんだから、しっかり聞いてよね。いい? そう、あんまりあなた関心ないのね。あたしはあんたが必要としているとおもったから、そういったのに。がっかり」
 アーテ王女はジルの落胆ぶりにあわてた。
「そんなことないわ。あなたは、最高のトレーナーよ」
 しかし。
「馬鹿ね、アーテ。引っかかった。あんたが言ったことは一理ある、しかし、試合は試合。勝つためには、試合用の魔術師になってもらうよりほかありません。いったように、ヘルショットには、生活をかけた戦いがあるの。それは、たとえあんたが何と言おうと関係ない、向こうがってな理論なの。それはしっかりわかってもらいますからね。いいこと?」
「はいはい」
 それでなんですか?
「それでいい」
 ジルは、料理中も、食事中も、対戦相手の情報を流し続けた。
 正午少し前、ジルとアーテ王女は出かけた。
 アーテ王女の試合は、午後三時からである。

 五回戦

 列車内。
「いい? アーテ、聞いている? とにかく今日は、炎には気をつけてね。わかった?」
 それはもう何べんもきいたことである。
あの、炎の魔術師がたぶん五回戦に上がって来てるとおもうから、気をつけて、でしょ?
「馬鹿にしているの? あなたのためをおもって調べた情報なのに」
「そうではありません」アーテ王女は、きっぱりいった。
つまり、もう、今日の対戦者の情報は十分もらいましたから、大丈夫です、ということ。
「じゃあ暗唱して御覧なさい」
 出来ません。
「ほら、何にも知らないじゃない」
「そのときになったら思い出す」
「それじゃあおそいから、今覚えなさいと、そういっているのよ」
 わかりました。
 アーテ王女は一人ずつ、相手の情報を述べたてた。
 炎。バンペルト。カンゼ。キュリュク。
 氷。ロンバート。レゾナス。ルンバル。
 風。ライトパーン。ワンダー。ゴロー。
 光。ゴールドマン。フート。
 闇。レオン。ライトマン。
 ダブリン。レイズバーン。ライトナー。
 デイスナーもどき。ロンバルギン。
「わかってるじゃない。それだけ知ってれば、今日は大丈夫かな?」
 ジルは、急に静かになった。
 ジルは、アーテ王女が何も聞いていないとおもっていたらしかった。
 列車は進む。
 ジルと、アーテ王女はやがて、試合会場にやってきた。

 受付で出場届けと、サインをすると、選手控え室に駆け込んだ。
 見ると、選手はすでにそろっている。
 ジルと、アーテ王女は初めて試合に来たときに控えた居場所へ、つく。
「三時試合開始で、今は二時十五分。ちょうどいい時刻にきたとおもってたけど、ずいぶんとほかの人たちは早いみたいね。そろっているわ。みんな、あんたに情報流し込んだ人たち。あ、あの人っ。バンペルトよ。やっぱり、今日が試合の日だったのね。きっと五回戦か、七回戦あたりよ。アーテ、大丈夫? 氷の魔術、用意しておいたほうがいいわよ」
「作戦はこう」と、アーテ王女はいった。
 まずは相手に先手を取らせる。そうしておいて、最高の氷の盾で防御。即座に反撃に転じる。炎使いだから、きっと氷か水の魔術に弱いはず。そのためそこをつく。
「いいわ。完璧」
 しばらくすると、対戦者カードが決定した。
 説明が入る。
「今日は、五回戦から十回戦までを予定しています。各者、勝ちあがりましたら、そのまま選手控え室のほうで、お待ちください。それでは試合のカードを紹介します。まず、第一試合は・・・・・・」
 と、アーテ王女の名前が呼ばれないまま、カードは続き。
「そうして第六試合は、スベロヴィンスキー選手と」
「来た」
 ジルがつぶやいた。
「・・・・・・バンペルト選手となります。」
 試合の予定が組まれた。
 説明が去ると、各者おのおの自身の居場所を求めた。
 アーテ王女とジルは、元居た場所に戻った。
 選手の中には、何を勘違いしたのか、シャドウボクシングをするものも現れた。
「車道・・・・・・なんだって?」ジルが、不思議そうに、きいた。
「なんでもない。知らないならいい」アーテ王女はそ知らぬ顔でいった。
「それより、いきなりね。強敵。さっきの作戦、たぶんあれでいいわ。きっとあんたの魔力なら、あいつに打ち勝てる。きっと」
 すると、試合が始まった。
「誰が勝ち上がるか、一応見ておきましょう。今後のために」
 第一試合。カンゼ、レゾナス戦。まず、カンゼが先攻を取った。しかし、それはどうやらレゾナスの作戦だったらしい。レゾナスは、落ち着き払って魔法を演唱すると、氷の盾を立ち上げた。カンゼは攻撃にはやった。炎がレゾナスの盾に飲み込まれる。そうしてレゾナスの後攻。レゾナスは、あっさり試合を仕上げた。氷の魔術でクリティカルヒット。
「あんたの作戦とおんなじだ。なんかいやな感じね。まったく同じ作戦が、先の試合で出るなんて」
「・・・・・・・・・・・・」
 気のせい、気のせい。・・・・・・。
 第二試合。キュリュク、ボビー戦。炎のキュリュクが終始先攻。ボビーを圧倒し、勝利。
「珍しいわね、このクラスで圧倒的な戦いなんて」
 そう?
 アーテ王女は感心なさげにいった。
 第三試合。ライトパーン、レイズバーン戦。さすがダブリン、レイズバーン。風の力を操るライトパーンの攻撃をうまくかわし、勝利。
 第四試合。ルンバン、レイトナー戦。氷のルンバンが、氷の盾を張ると、光のレイトナーも同じく、盾を張った。両者一進一退の攻防。最後に勝ったのは、レイトナー。光の魔術でポイントを稼いで勝利。
 第五試合。ワンダー、ゴロー戦。同じく風の力を持った者同士の対決。試合は白熱したが、最後は魔力の勝った、ワンダーの勝ち。
 そうして。第六試合。
「アーテ、がんばってね」
 ジルが祈った。
 アーテ王女は階段へ向かう。
 階段で。
「あんたとは」と、一緒に階段に立ったバンペルトがいった。
「?」
 なに?
「たぶん近々当たる予感がしていた。まさか、それが今日の五回戦だったとは、おどろきだ。五回戦は、わたしには思い入れ深いものがある。いつも強敵と当たるのは、この五回戦だった。今回も、あるいはとおもっていたが・・・・・・いや、試合の予想をするのはやめよう。思う存分戦おう」
 バンペルトはアーテ王女に手を差し出した。
 握手?
 そうらしかった。
 フェアプレーヤー?
 握手した。
 アーテ王女の手には、何か熱いものが残った。
「?」
 アーテ王女が自身の手を見ていると、
「アーテ、がんばれ」
 ジルがいった。
 え、ええ。
「・・・・・・・・・・・・」
 手、が。・・・・・・
 アーテ王女は階段を登る。
 試合会場。
 埋める観客が眼に見えた。
 声が沸く。
「あの子だ。アーテ・フォン・スベロヴィンスキー。すごい魔力を持っている」
「この前も、並み居る敵を、ぺしゃんこにした子だ」
「今日は何を見せてくれるんだい、女の子のデイスナー」
 評判はいいらしい。
 アーテ王女は『奈落の世界の闘技場』のドル箱選手らしいかった。
 ど、どうもありがとう。
 アーテ王女が武舞台に立つと、
「それでは試合を始めます」
 かつて五回ほど聞いた説明が入った。
「では、試合を始めます」
 そういって、審判員は舞台を切った。
「はじめっ」
 先攻は、やはりバンペルト。
 アーテ王女は予定通り、魔法を演唱すると、『氷の盾』を立ち上げた。
 が。
 あ、あれ?
 うまく魔術が起こらない。
 そうしているうちに、バンペルトの炎が完成した。
「何しているのっ、アーテっ」
 ジルである。
 しかし、魔法がうまく出せないのである。
(のろいを掛けられたね、アーテ王女)
「え?」
その声は、おばあさんの魔導師?

(あんた、そのクズ魔導師に手を触れられただろう。そのときに、氷と水の魔術にストップがかけられたのさ。こういうのを、魔導師の世界じゃ『反召』なんて呼んでいるけど、それさ。あんたの手には、魔法の鍵が、かけられたのさ。これであんたはこの試合が終わらないうちは、氷も、水の魔術も使えないよ)

 で、どうすればいいの? ・・・・・・。

(どうしようもない。ほかの魔術でかたをつけるんだね。知っているだろう? そのほかの魔術)
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