アーテ王女の冒険における奇跡をおこなう国 すなわち「人間」・大学・企業および社会システム 社会システムの一般放送関係批判1

ouhykhbjkhj

文字の大きさ
上 下
22 / 37

第二章其の一

しおりを挟む
 アーテ王女がそとの様子を見ていると。
『奇跡を行う国』。
 何のことはない、普通の世界のようにおもわれた。
 普通の人びと、普通のコンクリートの駅。
 本で読んだとおりだ。
 アーテ王女がそとの様子を見ていると、
「どうだい?」
 ウサギがいった。
「第一印象は。あんた、ここが『奇跡を行う国』だ」
 わからない。もっとよく調べてみなくては、第一印象? それは、よくある極普通の町のようですが・・・・・・
「そうな? わたしなんぞは、都市には慣れてはいないから、こういう町並みに来ると、めまいがするくらい、舞ってしまうよ」
「そうですか」
 しかし、いったいここのどこが奇跡なの?
 なんともない会話の中に、真実がある。
 それが、このたとえだった。
「奇跡? あんた、本当に、奇跡なんてものを信じているのかい? 若くするよ、時は人間を。あんた、やはり少し危険な思想を持っているようだ。ここではそれが否定される、だからこそ、そう呼ばれたのさ、『奇跡を行う国』とね」
「・・・・・・・・・・・・」
 だけど、何か奇跡らしいものがなくては、『奇跡を行う国』。国の名前にそんな文字をつけたりはしないはず。
「馬鹿な。『奇跡を行う国』で、奇跡が起こっていたのは、ずっと前のことだ。数千年も。今では誰も信じない、奇跡なんてものの存在を。今ではそれらはすべて、何かのトリックとして、片付けられている。あんたも気をつけることだ、奇跡にだまされて、お金を巻き上げられないように、ああそうか、あんた、もなしだったけ」
「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女が黙っていると、
「魔術は」
 と、小人の商人が、
「奇跡の中のひとつだった、それが今では誰にでも、一応は出来ることがわかって、奇跡としての看板を下ろしてしまったよ。あんたみたいな幼い子が、魔術を使うのは実は珍しいことだけど、大人で、少し訓練をつめば、あんたがやったようなことをは誰にでも出来るのさ」
 奇跡。
 それが否定された土地。
 それならば、いったいどうして、奇跡を、その名に冠する町が出来たのだろうか。
 アーテ王女が疑問におもっていると、
「さあ、降りよう。いつまでも乗っているとなると、車掌が回ってきて、いやみったらしく、丁寧に、降りるように言われてしまうよ」
 アーテ王女は、しかし、どこにいっていいのかわからなかった。
 アーテ王女はここにきて、はじめて、自分が向こう見ずな行動をとったことを反省した。
 もしも村長のうちにいれば、食事が配給される。
 それが、ここではかなわない。
 アーテ王女は、再びここで、王女の社会経済的な立脚に、問題を提起した。
 アーテ王女が黙って、立ちすくんでいると、
「さあ、どうしたね」と、ウサギが、アーテ王女の様子をみて、いった。「なにを、自身のすべきことがわからなくって、茫然自失とした表情をしているんだ。あんた、だめだよ、なにをするにも、まずは行動。そうして自身の進んでいく道を見つけるんだ。そうしないと、いつまで経っても、あんたを閉じ込めている牢獄からは抜け出せない。でたけりゃ脱走することだ、もしもそれがいやだというのなら、どうしてこんなところにきたのかね、こなければよかったではないか。もちろん、来てしまったことは仕方ない。だから、あんたは前に進むしかないんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女はウサギに促され、少し勇気を取り戻した。
 そのとおり。
 進むしかない。もしも、自身の運命に、対決したければ。
 それに、あの、バンズの町の村長はいっていた。
(「中央のほうには連絡しておいた。・・・・・・何か、歓迎会かそれみたいなことをするみたいだから、そのつもりで」)
 アーテ王女は、進もうと決心した。
 そうして自身の旅を、自分から構成する。
 流されないぞ、運命よ、わたしの前から立ち去れ。
 アーテ王女はかばんをしょうと、列車の降り口へと歩いていった。
 ウサギたちがこのあとどうなったのか、それは、アーテ王女は知らない。これが、彼らとの、最後の接触になったからである。彼等はアーテ王女とであったために、未知の世界に、新たな使命を受けて旅立つことになる、しかし、それはまた別の話である。
 アーテ王女が列車を下車すると、おびただしい煙が、列車の排気口から漏れていた、前が見えない。
 いったいここはどこ?
 アーテ王女がおもっていると、答えは向こうからやってきた。

「急行『奇跡を行う国』行き到着いたしました。オランテ、オランテ。お降りの方はお急ぎください・・・・・・」

 オランテ駅・・・・・・。
 さてこれからどうしよう。
 どういう展開が、アーテ王女を待っているんだろうか。
 アーテ王女は『奇跡を行う国』にきて、その扱いに困っていた。
 まずは、アーテ王女に課せられた最大の任務は、食事の心配をなくすこと。
 果たして、アーテ王女は、この、見知らぬ土地に来て、ご飯を食べることが出来るのだろうか。
 楽観視はしていた。
 アーテ王女は王女である。
 村長が、しっかり中央に、アーテ王女のことを報告していてくれさえすれば、国の賓客として、扱われるかもしれない。
 アーテ王女が駅構内を歩いていくと、駅の改札口に到着した。
 そこには、たくさんの人の列がある。
 なんだろう。
 アーテ王女が不思議そうに見ていると、乗客を迎えに来た、人の列であることがわかった。何か、一様に、紙を掲げている。そこに、人の名前が書いてあって、降りた乗客を迎えるのである。
 アーテ王女がボーとして、ボードの名前を見ていると、しかし、それは、『奇跡を行う国』で使われている文字であることがわかった。
 読めない。
 果たしてその中に、アーテ王女をむかえにきた、人のボードはあるのだろうか。
 アーテ王女がしばらくその場で待ってみることにすると、たちまち降りてきた人の列がボードの持ち主と再会し、徐々にその人数が減っていくことに気がついた。
 アーテ王女がさらに待っていると、ついに最後のいちにんまで、ボードを手にした人間は、去り、アーテ王女は一人残された。
 アーテ王女を待っている人は、ひとりもいなかった。
 リムジンは?
 歓迎の花束は?
「ずさん」
 アーテ王女はおもった。
 村長は、確かにいっていたではないか。
 アーテ王女のことを、中央に報告しておくと。
 それがどうだろう。まるで、何かが起こる気配はない。
 列車の客が去り、閑散とした、ホーム。
 自分の運命は自分で切り開けと、運命はそのように言うのだろうか。
 アーテ王女は仕方なく、外にむかって歩くことにした。
 改札をでる。
 駅は、まるで温室のように、ガラスが張られた様子を、アーテ王女に見せていた。
 まるでどこかの十九世紀の美術館を、そのまま駅に改造したようだった。
 しかし、ごったがえす人とは、このことをいうのだろうか。
 おびただしい人である。
『奇跡を行う国』、その中央の、一番大きな駅、オランテ。
 アーテ王女はその人の列に圧倒された。
 立ち止まっていると、人の流れに乗って、どこかにいってしまいそうになった。
 アーテ王女が何とか外にであると、八月もおわった、九月一日の太陽である。
 太陽が、アーテ王女を照らした。
 アーテ王女が見ていると、人々は、自身の任務を持っているのだろう。
 自身の確信にもとづいて歩くひとの列は、あるいは駅に入り、あるいは駅を去り、あるいはリムジンバスに乗ったりした。
 アーテ王女はどうする。
 しばらくアーテ王女は駅の前でたちどまった。
 アーテ王女が脇を見ると、そこには汚い格好をして、お金を恵まれる浮浪者がいた。
 アーテ王女も、彼のようになるのだろうか。アーテ王女はぞっとした。
 とにかく、今決めていることは、繰り返し、食事の心配をなくすこと。
 それにはどうするか。
 そういえば、村長はいっていた。
 市民権。もしもアーテ王女が市民権を無くすことになれば、アーテ王女は奈落の世界に落とされることになると。
「奈落の世界か・・・・・・」
 アーテ王女はおもった。
 観光である。
 アーテ王女は一種の観光目的でこの場所に来た。
 それならば、その観光を、思う存分楽しもうではないか。
 問題を決めれば、アーテ王女は行動は早い。
 アーテ王女は早速、『観光』を始めることにした。
 まずは、早速奈落の世界を目指した。
 どういけば、そこにたどりつくことが出来るんだろう。
 アーテ王女は自由である。
 人に尋ねることにした。
 しかし。
 ここにきて、アーテ王女は早速『奇跡を行う国』の市民権制度にあたまをぶつけることになった(もっとも、ここでアーテ王女が市民権制度の壁のぶつかったことは、一部アーテ王女の命を危険にさらすことになったが、一部、アーテ王女の願いをかなえることになった)。
「すみません」
 アーテ王女が一人の通行人を呼び止めると、
「何かね」
 男の人は、アーテ王女の呼びかけにとまった。
「奈落の世界に行くにはどうすればいいんですか?」
「奈落の世界? それならバスで一本の距離だ、奈落前駅で降りるんだよ。ほら、あそこのターミナルからバスが出ている。」
 しかし、アーテ王女はお金を少しももってはいなかった。
 バスには乗れません。ほかの行きかたを知ってはいませんか?
「ほかの行き方だって? あんた、知らんのか、この『奇跡を行う国』では、列車以外の運賃はただなんだ、そんなこともしらないなんて、あんたはいったい何ものだね」
「わたしは・・・・・・」
王女。
しかし、そんなことを今言ってみてもしょうがない。
「答えなさい」
 アーテ王女が黙っていると、
「ちょっとここで待っていなさい」
 そういうと、男の人は向こうのほうへ歩いていって、何か、向こうにいた高帽子に制服の男の人に話をして、一緒に連れてくる様子であった。
 男の人が、高帽子に制服の男の人を連れてもどってきた。
「・・・・・・・・・・・・」
「さあ、答えるんだ」と、男の人がいった。
「君はいったい何ものだね」
 アーテ王女は答えることが出来なかった。
「君、身分証を見せなさい」
 といったのは、高帽子に制服を着た男の人である。
 警吏?
 そうらしかった。
 アーテ王女が黙ってことの展開を見ていると、
「どうしたんだね、身分証はどうしたのかね」
 アーテ王女は、仕方なく、本当のことを答えることにした。
「ありません。わたしは、身分証をもってはいません」
「もっていない? では、君の市民認識番号は?」
 市民認識?
 それももってはいないといった。いや、何のことやら分らない。
「君は市民権を持ってはいないのかね、それで、町を出歩いているとは、いや。これは危険だ」
 そういうと、高帽子をかぶった警吏らしき男の人は、なにやら手錠を取り出して、アーテ王女を連れて行くつもりであるらしかった。
 アーテ王女の手に、手錠がつながれる・・・・・・。
 しかし、それはまさにそのとき起きた出来事である。
 アーテ王女の手に、手錠がかかりかけたとき、それはおこった。
 何か、人影、それほど大きくはない人影、アーテ王女ぐらいの人影が、警吏らしき高帽子の男の人を押しのけると、アーテ王女の手をひいて、走り始める様子であった。
「なにしているのっ。早くしてっ」
 アーテ王女と同じくらいの人影はそういうと、警吏らしい男の人の手から、アーテ王女を救い出し、どこかへと、走っていく様子であった。
 誰だろう。
 アーテ王女はおもった。
 しかし、今は、どうやらそういうことを考えている場合ではないらしいことが、アーテ王女には見て取れた。
 逃げなくてはならない。
 高帽子をかぶった警吏らしき男の人が、アーテ王女を追ってくる。
 警吏らしき人影は、何度も高帽子を押さえながら、
「まて、こら」
 アーテ王女は前を走る人影に、手を引かれ、どこへともなく、町を走っていた。
 警吏は、まだ、アーテ王女を追ってくる。
 アーテ王女の手を引く人影と、アーテ王女は、角をいくつも曲がって、やがて表通りから、裏通りへとやってきた。
 アーテ王女が後ろを見ると、それでも警吏は、アーテ王女たちを追ってくる様子であった。最後にアーテ王女たちが曲がった角は、なんと行き止まりだった。
 つかまる。
 アーテ王女はおもった。
 しかし、アーテ王女の手を引いていた、アーテ王女ほどの背丈の人影は、
「さあ、こっちよ」
 と、女の子らしかった。
「ここに入って。早く」
 それは、開けられたマンホール。地下に、逃げ込む気だろうか。そのようだった。
 アーテ王女が中にはいると、はしご伝いにマンホールを降りていった。
 人影も続く。
 アーテ王女が見上げると、人影は、マンホールの蓋をしめて、中になだれ込んだ。
 アーテ王女は人影の、はしごを降りるスピードに、急いではしごをおりた。
「もう大丈夫」
 と、人影はいった。
「まったくどういう勘をしているの? あなた」と、アーテ王女と同じくらいの大きさの人影(女の子らしい)は、「こともあろうに、身分証もないのに、『奇跡を行う国』の大人に話しかけるなんて、普通の感覚じゃ考えられないことよ」
 女の子なのだろうか。
 アーテ王女がおもったことは、至極単純なことだった。
 アーテ王女がおもっていると、
「ジルよ」
 と、アーテ王女と同じくらいの背丈の人影は名乗った。
 アーテ王女は、それを聞いて、反射的に、自身の名前を教えた。
「アーテです」
「アーテ? アーテ。変な名前ね。いったいどういう育ちをしているの? あなた、あまりに注意がたりないわ。そんなことじゃ、この、『奇跡を行う国』ではもちろん、奈落の世界でも、満足に生きてはいけそうにはないわよ」
「え?」アーテ王女。
「奈落の世界」
「あ、ああ」
「何にも知らないのね。ここのこと、奈落の世界。地底界よ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷では不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...