アーテ王女の冒険における奇跡をおこなう国 すなわち「人間」・大学・企業および社会システム 社会システムの一般放送関係批判1

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第二章

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  * * *

 ここはどこだろう。
 いつのまにか、アーテ王女は村長の家とは別の場所にやってきていた。
 アーテ王女は周囲をきょろきょろした。
 一面白い部屋の中である。
 アーテ王女は椅子に座らされていた。
 そうして手に、ロープが縛りつけられていて、肘掛に、アーテ王女の腕が固定されていた。
 アーテ王女が自身になにがあったのかわからず、呆然としていると、なにやら部屋の隅の扉が開いた。
 誰か入って来る。
 それは、ブルーの服を着た男の人で、手に、何かのタクトを持っているのが印象的だった。
 アーテ王女が黙ってみていると、男の人は、アーテ王女のまん前まで来て、
「君がアーテ王女だね」
「?」
「アーテ王女、今から君を審査する。身長百三十六センチ。体重三十四キロ。骨年齢・・・・・・。体脂肪・・・・・・。身体年齢・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・」
「君は今、実に悪い立場に立たされている。偽っただろう、王女と、それは、君、悪いことだよ、果たして本当の王女ではないのに、王女を偽った罪は大きい、これは、国家反逆罪、偽証罪、王族に対する冒涜・・・・・・さまざまな罪に、君を取ることができる。君は本当は王女ではないのだろう? どうだい、いってごらん、本当は、お城で雇われている清掃要員で、いつも見ている王女の姿をみて、自身、王女であったらな、とおもって、そのようなうそを、ついたんだろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女が黙っていると、男の人はさらに追及した。
「君は王女ではない、それなのに、君は王女を名乗った、君のようなうそつきは、わたしは大嫌いだ。さあ、いってごらん、本当のことを、君は果たして誰なんだい?」
「・・・・・・・・・・・・」
「そうかい、答えないつもりだね、いいだろう。君が供述しなくても、こちらは君が本当の王女ではない証拠をいくつもつかんでいる。裁判長!」
 すると、いつから変わったのか、そこは、どこかの国の法廷になっていた。
 ニスの塗られた手すりに、パタパタ開く出入り口、目の間には大きな机、裁判長席があった。
「認めます、検事発言を」
 目の前に裁判官がいて、そうしてアーテ王女の横には弁護士、なんとそれは王様ではないか。
 王様、いったいこれはどういうこと?
「いいかね、アーテ君」
 すると、あおい服を着た男の人は、どうだろう、デッカー次官に変わっていた。
「君は君が犯した罪の大きさに気づいていない。君は、本当にとんでもないことをしたんだよ。いいかね、裁判長っ」
「認めます、検事発言を」
「陪審員の皆さん。ここにいる娘は、自身王国の清掃員であるにもかかわらず、自身王女を名乗り、人心を惑わしました。この罪は、国家騒乱罪に値します」
「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女が陪審員のほうを見ると、そこにはなんとチェッカー少尉と、ロイズおばさんがいた。
「そのとおりです」
 いったのは、陪審員席の、チェッカー少尉だった。
 陪審員が発言?
 しかし、裁判長は。
「陪審員、発言を認めます」
「彼女は本当の王女ではありません。わたしは知っています。彼女は野球を好み、なんだかわからない本ばかり読んでいて、食事のときも、食べ物をぽろぽろ落とす、王女とは名ばかりの、皮かぶりです」
「・・・・・・・・・・・・」
「わたしも知っています」
 と、ロイズおばさんがいった。
「彼女は裁縫も、料理も、洗濯も、何もすることがなく、できない、王女としての資質にかけた、ただの小さな小さな女の子です」
「裁判長」
 と、デッカー次官がいった。
「陪審員の発言からも、明らかです。彼女は、自身王女として何もできないにもかかわらず、王女を名乗った、王女もどきもいいところ、実に極刑を、極刑を、裁判長」
「異議あり、裁判長」
 弁護士の王様がいった。
「この子はただの、女の子、その女の子が犯した罪など、たかが知れています。それなのに極刑とは、『猛極刑』を追求します」
 猛極刑?
 極刑のもっとひどいやつ?
「よろしい」
 裁判長がいった。
「この、王女を名乗り、人心を惑わした少女を、極刑とし、二度と世界の表側に立てない人間にします。『奈落の世界』で、三百五十年間の懲役刑とし、今すぐ地獄の穴に突き落としましょう」
「・・・・・・・・・・・・」
「異議あり、裁判長」
 王様がいった。
「六百五十年ぐらいにしたらどうでしょう」
 裁判長は、
「異議を却下します。この子は、七百八十年間の懲役刑と決定しました。この判決に変更はありません」
 すると、裁判長は木槌で裁判の終局を宣言した。
 アーテ王女は警吏に連れて行かれ、二度は上がれない、地獄の狭間に落とされることが決定した。
 まって。
 わたしは王女。
 だってみんなそう呼んだじゃない。
 だからこそ、わたしはみんなに王女と、話したのよ。
 しかし、アーテ王女の発言は、もはや人々の心にとどかなかった。
 アーテ王女は連れて行かれた。
 その脇で、アーテ王女はチェッカー少尉と、ロイズおばさんが、アーテ王女をあざわらっているのを目撃した。
 わたしのことを笑っているのかしら。
 アーテ王女はおもった。
 どうして笑っているの?
 わたしは地獄の世界に落とされる。
 それがそんなに楽しいの?
 しかし、アーテ王女の発言は、もはや人々の心にはとどかなかった。
 あはははは。
 あはははは。
 罪を償いなさい、アーテ王女。
 王女でもないのに、王女を偽った罪を、償いなさい。
 あはははは。
 あはははは。
 あはははは。#。$。&。

* * *

 アーテ王女が起き上がると、そこは見慣れた村長の家の、アーテ王女のベッドだった。
 アーテ王女が起き上がると、村長がアーテ王女を呼びにきていることがわかった。
「アーテ王女。どうしたんじゃ、何か夢にうなされていたようだったが」
「・・・・・・・・・・・・」
「大丈夫かね」
 夢?
 あたしが王女ではないのは夢?
「起こしに来たんじゃよ。ほら、いっておいただろう。郡の役人が、お前に接見すると、その役人が、もうきておる。それじゃからお前様を起こしにきたとそういうわけじゃ。大丈夫かな? アーテ王女・・・・・・」
 そういうと、村長は、アーテ王女の額についた汗を、タオルで拭って、
「もう昼の十二時じゃよ、あんた、昨日はずいぶん疲れたらしいな、いつもは六時には起きるのに、それがかなわんかった。気分でも悪いのかね? どうする、郡の役人をまたせておるが、あんたの気分が悪いんだったら、この会見はなしにするが・・・・・・しかし、できればあってはくれんかのう? 郡の役人が、時間を作ってせっかく会いにきたのじゃ」
 そういうと、村長は、部屋の外を気にする様子を見せた。
 会います。
 アーテ王女はいった。
 せっかくきた郡の役人をそのまま帰すわけにはいかない。
 アーテ王女はベッドから起き上がると、鏡の前に立って、身なりを整えた。
 そうすると、村長が、アーテ王女を導く様子であった。
 村長に導かれ、アーテ王女が応接室に出ると、そこには確かに、郡の役人がやってきていた。
 村長が立ち去ると、
「いやあ」
 郡の役人がいった。
「あなたがアーテ王女様ですか」
 若い。どうやら、郡の役人は、若禿げのようだった。
「今回の会見の趣旨を、村長のほうからお聞きしましたか?」
「?」
「そうですか、聞いてはおられない。では、わたしからお話いたしましょう。何、簡単なことです。今回の会見は、中央に報告するために、何かと必要になることを、聴取する目的で行なわれます。二三質問するだけです。ここで何かの判断を下すというわけではありません」
 それを聞いて、アーテ王女は少しほっとした。
「聞いた話によると、あなたはこのあと、『奇跡を行う国』に、直接いらっしゃるということ、この会見は、その露払いというわけです。たぶん、『奇跡を行う国』に到着しましたら、そこで正式な判断を下す予定になっていますから、その前に、いくつかお話を聞いておこうと、こういうわけです。あなたから聴きましたことは、すべて、中央のほうに報告いたしますので、そのつもりで、よろしくお願いします」
 そういうと、郡の若い役人は、手帳を取り出して、何事かメモする様子であった。
 アーテ王女は席についた。
 すると、役人は、椅子に座ったちいさなアーテ王女に、
「まず、あなたの国のことについてお伺いいたします。どのような国に住んでらっしゃったのですか?」
 長橋国。
「長橋国?」
「ええ」アーテ王女は、答えた。「ごく、ちいさな国です、この、『奇跡を行う国』には、到底及ばない世界です」
「なるほど、長橋国、ちいさな国の王女。いや、そっちのほうが、ずっと、本当の話のように聞こえます。大きな国の王女などといったら、それこそ判断を躊躇するところです・・・・・・。それから、あなたの趣味はなんですか」
「キャッチボール、チェス、ほか、ありますが、一番このごろすきなのは、読書、でしょうか」
「ほほう。キャッチボール、チェス、読書」
「たまに長橋国の住人相手にチェスや、キャッチボールをします」
「なるほど、いいご趣味をお持ちで」
 役人はメモを取りながら、
「それで、この土地には、どういうご用件で、参られたのですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
 なんと答えたらいいのだろうか。しばらく、アーテ王女は、考えた。
 そうして、極素直に答えたらいいのではないかと、考えた。
つまり、特に用があったから、というわけではない。
 ただ、鏡について調べていたら、ふらっと。
「なるほど、ふらっと訪れになった。そうですか、では、鏡に関して強い関心を持っている」
 役人はメモをとって、
「では、この国ではいったいなにをなさる気であるのでしょう」
 これにも、アーテ王女は、極素直に答えた。
 わからない。
 今のところ、それを探している。
「たぶん、それは『奇跡を行う国』を見聞してからわかることではないでしょうか」アーテ王女。
「なるほど、では観光ですね、と・・・・・・で滞在のご予定は、何日ぐらい?」
 また、素直な回答である。
 それもまだわからない。
 自身もそれについては早いほうがいいともおもうが、そのことは、この、『奇跡を行う国』のことをよく知ってからきめたたいとおもっている。
「それでは最後に、この土地に永住するお気持ちはありますか?」
「戻ることができるのなら、長橋国に帰りたい。しかし、それにはもっとこの『奇跡を行う国』を見聞する必要があるかもしれません」
「半々といったところですね」
 役人はまたメモをとって、
「わかりました、それでは質問は以上です、『奇跡を行う国』でのご滞在、存分にお楽しみください」
 そういうと、役人はたちあがって。
「それでは中央のほうにはそのように報告しておきます。もしかしたら、『奇跡を行う国』のほうで、より高いポストについている役人から、再度、大袈裟ですが。事情聴取を行ないますかも知れないので、そのつもりで、よろしくお願いいたします・・・・・・」
 郡の役人は、アーテ王女が王女であることに、深い疑問は持ってはいないようだった。いったいアーテ王女のなにに、王女性を発見したのだろうか。アーテ王女が不審におもっていると、
「あなたが王女であるということについては」と、郡の役人は、最後にいった。「疑問はそれほどありません、聞いた話によると、あなたには、王女にふさわしい、高い教養があって、それは、連日激務の続く、清掃係では、到底手に入れることが出来ないことです、まず、王女といっていいでしょう」
「・・・・・・・・・・・・」
 そうですか。
「ところで、何か質問はありますか?」
 聞きたいことは山ほどあった。
 伝説の鏡の港とは?
 伝説の神童とは?
 北の山にいる、竜王のこと。
 それから与えられた手鏡とは?
 しかしアーテ王女は、そうした質問は、自身で答えを見出すべきものであるとおもって、あえて質問しなかった。
 代わりに。
「『奇跡を行う国』までは、どれくらいかかりますか?」
 どうでもいいような質問をした。
「夜行列車の急行で、一日ほどの距離です、何、一晩寝ていれば、すぐにつきますよ」
 そういうと、郡の役人は去っていった。
 アーテ王女が役人を、玄関まで見送ると、役人は、丁寧な挨拶をして、帰っていた。
 最後に残されたのはアーテ王女である。
 アーテ王女が玄関で呆然としていると、村長がやってきて、
「どうだった、郡の役人との会見は? うまくいったかね?」
 何のことはない。
「特に問題はありませんでした」アーテ王女はいった。
「ということは、あんたが王女であるということに関して、疑問なり、不審なりをもたれたことはなかったといってよかったのかね?」
「どうでしょう。まずは、『奇跡を行う国』に報告が優先されるようです。どうやら、郡の役人は、わたしを本物の王女と見たようですが、『奇跡を行う国』へいってから、より、理解は、広まるようです」
「そうか、そうか、それはよかった。もしもこのあと『奇跡を行う国』についたとしても、あんたには、市民権が与えられるかもしれないな」
 そういうと、村長は、自身の任務は終わったとばかりに、また、別の任務をもめてホールを後にした。
 再び、一人残されたアーテ王女。
 王女は一人残されると、それらのことにちょっとした違和感を持った。
 こんなに簡単に、物事が運んでもいいものだろうか。
 アーテ王女には、これが、まるで何らかの常軌を逸したことのようにおもわれた。
 もしかしたら、これは、何か、大きなものの力によって、動かされ、そうしてアーテ王女を包含し、より果てしないものへと、アーテ王女を向かわせるためのわななのではないだろうか。
「・・・・・・・・・・・・」

(「アーテ王女。お前はこの世を再び画するためにやってきた王女。見せてみろ、お前の力を、そうしてこの、盆雑な日常に飽きたわたしたちから、その地位を奪って見せるがいい」)

「・・・・・・・・・・・・」
 今は何日だろうか。
 カレンダーを見て、日付を確認すると、あと、旅立ちまで二日であることが読み取れた。
 旅立ちの日は、八月三十一日。
 ちょうど、月の終わり。

(「ツキの終わり、お前の幸運も、それまで、さあ、やってこい、そうしてわたしたちにはお前はかなわないことを知るのだ」)

「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女はこのあと、村長の書斎にこもった。
 本を読んでおこう。
 できるだけ、その、交差の日までに、知識を蓄えておく。
 アーテ王女は村長の書斎にこもった。
 本と格闘し、アーテ王女の旅立ちまでの日々は、そのように過ぎていった。
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